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九州の知財判例⑤ チロリアン訴訟

こんにちは。弁護士のsumiです。福岡で知財案件の仕事をしています。
このnoteは、九州にも知財案件がたくさんありますよということを伝えるために、九州の知財判例を分かりやすく紹介しようと作りました。

特許や商標を取った方がいいかな、誰かの権利を侵害していないかなと悩んでいるみなさんの参考になれば幸いです。


今日の訴訟 ~チロリアン訴訟~ 

今日の訴訟は、福岡の有名なお菓子屋の千鳥屋が、「チロリアン」の商標を巡って争ったケースです。

チロリアンはパッケージもかわいく、サクサクのロール生地のなかにクリームが詰まっていて、子どもが大好きなお菓子です。福岡のお土産にもおすすめです。

千鳥屋は一つの会社かと思いきや、創業者の4人の息子たちがそれぞれの別の会社を立ち上げ、福岡・博多区の「千鳥饅頭総本舗」、福岡・飯塚市の「千鳥屋本家」、東京の「千鳥屋総本家」(現在は閉業)、関西の「千鳥屋宗家」に分かれています。

2016年には、関西の「宗家」が福岡・博多区の「総本舗」に対し、関西地区でのチロリアンの販売差止めを求めて訴訟を提起しましたが、2018年の判決では宗家の主張が退けられました。

チロリアンの商標

今回の訴訟は、博多区の「総本舗」が飯塚の「本家」に対し、チロリアンの名称を商品名に使わないよう訴えるものでした。チロリアンの商標権は「総本舗」が持っているので、飯塚の「本家」に対して名称使用の差止めと損害賠償を求めていました。

総本舗のチロリアンの商標権について調べると、以下の商標が見つかりました。
登録0614146 チロリアン
登録5969132 チロリアンの音階(音商標)
商願2020-110116 カラフルなロゴのチロリアン(出願中)
商願2022-094475 黒色ロゴのチロリアン(出願中)

和解が成立

「総本舗」と「本家」は最終的に和解し、「本家」は今後チロリアンの名称を使わず、ヨーデルンの名称に変更すること、解決金として5000万円が支払われることとなりました。

判決までいっていないので詳しくは分かりませんが、おそらく「本家」は、昔からこちらもチロリアンの名称を使っていたという先使用権を主張していたのではないかなと思います。しかし、敗訴の可能性が高かったのでしょう。

ほかにも訴訟が

実は他にも、千鳥屋の間では訴訟が起こっています。
たとえば、福岡博多の「総本舗」と関西の「宗家」の間では商標を巡る争いが多く起こっています。

その一つが、「宗家」の取得した『ザプレミアムチロリアン』の商標権に対して『チロリアン』の商標権をもつ「総本舗」が無効であると審判を請求したもので、結果、『チロリアン』の部分が重要という理由で「宗家」の『ザプレミアムチロリアン』の商標権は無効になりました。

雑感

お菓子のおいしさや品質ももちろんですが、商品が売れるためにはその商品名もしっかり守っていかなくてはなりません。同族経営の難しさも垣間見えますが、商品名やブランド名は企業の死活問題ですので、厳しくなるもの致し方ないと思います。

チロリアンを食べるとふと思い出すのでした。

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