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「ギリシャ人の物語Ⅲ 新しき力」塩野七生著(新潮社)/ギリシャのポリスは崩壊し、その後をマケドニアの父子が襲い、子のアレクサンドロスはペルシャ・インダスをも征服し大王となるが、、、(その1)

読み応え満点の第三巻

この第三巻は読みごたえがありました。
第一にギリシャのポリス社会の崩壊を描き、
第二にそのギリシャポリスを反面教師にした広義のギリシャであるマケドニアに出現した父子の物語であり、とくに父フィリッポス2世の後を継いだアレクサンドロスの戦記の面白さは卓越しています。

塩野七生さんは、「ローマ人の物語」でもその戦記の記述のうまさは抜群でした。アレクサンドロスの会戦の醍醐味は、まさに歴史の醍醐味、軍事の面白みを堪能できます。

ギリシャのポリス崩壊について

アレクサンドロスの前に、ギリシャのポリス国家崩壊についてですが、
塩野七生さんは、二つの重要なことを記しています。

一つは、
アテネの民主政の崩壊について、アテネ人が民主政を主導するリーダーの存在を重視しなくなったことがその崩壊の最大の原因だと言っていることです。
民主政、すなわち国民全員の意志を反映させ政治を行うために、リーダーの存在を否定するということをアテネ人がしてしまった、そのために民主政が崩壊したのだと。
アテネが民主政とともに全盛を誇ったのは、ペリクレスの時代ですが、ペリクレスはただ一人リーダーとして決断をしたが、それをアテネ人が決断したと思わせることにも成功したから、アテネの民主政は機能し、アテネは全盛を誇ったのだと。

このことの意味は、いまの日本にも、いや日本にこそ肝に銘ずべき箴言なのではないでしょうか。
安倍晋三が暗殺され、それを肯定するようなマスメディアの言論を聞くたびにいかに人間が歴史に学ばないか、ということに暗然とします。

二つ目は、
ギリシャのポリス崩壊の原因を、内部抗争の為だと断じています。それはその通りであることが、ペロポネソス戦争がアテネ、スパルタ間で行われ、最後はスパルタがギリシャの宿敵ペルシャと組むことによってアテネが崩壊し、その後時を経ずしてスパルタ自身もギリシャ文明とともに崩壊する。
この経緯は、栄華を誇った文明が崩壊する時の最頻のパターンです。

内部の権力闘争を外国の干渉を引いて勝利しても、それは本当の意味での勝利ではないでしょう。
対外国に対しては、いくら内部抗争していようとも団結をくずさない、これが近代世界を制した米英の背骨を形成しているものです。
日本は、いつまでたっても特に野党の対外国擦り寄りが絶えません。スパイ防止法がいつまでたっても成立しないのは、野党を中心にスパイ行為をしているからではないでしょうか?

私は、塩野さんが日本のために、ギリシャローマ世界を渾身の情熱を傾けて書いてくれたのではないかとさえ、思っています。
面白おかしく読むのも歴史ですが、本当の意味で歴史を読むということは、母国の永続のための知恵を身に着けるためだと思います。



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