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「智子、そして昭和 エピローグ2」/美智子さんと利発さ

 モノローグを書きながら、プロローグなしのエピローグ2です。今回は勝手ながら全く個人的なことがらを記載させていただきます。

 モノローグの中で、”智子”のモデルは山本周五郎の「おたふく」の”おしず”であるとともに、既に30年以上も前になる22才から27才までの5年ほどのあいだ、恋焦がれ続け、それゆえに実ることの無かった大阪の女性、美智子さんという女性だと書きました。

 もともと周五郎がわけ合って”おしず”のその後を書けなかったことから、是非”おしず”に結婚の本当の意味での仕合せを味わってもらいたい、という募る気持ちをきっかけとして「智子、そして昭和」を書いたのですが、「おたふく」を初めて読んだ40年近く前に恋焦がれるほどに好きだったのが大阪の美智子さんという女性で私の中ではその二人がある部分でどうしても不可分なのです。ですのでもちろん”智子”は美智子から取っています。

 また、”おしず”のその後を描くとすれば結婚生活ですから、可愛らしさ以外の知的な要素が是非欲しいという意味で美智子さんのイメージを重ねることにしました。

 美智子さんですが、一度だけすることができたデートのときの姿や内面の美しさが今に私の心の中に生きています。

「立ち現われた時の眩しさは今も胸を離れない。府立の進学高を卒業し神戸の女子大の四年生だった美智子さんの輝くばかりのときと思われた。そのほんのひと時をまみえたにすぎないのだが、初めて会った三年前、高校を出たばかりで初々しく少し幼なさが残る頃から知っていたのだが、豊かな内面が年齢に応じて過不足なく形作られ、さらにしっかりしたものへ成長していく予感に満ちているように見えた。外見は、ほんの少し平均より肉づきがよくぽっちゃりとして、愛らしく優しい顔つきが賢さの嫌味を消しており、160センチ有るか無いかの背丈が実際より高く見えるのは立ち居振る舞いがすっきりしているためだろう。ほのかに立ち始めた色香がそこはかと好ましく、肌の白さとほがらかな内面とが相まって健康的な清潔感が溢れており、アイボリーの白地に黒の水玉模様のワンピースを着た姿は大人の美しさと清楚なかわいらしさの素敵なバランスを存分に表現していた。そして男前なものを程よく含んだ女性らしい性格は男女問わず誰にも好かれており、男たちにとって文字通りマドンナ、そんな娘だった。」

 ということになりますが、ここに現した好ましい利発さというものを「智子、そして昭和」には入れてみたつもりです。女性の賢さとか利発さというのは男にとって結構微妙な領域に属するものですが、私の見た女性の中で嫌味が消されている好ましい利発さというのは美智子さんに尽きているということになります。

 おそらくですが、周五郎夫人のきんさんも実は「おたふく」に表れている可愛さの外にたくさんの賢さや利発さを備えていたと思われるふしがあります。それは「夫 山本周五郎」を読むたびに思うことです。このエピローグ2は個人的なことがらを書き過ぎましたので、最後に周五郎夫人清水きんさん著「夫 山本周五郎」の一読をおすすめしておきたいと思います。


 

 

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