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♬とらねこ村の共同マガジン~歌詞のパティシエ~

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歌詞パティシエの武炭宏(Hiro)さんととらねこが共同運営する、音楽記事を専門的に扱うマガジンです。 歌詞、音楽動画、所感、ミュージックボックスなどを専門に載録します。 専門マガ… もっと読む
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#クラシック音楽

コラボ企画<歌詞のパティシエ>

武炭宏(Hiro)さんとの共同企画です。 音楽ジャンルの記事を専門的に取り扱う共同マガジンです。 🎼歌詞のパティシエ コンセプト 音楽に関する記事を広める 管理人 武炭宏(Hiro) とらねこ 専門分野 ・歌詞 ・音楽動画 ・所感 ・ミュージックボックス ・その他それに準じるもの 活動頻度 ・月1回からの投稿 ・ときどき書いている音楽記事の投稿 参加方法 この記事にコメント下さい。 歌詞のパティシエで一緒に活動したい人は、気軽に声をかけてみて下さい。 ***

デュオの魅力 -音楽で対話することの良さ

【金曜日は音楽の日】 以前、私が面白く読んだ漫画に、新川直司の『四月は君の嘘』があります。 クラシック音楽を題材にして、アニメ化もしたこの作品。トラウマを抱えて弾けなくなった、元天才ピアニストの少年と、天真爛漫な凄腕ヴァイオリニストの少女の物語です。 興味深いのは、この作品がオーケストラでなく、ソリストでもなく、デュオを題材にしていることです。 オーケストラであれば、集団の中でいかに自分の色を出すか、いかにそれを統率するかという、個と全体との葛藤に

熱狂の魔術師 -天才指揮者カルロス・クライバーの魅惑

【金曜日は音楽の日】 指揮者というのは不思議な存在です。自分で楽器を演奏するわけでもないし、歌う訳でもない。 実のところ、ある程度実力のあるオーケストラなら、ベートーヴェンやブラームスの交響曲レベルは、指揮者がいなくても、破綻無しに演奏は出来ます。 指揮者の役割とは、その「演奏」に、プラスアルファを付け、真の「音楽」を創りあげることだとも言えます。 カルロス・クライバーは、強烈で熱狂的な「プラスアルファ」を創造することができた、最高の指揮者の一人でした

夫婦で紡ぐ音楽 -映画『アンナ・マグダレーナ・バッハの年代記』の美しさ

私たちは普段、映画をフィクションと思って楽しんでいます。しかし、ドキュメンタリーでなくても、あらゆる映画には、記録という側面があります。 そんな「記録」としての様々な層が積み重なって、夫婦の「愛」を、音楽という形で創造した美しい映画があります。それが、ジャン・マリ・ストローブとダニエル・ユイレによる映画、『アンナ・マグダレーナ・バッハの年代記』です。 ストローブとユイレは、それぞれ、1933年と1936年フランス生まれ。パリで出会い結婚し、初期ヌーヴェルヴァーグ

異郷は力をくれる -ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界』について

【金曜日は音楽の日】 新しい場所で、新しく何かを始めること。それは、作品に力を与えてくれます。作者がその場所に開いた心で臨めば、素晴らしい変化をもたらすこともあります。 そんな異郷での新しい力を取り入れることに成功した音楽として、ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界』を挙げたいと思います。 第2楽章や第4楽章のテーマがBGMに使われて有名ですが、それ以外にも聴きどころがあり、複雑な味わいの名品になっています。 第1楽章は、暗い序奏から始まります。そして、玉虫

山の音楽の魅惑 -ブルックナー『交響曲第5番』について

【金曜日は音楽の日】 ブルックナーは、クラシックの中でも、不思議な立ち位置にいる作曲家な気がします。 「嫌いなわけではないけど何となく苦手」という方と、熱烈に好きというファンに分かれる感じがしています。つまり、はっきりと人を挑発するような要素はないのだけど、何かとっつきずらい感じがする。 苦手な方や、まだ聞いたことのない方には、私は『交響曲第5番』をお薦めしたいです。 『交響曲第4番(ロマンチック)』が、一般的にはどちらかというと知名度が高いですが、『第

みんなの喜びで色づく音楽 -ハイドンの交響曲『時計』

【金曜日は音楽の日】 新しい場所でチャレンジすることは、新しい力を与えてくれます。 同じことを継続することは素晴らしいことだけど、環境を変えることで、今までになかった隠れていた面が出て、新鮮な作品になったりします。ハイドンの交響曲101番『時計』は、そんな作品の一つです。 ハイドンは、「交響曲の父」と呼ばれ、生涯に104曲の交響曲を残しています。モーツァルトは41曲、ベートーヴェンが9曲と考えれば、すごさが分かります。その中でも有名なのは、後期の交響曲101番、通称『時

陽光の中の回想 -モーツァルト『ピアノ協奏曲27番』の美しさ

よく、自分の葬式で流してほしい曲、というアンケートがあります。私の場合何かと考えると、ロックやポップ音楽と別に、クラシックの中だと、多分モーツァルトのピアノ協奏曲27番(K595)を選ぶと思います。 この曲には、落ち着いた午後、かつての楽しかった過去を思い出しているような、甘美さと静寂があるからです。 第1楽章の導入。静かに弦が入り、麗しいメロディが奏でられます。しかし、長調の明るいメロディなのに、弾んだ感じはしません。『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』のあの爽や

明るく澄んだ舞踊曲 -ブラームス交響曲第2番の美しさ

音楽は目に見えないものだけど、強烈な雰囲気と力をもっていて、まるで色がついているかのように情景を描き、感情を揺さぶるものでもあります。 そうした音楽の中で、「透明な音楽」とは何かと聞かれたら、私はその中の一つに、ブラームスの交響曲第2番を挙げると思います。それは同時に、幸福な音楽でもあります。透明で明るくて、同時に踊れるくらい軽やかな音楽であり、何度聞いても幸福感を与えてくれます。 ヨハネス=ブラームスは、1833年ハンブルク生まれ。交響曲第2番は、1877年、彼が

夜風と流れ星が奏でる歌 -プッチーニの魅力【エッセイ#58】

『蝶々夫人』や、『トスカ』といったオペラで有名なプッチーニは、最もロマンチックな夜を描写できる音楽家の一人だと思っています。お涙頂戴のオペラ作家と思われがちですが、とてもそれだけには収まり切れない、濃密なロマンと高度な音楽性を持っている、非常に面白い作曲家です。 プッチーニ作品の夜は、二種類あります。一つは、人々が夜の街路に出て思い思い歩いている雑踏の夜。何といっても、『ボエーム』の第2幕、クリスマス・イブのカフェ前の街路。物売りや子供連れの母親や、恋人たち、子供たちがそれ

青春が微笑する -シューベルト交響曲第5番の美しさ【エッセイ#52】

青春の音楽とはどのようなものでしょうか。私が思う条件は、どこか憂鬱さと気怠さを持ちながらも、溌溂としていること。そうした二面性が若さの特徴だと思うからです。同時に、緩やかで華やかな踊りを導くような音楽であってほしい。青春とは躍動でもあるのですから。 そして、クラシックであれポップスであれ、どんなに明るい曲を作れる音楽家でも、そんな青春を感じさせる曲は案外少ないように思えます。それ程、溌溂さと憂鬱のバランスを保つのは難しいことなのでしょう。 シューベルトの交響曲5番は、

シャンパンと波音の喜び -オペラ『椿姫』の魅力【エッセイ#46】

オペラ作曲家として高名なヴェルディの私の印象は、ひと言で言うと、海の音楽家です。その音楽から絶えず波音が聞こえてくるような感触があるのです。 彼の作品の中で一番有名で、恐らく公演回数も多いのは、『椿姫(ラ・トラヴィアータ)』でしょう。この作品には、彼の特色と、この作品にしか見られない独特な緊張感のようなものがあり、特別な一作となっています。 ジュゼッペ=ヴェルディは、1813年、イタリアのパルマ近くの片田舎生まれ。若くしてミラノに出て、オペラ作曲家として世に出ようと

【エッセイ#23】モーツァルトの口笛

人には資質というものがあります。短距離走の世界王者がマラソンを走れるわけではないし、サッカー選手が野球をできるわけでもない。スポーツは肉体的、物理的に分かりやすいけど、こと芸術の分野だと、案外分かりづらい。物理的な制約があまりないので、例えば、長編小説をたくさん書く人でも面白い短編小説を書いたりします。 それは、音楽の分野でも同じです。ですが、音楽の場合、「音色」という物理的な要素も含んでいるため、その人の向き不向きによって、作品によって面白い差異が生まれたりします。