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絵になる美しい街並みを創造する為の粉本/余市(よいち)/北海道余市郡余市町/街並み景観形成のモデルになる工場

 


 

 余市町は小樽市の西側、日本海側に突き出た積丹半島東側の付け根に位置する人口2万人余りの街。江戸時代から大正時代にかけてニシン漁で栄えた歴史を持つが、明治時代からはリンゴの栽培等も行われ、今は漁業と果樹農業が共に盛んな地として、更には1934年(昭和9年)に創業したニッカウヰスキーの余市蒸留所の所在地として有名。私企業の余市蒸留所を有名たらしめているのはウヰスキー製造工程の見学や試飲ができることに加えて、工場の内外に於いて情緒ある景観が享受できるからだと思われる。
 
 この景観がこの地に創出できたは創業者の竹鶴政孝がスコッチウヰスキーの王国スコットランドの気候に似ていたこの地を選んだこと、そしてこの地に創業者の情念とでも言える思い入れ深いスコットランドの街並み景観を彷彿させる工場を建設し始めたことが要因。

 この景観を形成している主な建物は登録有形文化財の城郭風に設えた事務所棟、棟上に明かり塔を設けた蒸溜棟、蒸溜棟の南に並んで建っている貯蔵棟、貯蔵棟に隣接するリキュール棟、蒸留所のシンボル的存在である麦芽を乾燥する排気用塔屋を設けた乾燥棟、原酒貯蔵する貯蔵庫、等々だが、これらの建物をこの地方独特の木骨石造の建築で形成、外壁を江戸切の軟石と呼ばれる凝灰岩で覆い、屋根を赤色系鉄板葺とし、所々に尖塔やアーチの出入り口等を設けることで、当時のスコットランドの美しい景観を再現している。

 工場でも思い入れを徹底して具現化すれば、伝統的町家の建ち並ぶ街並みと見紛う景観が創出できるのだ。


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