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ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉙反抗期

👆 ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉘ウソツキ〜尾行と暴露 は、こちら。


🍪 超・救急車


疲れ果てた身体と気持を引きずり、どうにか職場へ知波はたどり着いた。

「おはようござ…」と言い終わらぬうちに、ロッカールームで気絶しその場に崩れ落ちた。

同僚たちの驚く声に、冷たい手が額に当てられた感触…。

遠のく意識の中で、歩とカイワレの顔がぼやけて見えた。

⭐︎

目醒めたのは、翌朝。

見慣れない天井が、目に映る。

あれ、ここは?

はじめはなぜ、自分がここで寝ているのかさえわからなかった。

ああわたし、出勤してすぐ倒れたのか。

昨日起きた不測の事態のあれこれで、脳がショートし高熱が出た上、気絶するほどのストレスになっていたとは、思いもよらなかった。

高校卒業後の進路を考えなきゃならない大切な時期に、歩には要らぬ心配と不安を与えてしまった。

昨日の事件をきっかけに、彼女の反抗期が始まったかもしれない。

自分の軽率な行動を深く反省しつつも、知波の脳裡(のうり)には、歩と一緒にカイワレの姿もはっきり浮かんでいた。

カイワレさんにはまた会って、どうしても確かめなきゃいけない事がある。

けど歩はそれをどう思うだろう。

歩とちゃんと話さなきゃ、でも何をどこまで?

ああ頭ん中、ぐちゃぐちゃだ…。

髪をかきむしりながらとりとめなく彼らの事を考えていると、回診前の医師が仮眠室へ顔を出した。

「具合どうですか?小鳥遊さん、疲労がだいぶ溜まってるね。解熱剤打って点滴したけど、2、3日休んだ方がいいよ。薬も出すから歩けるようならもう帰って」

「ありがとうございます。ご迷惑おかけしました」

「医者の不養生ならぬ看護師の不養生だねぇ。お互い気をつけましょ」

医師はテキパキと話し終えて、さっさと回診する患者の元へ向かった。

知波はまだ少し気だるい身体をどうにか奮い起こして、起き上がった。

歩、ちゃんと学校へ行けたかな。

さっきまでの脳内での混乱は、医師との会話で多少リセットされ、ぽつねんとベッドサイドに座る知波は、ただ歩を想った。

⭐︎

一方、歩は登校時間になっても自分の部屋から出てこず、引きこもっていた。

知波が起こしにくる時間はとうに過ぎていたが、今朝知波が帰宅した気配はない。

ママに見捨てられたかな、あたし…。

いじけている自分が情けない。

でも今日は、学校へ行く気には到底なれない。

母がついた嘘の理由を聞くまで納得できないけれど、何か話そうとしていたのを遮り、聞く耳持たなかったのは自分だ。

自己嫌悪でどうしようもない歩は、棄てられた仔猫のように布団の中でうずくまり少し泣いた。

その頃知波は、院内薬局にて処方薬の順番待ちをしていた。

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