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本の廃棄から整理へ 18

廃棄する新書を選ぶという趣旨で始めたエントリですが、廃棄は気持ち的に無理そうだし、妻にもストレージルームを借りてそこに入れるということを了承していただきましたので、以後は「廃棄」というショック強めの表現をやめて、「整理」という穏当な表現に変更することにしました。

それにしても、陽射しがあると、とても暑いですね。さらに、日陰でも風がないと、絶望的に蒸しますね。若干今日は、そんな悪条件の中に長らく放置してしまった新書が見つけ出されて、若干変色気味です。

新宮一成『夢分析』(岩波新書 2000)

世紀転換期ごろだったか、精神分析の科学性を批判する本がたくさん翻訳されていまして、私もそれを読んでなるほどーと思ったものです。それでもそうだなと思いつつ、私は不真面目な人なので面白ければいいじゃん、と、何かを解釈する際に、精神分析的なテクニカルタームを使うことも大いにありました。

最近はあまり精神分析を説明する本も少なくなったのかよくわからないですが、新宮一成さんは、ラカンの理解を踏まえた精神分析的解釈を教えてくれる方で、比較的よく本を買っていました。読んだとはなかなかいえません。

この『夢分析』は、確か2冊あって、こっちはどこかでリサイクルされていた方で、それならばもう廃棄でもいいかなあと思いました。

見田宗介『現代社会の理論 情報化・消費化社会の現在と未来』(岩波新書 1997 第7刷)

これももっときれいな版を持っているはずなのですが、東大社会学の領袖の一人で、割と不思議な研究で面白かった見田宗介本は、一時期よく集めていました。この新書の内容は覚えてないけど。

90年代末から2000年代初頭にかけて、その業界では文芸批評から社会学へと、ある種のモードチェンジがあったような気がします。文学も、作者や作品に及ぼされる社会や他者(歴史とか先行作品などの厚み)の影響を捨象できなくなった時期のように覚えてます。

私はそういうモードチェンジがあまり好きではなかったので、全部を集める方向に動いたのですが、それが今こういう形で整理しきれなくなっている根源かもしれません。保管。

杉田俊介『非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か』(集英社新書 2016)

80年代のことでしょうか、恋愛することが何よりも大切なことと喧伝された時代があったらしいです。ヤンキーは童貞を捨てた年齢を自慢し、ヤンエグはキラキラした恋愛を自慢していたそうです。その残滓が残っていて、90年代も、恋愛への執着のようなものが、人の格をはかる基準として、ある種の人々に共有されていたように感じます。

これを共有している人は、決まって私に言いました。

「あんまり気にしない方がいいよ」。

気にしないでいいのはマジョリティだからですよね、と今ならいえます。

杉田さんも私と似たような世代なので、その空気の嫌な感じを受け止めており、そこから派生する世間のいやらしさについて語っている本だと、私は曲解してます。

子どもは、時々、保育園で他の子から「小さいね」「なんで小さいの」と言われたと、帰ってから泣いた。僕も何度かそういう場面を目にした。送り迎えの短い時間ですらそうなのだから、日常的に言われるのだろう。悪意や悪気はなく言う子もいれば、明らかな優越感や意地悪でそういうことを言う子もいた。それをいじめや差別の萌芽と言えるのかどうかは、よくわからない。ただ、悲しい。こんな悲しさを、僕は今まで知らなかった。

p.231

この問題はまだ続きそうですので、本棚へ戻します。

ロジェ・ケンプ『ダンディ ある男たちの美学』(講談社現代新書 1989)

私はもてないことを打開するために、どちらかというと外見についてのことを学ぶようになりました。外見は作れるんだということを理解した後に、憑き物が失せたような気がします。そうした中で、とはいえ「気にしない技法」があるのかと、ダンディたちの精神性を学ぼうと、この本を購入した記憶があります。

これは2冊目です。1冊目はどこかに消えました。

本棚。

細野真宏『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? 世界一わかりやすい経済の本』(扶桑社新書 2009)

細野さんは、確定申告とか税金とかをいざちゃんとした社会人になって考えなきゃといったときに、いろいろ本を読んだ人の一人かもしれません。で、その延長上で、こういう新書を買ったんだと思います。

政治や行政については、私はよくわからないし、判断がしづらいです。その時々の力関係でことが動くので、自分の立場から言いたいこともあるけど、言っても仕方ない場合も多いし、短期的にみるとよくないけど長期的に見たらどうだろうということも多いので、こういう内容は拝聴するだけにとどめております。

ただ人間的に嫌な奴というのは嫌ですね。このタイトルの章は第4章なのですが、「マクロ経済スライド」などの考え方を知ってよかったと思います。保管。

上原善広『被差別の食卓』(新潮新書 2008 第7刷)

良い本だと思います。世界各国の差別と貧困の中で生まれた料理をめぐっていく旅なのですが、勉強になります。

上原さんは『発掘狂騒史』がとてもいいルポでして、面白いなあと思いました。

ルポは引退したようですが、何か書いていただきたい作家さんの一人です。本棚に戻す。

ピエール・グリマル『古代ギリシア・ローマ演劇』(白水社文庫クセジュ 1979)

これ、購入した時1050円もしたんですよね。のちに、この種の内容の本はたくさん集められたことから、なんとも若気の至りだったなあと思わせる購入経験でしたね。

思い出したのは、「コロス」って何なんだろう、っていう疑問がかつてあったからですね。集合的な歌い手集団で、その集団が陣取る場所も、「コロス」なんかいろいろあって、よくわからなかったんですよね。

クセジュは保管。

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