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  白い花のエレジー


   かぼそい雨に濡れそぼち  ながい微睡みの牙城から

   初子同然 君は出てきた 

   柔らかく白い肌をはにかみながら……

   

   その純白の花房が なよ風に打ち震える時

   緑葉の微細な気孔ひとつひとつから 迸りでる無垢の息づかい

   雨季の庭に 楚々として君臨する白い花の精 ——アナベル

   雨上がりの午後 せめてその美しさにあやかりたいと

   花房に顔を埋めて微かな芳香に酔いしれる………

  
   あれから季節は移ろいゆき 永遠は約束されず

   悲しみは極まるばかり

   ところが君は臆する様子ひとつ見せず

   毅然としてその秋色をさらし始めた

   そうなったら最後 意を決してすっぱりと

   切り戻しの手入れをしなければなるまい

   新しい花芽の生成のために

   そうだ…君同様 私もまたその生成にあずかろう

   この若さがまだあるうちは

   そして 美しい花時を共に迎えようではないか 

  

  

 

 

   

 
   


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