見出し画像

12歳で筋力を計測 → 30年間追跡研究

▼ 文献情報 と 抄録和訳

ライフコースを通じた筋力の変化 オーストラリアのコホートにおける小児期から成人期半ばまでの筋力の追跡と軌跡のパターン

Fraser, Brooklyn J., et al. "Muscular strength across the life course: The tracking and trajectory patterns of muscular strength between childhood and mid-adulthood in an Australian cohort." Journal of Science and Medicine in Sport (2021) 696-701.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 筋力低下は、現在および将来の健康状態を悪化させる危険因子である。しかし、ライフコースに沿った筋力の軌跡があるのかどうかは不明である。本研究では、小児期から成人期半ばまでの筋力の軌跡を探ることを目的とした。

[方法] 研究デザイン前向きな縦断的研究である。Childhood Determinants of Adult Health Study参加者を対象に、小児期、若年成人期、中年成人期に筋力(左右のハンドグリップ、肩の伸展・屈曲、脚の筋力を手持ちのダイナモメーター、肩と脚の後ろのダイナモメーターで測定し、総合的な筋力スコアを算出)を評価した。小児期から成人期半ばまで(n=385)と、若年期から成人期半ばまで(n=822)の間で、筋力のトラッキングを定量化した。ライフコースの中で少なくとも2回筋力を評価した参加者(n=1280)について、筋力の軌跡パターンを明らかにした。

[結果] 筋力のレベルは、小児期と成人期中期、および若年期と成人期中期の間で一貫しており、最も高い追跡相関が見られたのは複合筋力スコアであった(小児期-成人期中期:r = 0.47、p < 0.001、若年期-成人期中期:r = 0.72、p < 0.001)。ライフコースを通じた複合筋力の3つの軌跡が確認され、参加者は複合筋力を平均、平均以上、平均以下のいずれかのレベルで維持していた。

[結論] 筋力の増加を目的とした戦略を導入しない限り、体の弱い子供は中年期に体の弱い大人になる可能性が高い。小児期に筋力向上を目的とした介入を行うことで、ライフコースにおける良好な筋力の軌跡を確立し、ひいては将来の健康状態を改善することができるかどうかについては、さらなる検討が必要である。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

子どもの頃の筋力レベルの傾向が中年まで続く。面白い研究だ。疑問が湧いた。

①子どもの頃の筋力レベルはいつ頃決まるのだろう?
②子どもの頃の筋力レベルは先天的要因 or 後天的要因?

“先天的要因の影響が大きい子ども”の筋力レベルは生涯にわたって続く可能性が高いが、“後天的要因によって筋力を作られた子ども”の筋力レベルは変動しやすいとか、そういうこともあるかもしれないと思った。研究しがいのある領域だ。