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絵になる美しい街並みを創造する為の粉本/吹屋(ふきや)/岡山県川上郡成羽町 / 地場で産出する塗材で彩られた街並み


 古い街並を本や雑誌に紹介する場合、それらを歴史的な発展過程や立地する地域の気候や風土等、多方面から紐解くことが多いが、その街並を形成する建築に使われている材料や色彩のみを切り口にするのも一興。
 その訳は古い建築の殆どが、建設地で産出される建築材料や顔料を使い、その影響が街並景観にもろに表出、加えて言えばそれが独特の個性の表出に繋がっていることもあるからだ。
 その影響が最も顕著に表れていると思えるのが吹屋の街並。吹屋は岡山県西部の山間部にあるが、街並を形成する建物の多くがインパクトの強い赤茶系の色で彩られ、他の街並とは、一線を画している。
 赤茶系を配色しているのはベンガラを塗った柱や梁、格子等の木部、それにベンガラを混入した漆喰の外壁、赤茶色の釉薬を掛けた石州瓦で葺いた屋根の部分で、全体に占める面積割合が可成り多い。 ベンガラが多用されているのは、吹屋が古くは江戸時代に幕府直轄の銅を産出する鉱山町として栄えた町で、19世紀後半からは副産物として産出した酸化第2鉄を主成分とする防腐・防錆顔料として用いられるベンガラの原材料となるローハを製造していたこと、また独特の赤茶色で知られる石州瓦が多用されているのは、これらの瓦が近接地の江津市都野津地区等で生産されており、この色は出雲地方で産出される含鉄土石「来待石」を釉薬に使用しているからで、吹屋の街並を彩る色彩はまさに地域の個性そのもの。今の街づくりの規範となること請け合いだ。

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