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母の思いはきっと伝わる(ある卒業製作) #22

 卒業製作のことで一つ。
 昔のアルバムなどで調べてみると、各々がその時代を表しているのが特徴的です。これらはどれも、当時の担任の先生方が、巣立っていく子ども達の小学校時代の思い出を形に残せるように、そして大きくなって改めて作品を見たときに、みんなで共に作った時の様を一緒に思い出すことができるようにと願い制作したものだと思います。
 しかし最近の傾向でしょうか、小学校の卒業製作が減ってきているような気がします。
 私の耳にも、忙しいから、卒業の記念にとしてそこまでしなくていいから、はたまた卒業製作として完成した作品に作り上げるまで教員の力量が落ちているから等の声が聞こえてきそうです。
 そんな中で私は、平成25年の2月に出したS小学校の学校だよりに卒業製作がらみでこんな記事を載せていました。

 『今週のある朝のことです。卒業製作(写真)の作品の前で、一人の女性が一つの作品のプレートに手を触れて目をつぶっておられました。そこで私はその方の横にそっと近づき、お話をさせて頂きました。するとこんなお話をされておられました。
 「今年38歳になる子どもの卒業製作です。遠くで仕事をしていますが、朝の散歩の際にこちらに立ち寄らせて頂きあいさつをしています。・・・・兄弟全員がS小出身です。」と。
 何か朝からさわやかで、嬉しくなる一瞬でした。そして、ずいぶん前の作品ですが今も生きているんだなあとも思いました。来年は、卒業生にぜひ新たな卒業製作を作ってもらいたいとも思いました。』

 あれから10年近くも経ちました。この時のお母さんの手がお子さんの作品の上に重なっている様子が、今でも私の目に焼き付いています。重なっているほんの数秒間の間に、親の偉大さ、親の尊さを感じました。例え遠く離れていても、例え時間がたくさん経ったとしても親子の気持ちはずっと熱いものだと私は思いました。(令和5年8月5日)

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