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照らされたものは強化される!ポジティブな介護経験を測定せよ

▼ 文献情報 と 抄録和訳

老人ホーム入居者の家族介護者におけるポジティブな介護経験の測定;Positive Experiences Scale, Gain in Alzheimer Care INstrument, Positive Aspects of Caregiving questionnaireの比較

Smaling, Hanneke JA, et al. "Measuring positive caregiving experiences in family caregivers of nursing home residents: A comparison of the Positive Experiences Scale, Gain in Alzheimer Care INstrument, and Positive Aspects of Caregiving questionnaire." Geriatrics & Gerontology International (2021).

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar 

[目的] 認知症の介護者のポジティブな介護経験を評価するために、Positive Experiences Scale(PES)、Gain in Alzheimer Care INstrument(GAIN)、Positive Aspects of Caregiving(PAC)を比較し、介護者と被介護者のどのような特性がポジティブな介護経験に関係するかを検討する。

[方法] オランダの4つの老人ホームで認知症の老人を介護している計63名の介護者(平均年齢59.2歳、SD11.8)が、この横断的観察研究に参加した。内部一貫性、収束的妥当性、使いやすさ(項目の関連性と理解性、使いやすさ、項目の欠落、ユーザーの好みの認識)を、それぞれCronbachのα値、相関係数、記述統計学を用いて調べた。結果GAIN,PAC,PESのCronbach's alphaは,それぞれ0.90,0.94,0.68であった。PESの合計点は天井効果を示した。3つの尺度とも収束性が確認された。PESは欠落データが最も少なく(平均欠落項目数0.2、SD 0.5)、40%の介護者が好んで使用した。次いでGAIN(平均欠落項目数0.6、SD 1.7、11%が好んで使用)であった。肯定的な介護経験は、教育水準と負の相関を示した(範囲-0.28〜-0.35)。PESのみが介護者の年齢と正の相関を示した(r = 0.25)。

[結論] 3つの質問票はいずれもポジティブな介護経験を評価するために用いることができるが、GAINは認知症患者の介護者に最も適した質問票であると考えられる。今回の結果の一般化を検討するためには、さらなる研究が必要である。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

この論文を読んだとき、まず感じた。
どうして、ポジティブな面だけ?
闇があり光がある、夏があって冬がある、一方だけで成り立つものではない。
もちろん、介護経験にだって、ポジティブあれば、ネガティブあり。(介護負担について参考になるサイト
その中で、介護経験のポジティブな面だけを切り取って、それを測ることのできる尺度を調査しているのは、なぜ?

この疑問を考えた際に、思い出した格言がある。

管理に関わる根本の問題はいかに管理するかではなく何を測定するかにある:測定を行うとき測定される対象も測定する者も変化する
P・F・ドラッガー

この変化には特徴があって、「記録(測定)すること自体が、行動を改善する効果を持っている」。
植物が光に向かうように、虫が街灯に向かうように、人も照らされた方向に向かう。
この著者がしたかったことは、測ることで介護のポジティブな側面を、小さな灯を、強化したかったのではないだろうか。
もちろん、・・・希望的観測である。

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