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「日本企業の創薬力、技術開発力と研究開発投資」/AnswerNewsの”現場的にどうでしょう”黒坂宗久さんコラムを読んで

日本の新製品開発力、新事業創出力

日本企業全般の新製品開発力、新事業創出力については、失われた三十年の間にまさに大きくその力が削がれてきたという気がします。

それには様々な理由が考えられ、有為の識者による歴史的な分析解析が必要であることは論を待ちませんが、80年代の後半に世に出て基礎的な技術開発を30年以上企業で続けてきた個人としてはいろいろと思うところがあります。

大構図として思い浮かぶのは、米国が冷戦を終えたとき経済上の仮想敵国としてドイツと日本が想定され弱体化を指向してきたことが挙げられます。その後トランプが出てくるまで一貫して米国は親中だったと思います。それにより相対的に日本経済は弱体化したと思います。つまり経済面を見れば米国はトランプ以前は一貫して反日だったということです。また、この間少なくとも第二次安倍政権まで日本国内に反日本的金融経済政策が蔓延ったこともドイツと比べた場合の弱点だったと思います。

そういう大構図が当たらずと言えども遠からず、だとすると、企業や個人の努力は限られたものになりますが、それでもそれぞれの企業や個人で大きな相違が生まれているのも事実です。

個別の企業や個人は、大状況や環境により生き延びたり発展もしたりということを諦めるということはできません。

しかし、大国の興亡のような大構図に左右されるのも非常に大きなことです。現実に私の40年近い技術者人生でも、その大構図に関わり成功しなかったという経験もあります。
だからこそ、このブログで世界の政治、金融経済情勢について、近代史、現代史について日本を軸に記事を書かせていただいています。

さて、黒坂さんのコラムについて

前置きが長くなりました。黒坂さんのコラムについてですが、

日本の創薬研究開発力あるいはその活力が落ちていて若い技術者、研究者の将来を憂いているという趣旨と私は理解しています。

数値を上げていますが、China臨床前研究の多さに比較して日本の少なさ、それを象徴するような、日本のトップメーカー武田薬品がChinaのベンチャーの新薬に4億ドルものマネーを払って(権利を)買ったことを明言せず半ば嘆いているふうに見受けられます。
また、日米欧中の創薬メーカーの、各国オリジン新薬に占める前臨床品目の割合が、英65%、米62%、中61%、仏59%、イタリア59%、スペイン57%、独45%、日35%と、その研究投資の少なさを明らかにしています。この数字はもう少し掘り下げた分析が必要で、もちろん研究開発効率という意味でみると日本が一番いいという見方も有り得るわけです。
ただし、やはり研究開発投資の少なさは間違いないところでしょうから、若い研究者、技術者のモチベーションはやはり上がってこないという一般論は有ります。

このことは、ひとり創薬業界に限ったことでなく、エレクトロニクス、半導体、化学等々、どの業界においてもかつてと比べて研究開発投資が細ってきています。
だからこそ、日本全体でやはり大きな問題なのです。

イノベーションを起こす力というものは、ただ研究開発投資を増やせばいいという様なものではなく、ある種特異な能力であるのでもちろん一概に語ることは戒めなければならないことですが、そういう特異な方法論は方法論、そして大構図は大構図というふうに切り分けて議論することも必要です。

そして、日本の研究開発投資を増やしていかなければやはり日本からのイノベーションは減衰していってしまい、それこそ日本パッシングのような状況がますます進んでしまうということにもなるでしょう。

このような大きな課題について、これからもできるだけ正直にそして日本の立場で述べていきたいと思っています。






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