作者は屋根裏シスコさん。
　ジャンプアプリで連載し昨年12月に最終回を迎えた漫画で、全15話です。
　コミックスは2巻まで発売中。2000万DLを突破した人気作です。

以下、ネタバレありありでお送りします！！！

＊あらすじ＊

　主人公は圧倒的筋肉を誇る大学一年生。
　その筋肉は殺人も可能なまでに仕上がっているが、普段は力を隠し家族に敷かれたレールを生きている。世間はそれが仮の姿だと気づきもしない。
　ある日、初めて本当の自分を見てくれる人に出会い、自分を変えると決意。鍛え抜かれた心技体を駆使し兄、姉、父をつぎつぎ無双する。そこに立ちはだかるラスボス最強の母。呪縛を解き放ち自分らしく生きることはできるのか？　そして最終章、真のラスボスは母ではなく自分だった・・・？

　マッチョなあらすじに反して、主人公は18歳の女子大生です。

　以下、この漫画の成分表です。独断と偏見の。

女性は擬態する生き物

　主人公の桜子はゆるふわモテ系ファッションの下にバキバキに割れた筋肉を隠しています。母から女性らしくおしとやかにするよう言われ、いくつも縁談を組まれます。
　しぶしぶ好きでもない男性とデートしつつ「女の子ってこういうの好きでしょ？」というイメージを押し付けられ辟易。
　「本気になればお前などいつでも殺せるくらい私は強いのよ！」とイライラを募らせる。卒なく女性らしい女性を演じやり過ごします。

　ただし、桜子は女性としての自分を嫌ってません。
　男性になりたいわけでもない。
　ただ女性の枠にはめられるのが嫌なんですね。

　この決して不幸ではないけど何かが足りない感じ、今っぽくていいなと思います。主人公のモチベーションは軽くていいのです。親近感が湧きます。あまり壮絶な背景があると、読んでて疲れます。
　そんな桜子の敵は母であり、家族であり、同級生や異性、世間であるわけです。
　その場その場で期待される女性役割に対し、桜子がどのように対処するかがこの漫画のおもしろいところです。目にも留まらぬ速さで男のみぞおちに拳を埋めたりします。スカッとさせてくれたり、一緒に悩ませてくれたりパターンが豊富です。

　前半は桜子が男女差別に物申す勧善懲悪モノの流れかと思わせますが、桜子が内省できるキャラなのでそこを回避します。一方的に男性をディスる漫画にはなってない、そこがよかったです。
　「お前なんかいつでも殺せるのよ！」と優越感に浸って世の中を見下すようじゃ読んでて楽しくありません。男女平等もちろんいいですが、度が過ぎると公開処刑状態になってしまいます。
　かといってギャグに走るのかと思いきやジェンダートピックもちゃんと取り上げるので、バランスがよく読みやすいです。

女性の力とは

　家族と対立の末、姉との腕相撲勝負に敗れる桜子。
　引く力の重要性を指南されます。その技を駆使して見事父に勝利しますが、後に「久しぶりに手を繋いた緊張で力が出なかった」と回想する父のシーンが続きます。桜子は自分の実力で勝ったと思い込んでいるので滑稽と捉えられなくもないですが、私はとてもいいと思いました。

　強さ＝パワーではこれまでの男主人公の漫画と変わりません。
　強さとは単純なパワーのことでしょうか？

　桜子のような戦わずして勝つスタイルいいと思います。孫子も戦争は最後の手段と言っていますし。

女キャラがバトルする魅力

　だけどやっぱりバトルはいい。戦う女の子はかっこいい。
　いきなり前段をひっくり返すようですいません。筆者はナルトの中忍試験編のサクラVSイノ戦にどきどきした女子小学生だったので。
　桜子の割れた腹筋や飢えた獣の眼がかっこよかったです。躍動感のあるバトルシーンは読んでて楽しい！　キャラが男だろうと女だろうとバトルシーンはテンション上がります。女キャラが血だらけになって戦うバトル漫画が読みたいです。

自分らしさを貫くと周りが不幸になる・・・？

　女である前にひとりの人間、女性らしさよりも自分らしさを貫きたい桜子。しかし、自分の所為で彼や家族が不幸になると突き付けられます。悩む桜子。大事な人を不幸にしてまで自分らしさを貫いていいの・・・？
　ここは、個人的に最胸熱シーンでした。
　かく言う筆者は未婚で子なし。親が内心「孫の顔が見たいなぁ」と思ってるのは痛いほど分かっています。親を悲しませようなんて思ってません。でも産みたくない。
　女性は女性というだけで様々な役割を担いがちですから、その枠をはみ出すと周りが困惑するのはあるあるだと思います。
　これは男主人公では描けないテーマです。だって、主人公は強くなってなんぼですよ。それが強くなってはいけない、なんて面白過ぎます。よくぞ取り上げてくれました！
（男主人公で似たパターンを探すなら、自分の所為で強敵を引き寄せ仲間を危険に晒すとか、戦う剣ばかりで守る剣は知らない、みたいな感じですかね？）
　このあたりもっと掘り下げて、当て馬をたくさん配置して展開させて欲しい、ぜひ読みたいです。

　最終的に、
　自分らしさを貫いても誰も不幸にならない世界に変えてみせる！
　というのを落とし所に最終回を迎えます。桜子は晴れて家族、友達、恋人の支えを得て自分らしい生き方を模索していくのでした。
　めでたしめでたし。

『本気出せばお前殺せる』を読むには？

　少年ジャンププラスで1巻分無料公開されてます。
　他にもpixivコミック、Renta等で1話無料で読めます。気になった方はぜひ読んでいただきたいです。
　
　謎の筋肉一家設定、トオルさんの可愛い無双、TPOガン無視で筋トレする桜子など読み応え抜群なのでおすすめです！

最後まで読んでいただきありがとうございました。