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チェーンストア企業必見:新規出店の売上予測フローとAI活用法

今回のコラムでは「新規出店時売上予測のフロー」について解説します。

チェーンストア企業においては、様々な手法で新規出店時の売上予測を実施していると思います。
しかし、正しい手法で売上予測ができていなければ、精度が上がらず、企業成長に大きく影響を及ぼします。

本コラムでは、新規出店時の売上予測がどのように行われるべきか、正しい手法を解説していきます。


1,新規出店時売上予測の基本フローの概要

新規出店時の売上予測は、数々の複雑なステップを経て行われます。
その流れは、大まかに以下のようなフェーズで構成されています。

① データ収集

まず最初に、分析の元となるデータを収集します。
これには、人口統計データ、地域の経済状況、交通状況、競合他社の情報などが含まれます。

② データ加工:特徴量エンジニアリング

次に、収集したデータを機械学習モデルが扱える形式に整理し、有用な特徴量を抽出または生成します。
開発部員のこれまでの経験や仮説を定量化することで、予測精度の向上に大きく寄与します。

③ モデルの選択と訓練

適切な予測モデルを選び、訓練データを用いてそのモデルを訓練します。

④ 売上予測の結果の解釈と評価

最後に、予測結果を解釈し、モデルの性能を評価します。

それぞれのステップは非常に重要であり、一つ一つが売上予測の精度に大きな影響を与えます。
それぞれのフェーズを順に詳しく見ていきましょう。

2,データ収集

売上予測の第一歩として、適切なデータを収集することが極めて重要です。
データは、予測モデルを構築するための原材料であり、その質と量は最終的な予測の精度に直結します。
このデータを基に、モデルに売上の傾向を学習させ、候補物件の売上を予測するのです。

データの収集は、既存店の情報や、新規出店地域の人口統計情報、地域の経済状況、交通の便、近隣の競合他社の存在等、予測に影響を与える可能性のあるすべてのデータを収集する必要があります。(図1参照)

これらの情報は、国勢調査や、商業データベース、さらには自社で行う実地調査などから収集することがほとんどです。

図1 収集データ一例

例えば、国勢調査データでは、地域の人口、年齢構成、世帯収入などを取り入れます。
これらは顧客の消費行動に大きな影響を与える要素です。
また、競合店舗の存在も、顧客の訪問頻度や選好に影響を及ぼします。

データの収集は手間と時間を要する作業ですが、それだけにその価値は大きいです。
正確で詳細なデータを用意することで、予測の精度は格段に向上します。

3,特徴量エンジニアリング

データ収集が完了したら、次にデータの加工、すなわち特徴量エンジニアリングの段階へと進みます。
これは売上予測フローの中でも、特に重要なプロセスと言えます。

特徴量エンジニアリングは、既存のデータから新たな特徴量を作り出す技術のことを指します。
これは、機械学習モデルが問題をよりよく理解し、より精度の高い予測を行えるようにするために不可欠なプロセスです。

例えば、自店舗と競合店の店舗面積の差分を出して競合との営業力の比較する特徴量を作成したり、商圏内の総人口の中から、メインターゲット層の人口数の割合を算出した特徴量を作成する、といったプロセスです。
基本的なデータでは表現しきれない、開発部員の経験やノウハウを定量化することで、新規出店の成功率をより正確に予測することが可能となります。

また、特徴量エンジニアリングでは、類似している特徴量をグループ化するクラスタリングや、売上傾向を特徴量に変換するターゲットエンコーディングという手法もあります。(図2参照)


図2 特徴量エンジニアリングの主な手法と合成特徴量の一例

このプロセスは、モデルが効率的に学習でき、予測を行えるように、データを最適な形に整理することが目的です。
緻密な特徴量エンジニアリングは、予測の精度を大きく向上させ、企業が新規出店の成功をより確実に掴むための鍵となります。

詳細は過去の記事で解説しています。
精度改善のカギ:経験を定量化する特徴量エンジニアリング

こちらの記事もぜひご覧ください。

4,モデルの選択と訓練

特徴量エンジニアリングが終わったら、次にモデルの選択と訓練のステップに進みます。
このステップでは、訓練データを使ってモデルを学習させ、最適な予測を行えるようにします。

モデルの選択は重要なプロセスで、どのアルゴリズムを選択するかは問題の性質、利用可能なデータの量、求められる予測の精度などによって異なります。(図3参照)

図3 アルゴリズム一例

一般的に、機械学習系モデルでは精度は高いものの解釈性が低く、回帰分析系モデルでは解釈性はたかいものの精度が低くなる、と言われています。(図4参照)

図4 予測精度と解釈性の関係 引用元:arXiv:1910.10045v2 [cs.AI] 26 Dec 2019

詳細は過去の記事にて解説しています。
AIが描く売上予測の未来:重回帰分析から機械学習へ

こちらの記事もぜひご覧ください。

最近では、LIME・SHAPに代表される説明可能なAIの技術が生まれ、機械学習系モデルでも解釈性の高い予測が可能になってきています。

モデルの訓練では、選択したモデルに収集したデータや特徴量エンジニアリングによって作り出した訓練データを学習させ、データのパターンを学習させます。

ただし、過学習に注意が必要です。
これは、モデルが訓練データに過度にフィットし、新しいデータに対する予測性能が落ちる現象を指します。
過学習を防ぐためには、訓練データとは別の検証データセットでモデルの性能を評価することが重要です。(図5参照)

図5 モデル精度検証方法

このステップで適切にモデル選択と訓練を行うことにより、企業は新規出店の売上を高精度で予測することが可能となります。

5,売上予測の結果の解釈と評価

モデルの訓練と売上予測が完了したら、次にその結果の解釈と評価を行います。
このステップは、モデルが実際にビジネスに有用な洞察を提供しているか、また、新規出店の売上予測が信頼できるものかを確認するために重要です。

まず、モデルの性能を評価するためには、訓練データとは異なるテストデータを用いて予測を行い、その結果と実際の売上を比較します。
ここでの評価指標としては、平均絶対誤差(MAE)や平均二乗誤差(MSE)、などがあります。

また、特徴量の影響度を評価することで、どの変数が売上予測に大きな影響を与えているかを理解することができます。(図6参照)

図6 予測影響因子の可視化イメージ図

これは、ビジネス上の意思決定において、売上予測が自社の仮説とマッチしているか、本当に正しいのかを理解するうえで非常に重要です。
例えば、いかに高精度な売上予測が実現したとしても、なぜその予測になったのか、どういう要因でこの予測値になったのかを理解していなければ、出店会議において意思決定が難しくなるでしょう。

このステップでは、予測の精度を確認するだけでなく、モデルがどのように予測を行っているか、また、どのような変数がどれくらい影響を及ぼしているかを理解することも重要です。
これらの情報をもとに、より精緻な戦略を立てることが可能となります。

6,まとめ

今回のコラムでは、新規出店時の売上予測の基本フローについて詳しく見てきました。
データ収集から始まり、特徴量エンジニアリング、モデルの選択と訓練、そして予測結果の解釈と評価まで、一連のフローを経ることで、新規出店の成功可能性をより正確に予測することが可能です。

このフローを理解し、適切に実行することで、企業は市場への進出をより戦略的に計画することができます。
また、このプロセスは、企業が新規出店に向けたリスクを最小化し、チャンスを最大化する上で、重要なガイドラインとなるでしょう。

このコラムが、皆さんの業務の一助となれば幸いです。


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