見出し画像

「小説 雨と水玉(仮題)(60)」/美智子さんの近代 ”友だち”

(60)友だち

日曜日は家具類をどうするかということの相談と白物家電製品やガスレンジなどについて下見をすることになっていた。家電などは新居の近隣でその後啓一が順次買えるものを取りそろえていくことになる。

家具類は大物は美智子が母親と相談して決めることにし、小物はこれから東京でホームセンターなどで実際に見て決めることにした。また、家電類は、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなども今回見た中で概ねサイズや必要なスペックがわかったが、これもやはり東京でもう一度見た上で決めようということになった。
午後一時過ぎくらいまでかかって一通り見ることができたので昼食を取ることにした。
啓一が、
「あのね、結婚式の招待状を来週あたり送ることになるでしょ。ばたばたと忙しくしてきたんで後回しになってるんだけど、そろそろ親しい友達には美智子さんを紹介しておきたいと思うんだけど」
「うん、それってOさん?」
「うん、そう。
Oには結婚前に嫁さんを紹介してもらってるし、第一、曽根の社宅に住んでて去年の十月の出張の時、そこに泊まってなかったら、美智子さんとこういうことになってなかったかもしれない。それやのに、いままで何にも言ってないのはちょっと僕、気になっててね。
いいかな?」
「うん、もちろん。
わたしも知らないわけではないし、確かにきっかけをくれたんやと思う。」
「それから、美智子さんもそういうお友達がいれば僕を紹介してくれておいた方がいいと思う」
「わたしも心当たりがあるので少し考えてみる」
「そうやね、心当たりってだれなの?」
「うん、やっぱり大学の同級の親しい女の子。彼女も彼氏いててもうすぐ結婚するらしいって聞いてる。でも彼女だけっていうのもどうかなって思ってて。
大阪で式挙げるから、そのときに皆で集まってもらうんでもいいかなという気もして。
あんまり女性同士ってそこまでしなくてもっていう感じもあってね」
「なるほど。
そしたら、少し考えてもらって、僕はいつでも対応するので、また美智子さんに様子を聞くことにする」
「うん」
「そしたら先にさせてもらって悪いけど、Oに来週か再来週の土曜日の夜で都合聞いてみていい?
それから、嫁さんも一緒に来てもらうってことでいいかな?」
「問題ありません(笑)」
「ありがとう、
Oの都合がわかったら電話するようにする。
もし来週やったらまた美智子さんの家に泊めてもらうことになるけどかまへんかなあ?」
「大丈夫、それはわたしに任せて」

そうしてその日帰宅した夜、啓一がOに電話した。
「あのな、実はな、俺、結婚することになって」
「それはおめでとう。よかったな」
「それで大阪に行って紹介したいんやけど、今週以降の土曜日とかで都合いいとこあるかな?」
「ああ、ええよ、今週でもいいんやけど、来週の土曜の方がもっとええな、それでええかな?」
「ええよ、そしたら、来週の土曜の夜。よろしく頼むわ。せっかくやから嫁さんも一緒に来てくれるかなあ?」
「もちろん、わかった。
それで相手はどこの人なんや?」
「いや、それが大阪の人でな、曽根に住んでんねん。」
「えっ!、なんやそれは、うちの近所かいな」
「うん、おまえも知っている、あの田中さん、田中美智子さんなんやけど」
「なるほど、そうかあ、なんやクサいと思てたらやっぱりそうか、それはおめでとう。」
「ありがとう」
「前から付き合うてたんか?」
「そのあたりはまた別途にさせてくれ。
まあ、来週の土曜日、頼みますわ」
「わかった、楽しみにしてるわ」
「ありがとう」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?