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リンクスランドをめぐる冒険Vol.30 ローカルなリンクスコースの魅力 ホープマン・ゴルフ・クラブ

2023年6月22日から2023年7月23日まで。
約1ヶ月間、スコットランドのゴルフコースをめぐる1人旅を敢行。
これだけを考えるとゴルフ好きなら誰もが
「羨ましい!」と思いつくままを言葉にする。
実際、私だって行く前はほぼ、楽しいことしか頭の中になかった。
しかし、いざ行ってみると悪戦苦闘と至福の時の繰り返し。
振り返ればジェットコースターのような1ヶ月間。
これはそこで見たこと、感じたことの備忘録です。

エキサイティングなバックナイン

前言撤回。

ホープマン・ゴルフ・クラブは「1回プレーすれば十分」なコースではない。
エキサイティングな12番以降、海沿いのホールはどれもプレーヤーの胸踊らせるレイアウトだった。
Par5こそないがPar4は距離があり、ドッグレッグしていたりハリエニシダがハザードになっていたり海に向かって打つショットが必要だったりした。
15番は122ヤードと距離の短いPar3だが、海方向に傾斜しているので距離感を間違えると崖から落ちる。
PWで打ったショットはグリーン奥のカラーに止まって「ちょっとおっきかったかなー」なんて安穏とボールを見に行ったら、土手のすぐ向こう側は崖、岩礁に当たった波が白い飛沫を上げていた。


グリーンの奥、カラーにちっちゃく白く見えるのがボール。このすぐ向こう側は崖。


Finishing Holeは388ヤードのPar4。
フェアウェイが広いのでプレッシャーのかからないティーショットを打てるが、ややドッグレッグしており、グリーンまで打ち上げになる。その手前に小川がハザードとなっているのでパーを取りに行くのかボギーでまとめるのか、マネージメントが求められるホールとなっている。

ホープマン・ゴルフ・クラブのスロープ・レイティングはイエローティで118。難易度がぴったり平均値なのだ。
これはアベレージ・ゴルファーにとって、もっとも取り組みやすいコースといえる。難しいということはなく、けれど易しいということもなく。つまり本人のコース戦略方法でどちらにも変わるということ。
ただし、女性の場合は122とかなり難しくなるが…。

ゴルフの本質が身近にあるという魅力


12番Par3、Prieshach(プリーシャッハ)でワンオンに成功した。
けれど、ほぼ無風のコンディション。
視覚的効果は高いが12番のスコア・インデックス、つまり難易度は15と易しい方(数が少ないほど難しい)。
もし、あのホールで波飛沫がグリーンに届くほど強い風が吹いていたら?
頬を殴りつけるような雨が降っていたら?
マフリハニッシュでも感じたことだが、リンクスコースは一見、だだっ広く目標物もなく、ホールによる違いが感じられなくなる。
でも、これは1回訪れただけの、ゲストの感想だ。
ホープマン・ゴルフ・クラブのフロント9は面白味に欠ける、と書いたが果たしてそうだろうか?

コースはステージに過ぎない。
これは世界中、どこのゴルフコースも同じだ。
異なるのは演出効果。
設計による人工的な演出なのか、気まぐれな自然による演出なのか。
どちらが良い悪い、どちらが優れている劣っている、という問題ではない。
それは個々のゴルフコースの比較で語られる問題だ。
リンクスコースは放牧しか適さなかった固い砂丘と天然芝をそのままゴルフコースに変えた。
ローカルのほとんどのリンクスコースは1800年代後半から1900年代初頭に作られている。第二次産業革命当時とはいえ、土木の造設作業は今よりずっと困難な時代だったことは想像に容易い。
コースを作るというより、コースに適した土地であることが優先課題だったのだろう。傾斜や砂丘のコブやハリエニシダの群生、羊の風よけバンカーや小川など…。
そこに各ホールをデザインする。
人工的な演出に比べれば、確かに変化は少ない。
それを補うのが自然の演出だ。
1日のうちでも晴天、曇天、小雨、驟雨が訪れ、これにドン吹きの風が加わると難易度はジョーカーが入ったファイブカードになる。
4月に入れば天然芝は青々と芽を吹き、固い砂丘の上なのにフカフカと心地良い。5月に入ればハリエニシダが満開になる。
12番Par3、Prieshach(プリーシャッハ)を囲むハリエニシダの群生が一斉に黄色い花を咲かせたらどれほど壮観な景色になるだろう?

繰り返し、繰り返し回ればホールごとの小さな違いがはっきり分かるようになり、スキルに合わせた攻略ルートが明確になる。
何年も回れば、季節ごとの風や天候が読めるようになる。
熟練の漁師が大海原で自分だけの漁場を知っているように。

1回プレーしたぐらいで「どのホールも同じような光景」などと宣うプレーヤーにローカルのリンクスコースの魅力は到底、理解できない。
地元で、足繁く通い、時には自然に翻弄されて打ちのめされ、もうゴルフなんて止めた!と言った舌の乾かないうちにコースに出て、今度は自然に愛されているかのように好天の中でベストスコアを出して、そんなことが日常になった時、ようやくリンクスの魅力を理解できるようになるのだろう。

それはまた、ゴルフの魅力の本質でもある。

…魅力、というか魔力というか、沼でもあるけれど。

続く






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