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センターラインはみ出してない?

先日、施術を受けに来た友人。


ウチに来る途中の坂道を登っていたところ、対向車線の車が、道路のセンターラインをはみ出して随分な速さで下ってきたらしい。しかもその車には危機感がなく、道の端に寄ったのは友人の車だったそうだ。
「ホントに怖かった!」
と、いつも穏やかな友人が珍しく怒る。



そういえば、と思い出す。


20代後半の頃、地域のバレーボールに参加させてもらった時期がある。週1回の夜、近くの小学校体育館まで自家用車で行っていた。だがその日はなぜか他の参加者の車に同乗させてもらった。理由は忘れたが、5人で乗車した。
片道1車線の暗い田舎道を通ったが、実は少し怖かった。運転手の後部席に座った私には、走っているのが道路の中央寄りに思えたのだ。体育館までは10分ほどだが、早く着いてほしいと願った。

そんな時だ。
車通りが少ない道なのに、タクシーが対向車線にあらわれた。そして明らかに道の端に避け、すれ違いざまに長めにクラクションを鳴らしたのだ。
『ああ、やはり真ん中に寄って走ってたんだな』
と思ったが、周りの皆さんの反応は違った。

運転手含めた皆さんが、クラクションに非常に驚き憤慨していた。
「何あのタクシー!?」
「おばちゃんだと思ってからかったんじゃない?」
皆が口を揃えてタクシーを罵った。

その反応に驚いたが、1番年下の、しかも乗せてもらっている状態を思うと、
『いえ、多分センターラインを越えてたから、タクシーに注意されたんですよ』
とも言えず、でも一緒にタクシーに文句も言えず、ゴニョゴニョと口を濁したことを覚えている。




その怒る友人に、
「下りてきた車は、センターラインをはみ出してた事にも気づいてないかもしれないよ?」
と伝えると、一層怒りつつも
「じゃどうすればいいんだろう。自分が避けるしかないよね?」
と困惑していた。

それもそうなのだが。




最近、山道を走らねばならない機会が増えた。片側1車線だが便利で空いているからか速いクルマが多い。車間距離の短い車も多くて怖い思いをする時もある。
自分の車より遅い私にプレッシャーをかけている人もいると思うが、もしかしたら単に、通常の車間距離が近い人もいるかもしれない、と思う。長い距離を走れば走るほど煽られていると感じて腹立たしいが、相手は無意識かもしれないと思うようになった。


というのは。
ある日息子の運転するクルマに家族で乗った時だ。
『速いなぁ』
と思いつつ黙って後部席にいたが、耐えきれなくなって、
「なんかちょっとスピード速くない?」
と注意した。すると、
「感覚じゃなくてメーター見てから言って。いつもこの道、お母さんの運転スピードの方が速いからね。こっちこそいつも怖いと思ってたんだよ」
と憮然と言われたのだ。
そう言われてみると、確かにメーターの数字は見慣れたもので、助手席とは違う後部席の感覚だけで話していたことに気づく。
その前に、この道を私はこんなスピードで走ってたのか。



前出の友人とも話した。
「気づかないうちに、自分も何かやらかしてるかもしれないよね」

自分の当たり前だと思う感覚は自分だけのもので、誰かの当たり前と同じではない。一般的な常識でもない。次第に麻痺して無意識に『センターラインをはみ出して』いる状態かもしれない。

慣れたことでも、というか慣れてることこそ時には改めて考えてみないと。

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