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ステラおばさんじゃねーよっ‼️76.打揚花火

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️75.こだわりの設計 は、こちら。




🍪 超・救急車


歩は引越最中の昼食後、いつの間にか入眠し、夢の世界にどっぷり浸っていた。

⭐︎

久々に履いたミニスカートから出る足を惜しげもなく車中に投げ出し、歩はくつろいでいた。

車内アナウンスから、《ドリーム⭐︎ランド行き》と連呼されるのが聞こえる。

ここはどうやら、ひかりのリムジンの後部座席のようだ。

隣席では、黄色の熊がひとりでブツブツ呟いているが歩は気にも留めない。

「ひかりちゃん、まだかなぁ?」

《ひかりの強炭酸水》のペットボトルに口を付ける歩を乗せたリムジンは、ひたすら人気テーマパークへ走っていた。

⭐︎

テーマパークの全アトラクションを完全制覇した事への満足感にひとり悦に入っていると、リムジンにいたはずの黄色い熊が突如現れ、歩に話しかけてきた。

「こっちやでー」

歩の手を取り一緒に走り出すと、あたりは一気に真っ暗になった。

ついさっきまで歩を導いたあの熊は、いつの間にか忽然と消えていた。

暗がりな場所でキョロキョロと見回していると、浴衣姿のひかりが妖艶に現れ、

「歩ちゃん、上!」

いつものやさしい口調でささやき、指を上にさした。

歩は上を見上げると、そこには大輪の夜花が次から次へと打ち揚げられている。

「スターマイン…綺麗ね♡」

ひかりはそう呟き、歩を見て微笑んだ。

いくつもの花火の残光の明かりにパッと照らし出されるひかりの横顔を見るたび、歩はハッとし、頬が紅潮していく自分に気づいた。

歩はそんな顔をひかりに見られまいとうつむいていると、今度はカイワレと知波が歩の横にふっと現れ、ナイアガラと呼ばれる綱仕掛花火を観ていた。

⭐︎

「歩、歩〜!早く起きないと、終わっちゃうよ!!」

歩を起こそうと呼ぶ声が、遠くの方でしている。

え、朝?!幸せな夢が、終わっちゃう…。

そう思うと歩は、とても悲しい気持になった。

打揚花火の音は鳴り止まず、時折盛大に、

ヅドゥオン! ヴァグゥオン!

と轟音を響かせると、身体にも振動が伝わってくる。

そしてその直後に放たれた一発のドーン!という音がリアルに耳を裂き、歩はようやくぱちりと目を開けた。

カイワレ、知波、ひかり、ポーちゃんは、バルコニーで何かを眺めている。

目をこすり、歩は皆に近づこうとバルコニーの窓を開けると、

ヒュルヒュルヒュルヒュル…ドーン!

という音が頭上で鳴り、数十秒後にはデッカい打揚花火が歩の瞳に映り込んだ。

「ぅわあ、キレー!」

と声に出すと、

カイワレが、

「やっと起きたね、母さん」

と知波に言った。

「何度も起こしたけど全っ然起きないからあきらめてたのよ。やっと、花火の力で起きたわね」

と笑いながら、ひかりに言った。

「きっとたのしい夢を見ていたのね」

ひかりが隣にいるポーちゃんに言うと、うわの空のポーちゃんはビール缶片手に、

「僕も今、幸せだなー♡」

と花火の美しさに見惚れて、ビールを飲み干している。

歩は、思った。

これって、夢の続きじゃないよね?!

なんかこのバイブス、サイコーじゃん!

そして歩はカイワレと知波の間に割り入って、少女のように叫んだ。

「ここ、あたしのスペシャルー!」

照れくさそうに言う歩を、ふたりはいとおしげに受け容れた。

最後の打揚花火の、残光のはかなさとその余韻は、忘れられない家族の想い出のひとつになった。

また来年も、この先もずっと、皆で観れたら。

歩はほのかな期待を、胸に抱くのだった。

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