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喘息の診断・治療~実際の流れ~

咳が続いている時、どのように喘息の診断がなされ、治療が選択されていくのだろうか。簡単に言うと、
①『喘息を疑う患者に対する問診チェックリスト』を用いて疑わしいかどうかを判断する。
②疑わしい場合、『喘息診断アルゴリズム』に乗っ取って診断を進める。

喘息を疑う患者に対する問診チェックリスト

大項目

喘息を疑う症状(喘鳴、咳嗽、喀痰、息苦しさ、胸苦しさ、胸痛)がある。

小項目

<症状>
・ステロイドを含む吸入薬、もしくは経口ステロイドで呼吸器症状が改善したことがある。
・喘鳴(ぜーぜー、ヒューヒュー)を感じたことがある。
・3週間以上持続する咳嗽を経験したがある。
・夜間を中心とした咳嗽を経験したことがある。
・息苦しい感じを伴う咳嗽を経験したことがある。
・症状は日内変動がある。
・症状は季節性に変化する。
・症状は香水や線香などの香りで誘発される。
<背景>
・喘息を指摘されたことがある(小児喘息を含む)。
・両親、もしくは兄弟姉妹にに喘息がいる。
・好酸球性副鼻腔炎がある。
・アレルギー性鼻炎がある。
・ペットを飼い始めて1年以内である。
・血中好酸球が300/μL以上。
・アレルギー検査(血液もしくは皮膚検査)にてダニ、真菌、動物に陽性を示す。
大項目+小項目1つ以上があれば喘息を疑う

喘息診断アルゴリズム

喘息予防・管理ガイドライン(2021)より引用

簡単にまとめると、
①CTやレントゲン等で肺炎や肺癌等がないかを確認する。
②検査する余裕がなければ、喘息として治療。効果があれば喘息と診断。
→効果がなければ他の病気の可能性を考える。
③検査する余裕があれば、
 ・気道可逆性(気管支拡張剤吸入)試験を行う。
 ・気道過敏性性試験を行う。
 ・ピークフロー(PF)メーターを用いて日内変動を調べる。
を行い、1つでも当てはまれば喘息と診断する。
 ※気道可逆性試験:気道を広げるお薬の吸入前後で肺機能検査を行い、薬の効果をみる。
 ※気道過敏性性試験:気管支を狭くする薬を薄い濃度から吸入し、どの濃度で気管支が狭くなるかを評価する。
④上記の検査が陰性であっても、変動性気流制限の原因や関連する因子を複数有する場合、喘息と診断できる。

治療フローチャート

喘息診療実践ガイドライン2023より作成

用語解説

ICS:吸入ステロイド薬、LABA:長時間作用性β2刺激薬
LAMA:長時間作用型抗コリン薬、LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬

治療薬の具体的な解説

治療に使う吸入ステロイドには、ガスの圧力で薬剤を噴射する「加圧噴霧式定量吸入器(pMDI:pressurized Metered Dose Inhaler)と、粉末の薬剤を、自分で吸い込むタイプの「ドライパウダー定量吸入器」(DPI:Dry Powder Inhaler)とがある。自分で吸い込むタイプは、ガスの圧力で薬剤を噴射するタイプと違って吸入のタイミングを合わせる必要がないため、使用が簡単である。ただし、自力で十分に吸い込むことができない乳幼児や高齢者では使えない時がある。

吸入ステロイド薬+長時間作用性β2刺激薬(ICS+LABA)

アドエア®(気管支拡張薬:サルメテロール)・・・pMDI、DPI両方。
シムビコート®(気管支拡張薬:ホルモテロール)・・・DPIのみ。
フルティフォーム®(気管支拡張薬:ホルモテロール)・・・pMDIのみ。
レルベア®(気管支拡張薬:ビランテロール)・・・DPIのみ。

<この中で何を選択するか?>
今まで使用してきたものがあるなら、それを使った方がよいだろう。
新規で開始するなら、唯一1日1回でよい(他は1日2回)、使用が簡単、安い、などのメリットがあるレルベア®が選ばれることが多いのではないだろうか。

ICS+LABA+長時間作用型抗コリン薬(LAMA)

・テリルジー®
・エナジア®
※長時間作用型抗コリン薬(LAMA)単独で用いる場合「スピリーバ®レスピマット®」(レスピマット®は吸入に用いる器具の名称で、薬はスピリーバ®)である。

どちらがよいかだが、これは人それぞれの好みによる。
吸入するまでの操作としては、テリルジーが蓋を開けるだけなのに対して、エナジアはカプセルをセットして穴をあける作業が必要となる。が、それ以降の吸入方法はエナジアの方が簡単で楽。

ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)

これは吸入薬ではなく、内服薬である。
具体的にはプランルカスト(オノン®)、モンテルカスト(キプレス®、シングレア®)などがある。

喘息発作(喘息の増悪治療)

喘息治療中、咳が連続的に続く場合を一般的に喘息発作(医学的には「喘息の増悪」)と呼ぶ。一般的な内容は前回記載したが、具体的や薬品を追記していく。

発作が出た時は、短時間作用性β2刺激薬(SABA)の頓用で対処することになるが、実際用いられるSABAには以下のものがある。
・サルタノール®(気管支拡張薬:サルブタモール)・・・pMDIのみ
・ベネトリン®(気管支拡張薬:サルブタモール)・・・吸入液
・メプチン®(気管支拡張薬:プロカテロール)・・・pMDI、DPI、吸入液
・ベロテック(気管支拡張薬:フェノテロール)・・・pMDI

吸入液はネブライザーという機械が必要となるため、自宅で使用するとなればベネトリン以外のものとなる。メプチン®やサルタノール®に比べて、気管支を広げる作用はベロテック®の方が強いものの、動悸を引き起こす副作用がある。逆に、動悸が出ないよう開発された薬がメプチン®やサルタノール®である。したがって、狭心症や心筋梗塞になったことがあるなど、心臓が弱い方がベロテック®を投与されると、狭心発作や心筋梗塞などを招いてしまう危険性がある。

メプチン®にはサルタノールと異なりカウンターがついているため、残りの使用可能回数が分かりやすいという特徴がある。

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