ブラウんニー

  • 飼い犬ウーゴくんは、毎朝、ドッグランで排便する。
    飼い主の私は、それをすぐに拾って持ち帰り、処分する。

    以前の飼い犬ジーロくんのウンチは、いいにおいだった。
    深く吸って嗅いでも、いくらでも嗅げた。
    ウンチのにおいではあるのだけれど、くさくて不快!という感じではなかったのだ。

    ウーゴのウンチのにおいは、ジーロのウンチのにおいより、強い。
    だから、それまで使っていた袋では、においが洩れて臭い。

    においカットゴミ袋とかなんとかいう商品も試してみた。
    黒くて中身が見えないのは良いけれど、
    においは洩れた。

    犬の散歩友達が教えてくれて、
    赤ちゃんの使用済みおむつを入れる袋を使ってみた。
    なかなか良い。

    その後、「うんちが臭わない袋」という商品に辿り着いた。
    これは本当に臭わない。優秀だ。
    ただ、一枚8円くらいする。

    ウーゴは一日に一回しか排便しない。
    だから、少々コスパの悪いこの商品でも、まあいい。
    とは言え、もうちょっと安いもんは無いかと思う。



    犬の散歩友達が、キラキラと話しかけてくる。
    「これ、いいのよ!」
    と、ウエストポーチからポリ袋を取り出す。

    「何だと思う?
    パン袋なんだけど、いいの、においが洩れないの。
    ちょっと結びにくいし、透明なんだけど、
    安いしさ、車の中でもにおわないのよ。」
    ほほう。

    さっそく購入した。
    一枚あたり3円弱だ。

    パリッとした袋なので結びにくいが、
    においが洩れないので、結ばずにクルクルと畳むだけでも大丈夫だ。
    こりゃいい。

    私は今、「半斤用」というサイズのものを使っている。



    特別養護老人ホームで暮らす母が、誕生日を迎えた。
    91歳である。
    立派な長生きになってきた。

    とにかく甘い物が好きだ。
    もう、好きにすりゃいい。



    先日、家のビルトインコンロのオーブンを、初めて使った。
    初めてと言うと不正確か。
    何十年ぶりかに使った。
    何十年と使っていなかったので、ちゃんと使えるか不安だった。
    不安なので使っていなかった。
    思い切って使ってみたら、使えた。

    オーブンが無事に使えると分かったら、意識が変わった。
    オーブンを使う料理は、楽だ。と思えるようになった。
    グラタンを作ってみたり、犬のオヤツとして砂肝チップスを作ってみたりした。
    できる事が増えるってのはいいもんだ。



    「Kevin's English Room」というYouTubeチャンネルを時々観る。
    おかしな英語の看板や、妙な日本語のTシャツの話なんか、大好物である。

    このチャンネルで、「ケヴィンが思うアメリカのブラウニー」を追求していた。
    https://www.youtube.com/watch?v=pkS7d1adfSw
    「中はネッチョリなのよ。」
    と、ケヴィンは繰り返し強調する。

    動画の中で三人はけっこうな数の商品を試食するが、
    ケヴィンの理想のネッチョリブラウニーは、結局のところ日本では手に入らないようだ。



    理想のネッチョリブラウニーが売ってないならば、
    オーブンで焼けばいいじゃないの。



    アメリカ育ちの友人Fに聞くと、
    「なんかスプーンのマークのミックスが有った気がする。」
    との証言が得られた。

    ネットショップで探すと、難なく見付かった。
    ベティ・クロッカーのチョコレートチャンクブラウニーミックスだ。

    卵と水と植物油と、このミックスを混ぜて焼けば良いのだ。
    ただそれだけなのだ。
    うひー。
    植物油80㏄。
    ネッチョリの正体はこれじゃないだろうか。



    老母の誕生日に面会の予約をした。
    そして前日、ブラウニーをオーブンで焼く。



    台所の天袋を探すと、円型のケーキ型が見付かった。
    175℃で33分焼いた。

    ブラウニーと言ったら四角じゃないか。
    円型に焼き上がった物の弧の部分を切り落とし、
    四角く切った。
    うん。それっぽくなった。

    さてこれをどうやって持って行こうか。
    ・・・
    そうだ!
    パン袋が有るじゃないの。

    パン袋に、茶色くてネッチョリしたブラウニーを入れた。

    うーん。ソレっぽくなっちゃった…。



    面会の予約をした時刻の5分前に特別養護老人ホームに到着し、
    受付を済ませ、母の入居しているユニットに案内してもらう。
    コロナ禍の中に入居したので、居室に私が入るのはこれが初めてだ。

    部屋に入る前に、コートのポケットに入れてきた
    ブラウニーを介護スタッフに預ける。

    そして、入室。
    ブラウニーを持って来たと言ったら
    「すぐ食べたい。」と言い出したが、
    食べ始めたらとても時間がかかるし、
    その間はしゃべれない。
    それじゃ面会としては充実しないので、
    後でね、とうまく説き伏せてかわした。

    30分の面会時間、あれこれ話した。



    帰宅して、コートを脱ぐ時に、
    ポケットの中の物を探ると、
    パン袋に入ったブラウニーが出てきた。

    ???
    さっき、スタッフさんに預けたはずでは???
    でもここに有る。
    ってことは、
    さっき渡したのは…

    ああああ。

    朝の犬の散歩の時も、このコートを着ているのだ。
    やっちまった。


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