九州の知財判例② 模倣品の差止め

模倣品の差止めはよくあるケースの一つです。
九州の釣り具メーカーが訴えられた知財判例を紹介します。

【大阪地方裁判所 令和4年8月25日判決】
グレ用の棒ウキを製造販売する釣り具メーカーXが、九州の釣り具メーカーYに対し、模倣品の棒ウキを製造・販売しているとして訴えた裁判です。

原告Xの棒ウキの形状が不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に該当するかが争われました。

本来は、会社の商品の形状を真似されないようにするには、意匠権を登録して商品を守ることが多いです。

原告Xは今回の棒ウキの意匠登録していましたが、権利期間が終了していたため、やむなく不正競争防止法を使って販売差止めや損害賠償を請求しました。

模倣品を差止めするには、不正競争防止法2条1項3号がまず思い浮かぶのですが、期間制限があって販売から3年を過ぎていたら使えません。

原告Xは何十年も前から今回の棒ウキを製造販売していたので、この3号は使えなかったと思います。

そこで、原告Xは、不正競争防止法2条1項1号を使って模倣品の差止めや損害賠償を求めました。

ところが、この1号はかなり条件が厳しいです。

1号の定める「商品等表示」は、たとえば商品名や企業名、サービス名などの文字によるものが一般的なのです。

一方、原告Xが守りたいのは商品名ではなく、棒ウキの形状でした。
これを「商品の形態」といいます。

文字ではなくて「商品の形態」が1号の「商品等表示」に該当するためには、「特別顕著性」(他の商品とは違う特徴のある形状)と「周知性」(商品が客に広く知られていること)が必要になってきます。

最近ではイッセイミヤケのバッグは認められていましたが、ルブタンの赤色の靴底は認められませんでした。

今回の裁判では、「特別顕著性」が認められるには、ウキのボディに他のウキとはかけ離れた特異な形態が必要とされ、認められませんでした。

「周知性」についても、X商品の売上高や販売数が、ウキ市場の販売高に比べて少ないなどの理由から認められませんでした。

【感想】
今回は意匠権の権利期間が終了していたという事情もあり、裁判所の判断も厳しかったかなと思います。
販売してまもない商品であれば、不競法2条1項3号を使いたいですね。

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