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ステラおばさんじゃねーよっ‼️㊷余命と食欲

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️㊶拒絶 は、こちら。



🍪 超・救急車



リムジンは神林邸への帰途についた。

まさか誰もが、聖から余命を聞かされるとは思わなかった。

そんな状況でカイワレの母親の話を聞く訳にもいかず、調査としては徒労に終わった。

車中では3人ともがそれぞれ、聖とカイワレの母親について想いを巡らせ、黙りこくっている。

ぎゅるるるるるる〜。

突然辛気くさい空間に、ポーちゃんの元気な腹の虫が鳴いた。

「あ!お腹すいたー!」

そう言われるとカイワレ自身も、お腹が空いてきた。

哀しみの中でも、人は食べずには生きられない。

清々しい程の生きる力だ。

「ウタが好きなGFバーガーが近いみたい」

ひかりは運転席との仕切ガラスを開け、運転手にドライブスルーに寄るようお願いしている。

ポーちゃんは、お腹が空くとすぐ機嫌が悪くなる体質だ。

一方ひかりは、いつも絶妙なタイミングでポーちゃんに食事を与える。

まるで、猛獣使いである。

間もなくハンバーガー店に到着し、ひかりはドライブスルーのマイクに、あれやこれやと注文していった。

「ひかりさんでも、ジャンクフードとか食べるんだね」

何だか失礼な事を口走ってしまった気がして、カイワレはすぐに謝ろうとした。

「うちのグループ会社だから売り上げに貢献してるの。新商品のチェックも兼ねてね」

呆気に取られているカイワレにはおかまいなしに、ひかりはチキンの照焼バーガーをうれしそうに頬張り、それから身体に悪そうな炭酸飲料をストローで吸い込んだ。

ポーちゃんはLLサイズのフライドポテトを食べ切り、次は両手に持ったコロッケバーガーとチーズバーガーを交互にかぶりついている。

匂いにつられて食欲が出てきたカイワレも、ダブルのハンバーガーを大きくひと口かじった。

そのハンバーガーの包み紙に印刷されたギリシャ神話の女神のロゴマークが、ひかりに似ていた。

「GFバーガー…God Forest か!」

ひかりはクスッと笑い、

「Goddess of the Forest!惜しかったですね」

と説明しながら、ポーちゃんの口元をナプキンで拭いた。

⭐︎

満腹になった3人は、いつの間にか思い思いの体勢で眠りに落ちていた。

『邸宅まで、あと5分です』

カースピーカーからアナウンスが聞こえ、ポーちゃんは大あくびして起きた。

「あーあ1日って、あっという間だね」

ひかりとカイワレも、もそもそと起き出した。

「あらら、まさかの寝落ち…」

時の経過にひかりは少し慌てて、電話した。

「ばあや、今日のディナーは何?」

「懐石料理のコースになっております」

スマホのスピーカーから給仕の老女の声が聞こえる。

「刺身の舟盛と、あと和牛の料理もある?」

「お嬢様やウタ様、カイワレ様のお好きな物をご用意しております」

カイワレとポーちゃんは、声を立てずに満面の笑顔でバンザイをした。

「ありがとう、みんな楽しみにしてる」

「そろそろですね。お出迎えの準備をいたします」

スマホのGPSアプリでリムジンの位置を確認し、玄関で迎えるのが給仕のいつもの習慣だ。

「お帰りなさいませ。お食事とお風呂、どちらになさいますか?」

3人は一斉に、

「おっ風呂ー!」

と声を上げた。

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