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子どもが覗く先の帆船 #30

 このブログの素材は、私が校長として在籍していた時に毎月書いていた「学校だより」の中に「校長室風景」という名の簡単な「エッセイ」を書いていたものからの出典です。
 校長室にいると聞こえる子どもの声、校長室前の廊下での出来事、そして校長室の窓から見える外の様子などが題材となっていました。ちょっとした子どもの様子、保護者の行動、そして先生達の心遣い(気遣い)等が中心です。時には世の中の出来事にも飛躍する時もありました。そんな「校長室風景」は、学校の様子を保護者や地域の方々、時には先生方により知ってもらうきっかけとなったらいいなあと思って始めたエッセイでもありました。
 その中で校長室の棚によく季節の花や果物(柿#10)を飾っていました。次の話は、少し古びた「帆船」を持ってきて飾った時の話です。(平成22年10月 1日 S小学校の時の学校だより)
 『校長室に、一昨日から帆船の模型を置いています。これは、いつの時代か分かりませんが学校に寄贈され、相談室の棚の上にずっとのせられていた物です。帆船の船名は「日本丸」といい、全長が110cmもあります。細部までとても丁寧に作られた物で、作られた方の思いや熱意が伝わってくる秀作だと思います。しかしその帆船の汚れはひどく、細かい部品もだいぶ傷んでいましたので、私は校長室に持ち込み、休み時間に(長年)降り積もったほこりだけはとろうとがんばっているところです。
 するとその一昨日の昼休み頃から、その帆船を掃除している私の姿を目ざとく見つけた子達が、校長室を覗いたり私に尋ねたりしてきました。
「校長先生、これ何?」「だれがくれたと?」「動くと?」(博多弁)
 やはり子どもは興味の固まりだなあと私はにんまりして思いました。そこで、校長室のドアを全開から、半開にしてみました。すると中が見えにくい分、見つけた子の『見たい』『覗いてみよう』の気持ちはより強くなったようです。そこでは、立ち止まって中を伺って覗く子、辺りを見回して誰もいないか見回して覗き出す子など様々です。覗く子どもは悪いわけではありませんが、やはり見たい気持ちが勝った時の行動なのかもしれません。
 このことが「興味」というものです。その「興味」が同時に何だろうという「関心」(又は疑問?)を引き起こし、見たいという衝動を伴って覗いてみようという「意欲」と覗こうという「態度」となったと思います。
 そして覗いてみて、また目の前で対象(帆船)を見た時、「これって何だろう?」「どうしてここにあると?」などという新しい「疑問や興味」が生まれ、初めて見たこれって何だろうと「関心」が生まれ、またいろいろ考えが巡るのです。
 学校での勉強もこれと同じです。子どもの興味や関心を喚起する教材や指導を入れること、興味・関心から意欲・態度とつながるような指導の流れを工夫することが大切なことをこの帆船から学ぶことができるわけです。
 頂いていた帆船は、長い空白の時間を破って、子ども達に話しかけてくれているようです。
「どうだい。凄いだろう!」 と』


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