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♬とらねこ村の共同マガジン~歌詞のパティシエ~

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歌詞パティシエの武炭宏(Hiro)さんととらねこが共同運営する、音楽記事を専門的に扱うマガジンです。 歌詞、音楽動画、所感、ミュージックボックスなどを専門に載録します。 専門マガ… もっと読む
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#一ノ瀬瑠奈_暗闇の森

コラボ企画<歌詞のパティシエ>

武炭宏(Hiro)さんとの共同企画です。 音楽ジャンルの記事を専門的に取り扱う共同マガジンです。 🎼歌詞のパティシエ コンセプト 音楽に関する記事を広める 管理人 武炭宏(Hiro) とらねこ 専門分野 ・歌詞 ・音楽動画 ・所感 ・ミュージックボックス ・その他それに準じるもの 活動頻度 ・月1回からの投稿 ・ときどき書いている音楽記事の投稿 参加方法 この記事にコメント下さい。 歌詞のパティシエで一緒に活動したい人は、気軽に声をかけてみて下さい。 ***

言葉をきらめかせる -ボブ・ディランの詩と音楽

私たちは文学と音楽を切り離して考えています。しかし、本来はこの二つは結構混ざっていたものだったと思います。 シンガー・ソングライターのボブ・ディランが、ノーベル文学賞を獲った際、選考委員の一人が、古代ギリシアでは、詩人は自ら歌う存在だった、といった感じのコメントを残していたように記憶しているのですが、それはある意味真実です。 個人的には、最初に衝撃を受けた詩人は、ランボーでもマラルメでもなく、ディランでした。特に彼の66年の大傑作アルバム『ブロンド・オン・ブロンド』を

山の音楽の魅惑 -ブルックナー『交響曲第5番』について

【金曜日は音楽の日】 ブルックナーは、クラシックの中でも、不思議な立ち位置にいる作曲家な気がします。 「嫌いなわけではないけど何となく苦手」という方と、熱烈に好きというファンに分かれる感じがしています。つまり、はっきりと人を挑発するような要素はないのだけど、何かとっつきずらい感じがする。 苦手な方や、まだ聞いたことのない方には、私は『交響曲第5番』をお薦めしたいです。 『交響曲第4番(ロマンチック)』が、一般的にはどちらかというと知名度が高いですが、『第

森の吟遊詩人たち -3人の美声ブリティッシュ・トラッド歌手

【金曜日は音楽の日】 私は時折、『ドラゴンクエスト』の影響はゲームだけでなく、ある種の心性にまで及んでいるのではないかと思ったりします。 つまり、ゲームシステムだけでなく、あの舞台のイメージが、人々の「ここではないどこか」のイメージの礎になっているのではないでしょうか。 ヨーロッパ中世の石造りの城、木でできた小屋の村の酒場、魔物や妖精が出る鬱蒼とした森。聖なる力を持つ剣、盾と鎧の装備と魔法、魔王の討伐。 こういったものが人をワクワクさせるのは、あのシリーズのイメー

みんなの喜びで色づく音楽 -ハイドンの交響曲『時計』

【金曜日は音楽の日】 新しい場所でチャレンジすることは、新しい力を与えてくれます。 同じことを継続することは素晴らしいことだけど、環境を変えることで、今までになかった隠れていた面が出て、新鮮な作品になったりします。ハイドンの交響曲101番『時計』は、そんな作品の一つです。 ハイドンは、「交響曲の父」と呼ばれ、生涯に104曲の交響曲を残しています。モーツァルトは41曲、ベートーヴェンが9曲と考えれば、すごさが分かります。その中でも有名なのは、後期の交響曲101番、通称『時

魂が燃えて輝く -ライブ音楽名盤5選

音楽の魅力の一つに、ライブ演奏があります。勿論、録音スタジオで緻密に仕上げられた録音作品も素晴らしい。しかし、人が沢山いる前で演奏することは、演奏者には多大な負担をかけつつも、音楽に張りと緊張感を与えます。 今日はそんなライブを録音したライブアルバムの傑作を5つ紹介したいと思います。素晴らしいライブアルバムは沢山ありますが、今回の選考基準は、色々な仕掛けやハプニングによって、演者のポテンシャルが最大限までに発揮された作品、にしました。 また、いつもと違い、ジャンル

灰色の朝に祈る -ジェズアルドの宗教音楽

以前、「人を殺したことのある大芸術家」として、画家カラヴァッジョを取り上げました。もう一人、私が思い浮かぶ芸術家は、16世紀ルネサンスの音楽家、カルロ・ジェズアルドです。 もっとも、両者の生きた道筋と芸術は全く異なります。カラヴァッジョの場合、度重なる愚行の果ての襲撃であり、作品の価値はさておき、その生涯の罪と愚かさに、同情の余地は全くありません。 しかし、ジェズアルドの場合、その罪は、様々な意味で、一考する部分があるように思えます。そして、カラヴァッジョが、彼の愚行

陽光の中の回想 -モーツァルト『ピアノ協奏曲27番』の美しさ

よく、自分の葬式で流してほしい曲、というアンケートがあります。私の場合何かと考えると、ロックやポップ音楽と別に、クラシックの中だと、多分モーツァルトのピアノ協奏曲27番(K595)を選ぶと思います。 この曲には、落ち着いた午後、かつての楽しかった過去を思い出しているような、甘美さと静寂があるからです。 第1楽章の導入。静かに弦が入り、麗しいメロディが奏でられます。しかし、長調の明るいメロディなのに、弾んだ感じはしません。『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』のあの爽や

ささやかなミュージカル映画の傑作4選+1

ミュージカルというジャンルは、現在でも劇場は勿論、映画にも熱心なファンがいらっしゃいます。 ミュージカル映画というと、やはりMGMの1950年代の作品を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。 『バンド・ワゴン』、『巴里のアメリカ人』、『雨に唄えば』といった作品です。ジーン=ケリー、フレッド=アステア、ジュディ=ガーランドといった綺羅星のようなスターが歌って踊る作品群。あとは、『サウンド・オブ・ミュージック』や、『ウエストサイド物語』辺りでしょうか。 また、最近で

夜更けのロック名盤5選

以前、ジャズの名盤を、夜と昼に分けて紹介しました。歴史と関係なく主観的な選択でしたが、好評だったようです。 そこで今回は、ロック・ミュージックのアルバムで、「夜」を感じさせる名盤を選んでみたいと思います。ロックは元々ブルースを基にしていることもあり、孤独な夜の呟きと、夜の熱波の火照るような狂騒を持っていると思います。 ここで挙げるのは、そうした、ロックのどろりとした原初の力が色濃く滲み出ているようなアルバムです。 そして、どれも、真夜中に一人きりで、興奮と半覚醒で

明るく澄んだ舞踊曲 -ブラームス交響曲第2番の美しさ

音楽は目に見えないものだけど、強烈な雰囲気と力をもっていて、まるで色がついているかのように情景を描き、感情を揺さぶるものでもあります。 そうした音楽の中で、「透明な音楽」とは何かと聞かれたら、私はその中の一つに、ブラームスの交響曲第2番を挙げると思います。それは同時に、幸福な音楽でもあります。透明で明るくて、同時に踊れるくらい軽やかな音楽であり、何度聞いても幸福感を与えてくれます。 ヨハネス=ブラームスは、1833年ハンブルク生まれ。交響曲第2番は、1877年、彼が

夜風と流れ星が奏でる歌 -プッチーニの魅力【エッセイ#58】

『蝶々夫人』や、『トスカ』といったオペラで有名なプッチーニは、最もロマンチックな夜を描写できる音楽家の一人だと思っています。お涙頂戴のオペラ作家と思われがちですが、とてもそれだけには収まり切れない、濃密なロマンと高度な音楽性を持っている、非常に面白い作曲家です。 プッチーニ作品の夜は、二種類あります。一つは、人々が夜の街路に出て思い思い歩いている雑踏の夜。何といっても、『ボエーム』の第2幕、クリスマス・イブのカフェ前の街路。物売りや子供連れの母親や、恋人たち、子供たちがそれ

青春が微笑する -シューベルト交響曲第5番の美しさ【エッセイ#52】

青春の音楽とはどのようなものでしょうか。私が思う条件は、どこか憂鬱さと気怠さを持ちながらも、溌溂としていること。そうした二面性が若さの特徴だと思うからです。同時に、緩やかで華やかな踊りを導くような音楽であってほしい。青春とは躍動でもあるのですから。 そして、クラシックであれポップスであれ、どんなに明るい曲を作れる音楽家でも、そんな青春を感じさせる曲は案外少ないように思えます。それ程、溌溂さと憂鬱のバランスを保つのは難しいことなのでしょう。 シューベルトの交響曲5番は、

穏やかな陽光のジャズ -昼下がりの名盤紹介【エッセイ#49】

以前、ジャズは夜の音楽だということを書きました。その考えに変わりはありませんが、かといって、全てが夜の闇に包まれた音楽でもありません。どんなジャンルにおいても、その規則からはみ出す作品は必ず出てきて、それが素晴らしい輝きを放ったりします。 ここでは、昼下がりのような穏やかな空気感と、仄かに明るい光明に包まれたジャズを紹介したいと思います。以前夜のジャズ名盤を紹介した時と同じように、私の完全な主観です。 闇の魔物が跋扈する音楽ではなく、のんびりとした昼下がりに、だらっと