ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉕JK
👆 ステラおばさんじゃねーよっ‼️ ㉔負けるが価値は、こちら。
🍪 超・救急車
女心と秋の空、晴天の霹靂(へきれき)、朝のぴっかり姑の笑い…これらのことわざは、空模様で人の心の変化を如実に表わしている。
ポーちゃんの天気も、じきに晴れて良くなってほしい…。
カイワレはしんみりした気持を入れ替えようと自分の部屋の窓を全開にした。
外は依然、雪がしんしんと降っていた。
隣りのマンションエントランスには、小さな雪だるまがこちらを見上げて、寒さに耐えていた。
雪で街を密閉した時特有のあたたかさはあるものの、風が冷気を運び込む。
「さっ、みー!」
頭の中はスッキリしてきたが、顔面がピリピリ刺されるようで、たまらず窓をピシャリと閉めた。
何時間も放置したスマホの画面には、
《@くろけっとさんより、DMが届きました》
の文字が浮かぶ。
やけに返信が早いな…と、なんの気なしにそのDMを開いた。
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はじめまして、@くろけっと と申します。
お忙しい中、ご連絡をいただきありがとうございます。
【夢の買い取り】についての条件としまして、諸々ご納得いただき、重ねて感謝いたします。
こちらのスケジュールですが、今週は夜勤のため13時頃には新軸駅へ着けるかと思います。
明日火曜から金曜迄のいずれかの日でお考え下さい。
希望としましては、木曜か金曜にお願いできたら、と思います。
報酬は、美味しいコーヒーとデザートでもいただけたら十分です。
他言無用のご希望につきましては、固くお約束いたします。
お会い出来ますこと、心より楽しみにしております。
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⭐︎
@捨てLaさんにDMを返信した知波の胸の鼓動は早鐘、暴れて苦しい。
とうとう生身の @捨てLaさんに会える!
まず、書き溜めた夢日記を何篇か用意して、初対面だから明るめの服を選んで、それから…。
頭の中で当日のシミュレーションをしては、ああでもない、こうでもないと頭の中でおしゃべりが止まらない。
夕飯の準備を終え、会う日の事ばかり考えていたためか疲れてしまい、いつの間にかうとうとと居眠りしていた。
「ただいま〜」
帰宅時間がいつもより遅く疲れ声を発し、歩がリビングに入って来た。
薄暗いリビングのソファで眠る知波は、まったく起きる気配がない。
まったく…と思いながらも、歩は知波のはだけた毛布を直してあげた。
その時、テーブルの上に置いてある知波のスマホの画面が光り、
《@捨てLaさんより、DMが届きました》
という通知が浮き上がった。
何?@捨てLaって誰なの?!
ていうか、@捨てLaって、ロサンゼルスの洋服ブランド?
いやいや最近、SNSを買収したおじさん?…ああ、あれはテスラか。
じゃああの、クッキーおばさん?
歩はひとりツッコミとボケを繰り返し、このアカウントへの不信と興味がないまぜになった。
歩は心の中で思い切り叫んだ。
@捨てLaって誰なのか知りたい!
不信より興味が勝ってしまう。
そう決めたら大胆にも歩は、知波のスマホのロック解除をし始めた。
さすが女子高生、使っているスマホの機種は違えど、スマホの操作では親世代よりもスムースだ。
母ひとり子ひとりの親子。
何か不慮の事態が起きた時に備えて、スマホのパスワードをお互い教え合っていた。
母のスマホのパスワードロックは、彼女の誕生日の数字ではずし、DMが来ているアプリへ飛んだ。
歩はそこで初めて、母がSNSをやっている事を知った。
アカウントネームは@くろけっと。
ここ数日の、地に足の付かない情緒不安定な知波の様子が不意に浮かんでくる。
ママは一体何してんのよ?
新しい恋?!でもしたの??
そして@捨てLaとどういう関係なの?
しかし、人のやり取りをのぞき見る事への罪悪感で、DMのメールマークをタップできない。
すると寝ていた知波がモゾモゾと動き出した。
「う〜〜ん…寝ちゃってた。あれ、歩?」
寝ぼけた知波にバレないように、何事もなかったフリをして知波のスマホをそっと元に戻した。
「ママ、こんな寒いとこで寝てたら風邪引くよ!毛布がはだけてたから掛け直したよ!」
「そっかありがとう、おかえり」
「あ、あたし着替えて来るね。今夜はカレーライスかな」
キッチンから流れ出た香りを嗅ぐフリをして、歩は動揺を隠そうとした。
そして歩は自分の表情を見られないように、階段を足速に上っていった。
歩の様子がおかしな事などまったく気づかず、知波は寝ていたソファから起き上がり伸びをした。
そしてすっかり冷めてしまったカレー鍋を温め直しに、いそいそとキッチンへ向かうのだった。
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