胃に優しく食べられるタクティクスお粥『マーセナリーズウィングス』

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「するめさんのnoteって、ろくでもないことしか書いてないですね」

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ある日の午後。私はこんな事実無根の誹謗中傷かつ、あまりにも酷い心が張り裂けそうなひと言を知り合いに言われたので考えを改めました。考えを改めたというか、そもそも埋もれている「インディーゲーム」を発掘したり、メディアじゃ書けないことを書いたりする目的でnoteを始めたのに、何かズレている気がしてきたぞ。『SpaceExcavators(スペースエスカベイターズ)』のレビューとかやってるからいけないのかな? ちなみに、『スペースエスカベイターズ』は、未だに海外レビューすら0本(2018年10月時点)なので、もっと海外の方が買ってあげてください……。

タクティクス系SRPGというジャンル

と言うわけで、今回は最近長くプレイしていて、結構ハマっていたゲームを紹介していきたいと思います。ジャンルはプレイ時間30時間以上のタクティクス系SRPG。「タクティクス系SRPGってなんだよ」という人もいると思うので乱暴に説明すると「タクティクスオウガっぽいSRPG」と思ってもらえれば、間違いないです。『ファイアーエムブレム』みたいな平面のSRPGではなく、高さの概念やヘイトの概念があって、身も蓋もなく言えば、オウガです。正確には違うというか日本だとストラテジー物とSRPGがごっちゃになっている部分もあってややこしいのですが、だいたいこういうゲームがタクティクス系SRPGと呼ばれている気がします。発祥はよくわからないのですが、いつの間にかゲーム会社が言い始めたジャンルっぽくて、タクティクスRPGで検索すると結構引っ掛かかりますね。

じつは私、タクティクス系SRPGも好物なんですよ。たとえば、PSで発売された『HOSHIGAMI 沈みゆく蒼き大地』。これは、異常に賢く完璧な布陣の敵AIとレベル差による激烈な命中率補正が織り成す地獄のような難易度に、恐ろしく遅いテンポを兼ね備えたマゾ向けSRPGの名作でした。のちにDS版で難易度修正が入ったリメイクが出たのですが、自分はタイトルを見るだけで全身から脂汗が滲み出し、未だにDS版を遊べていない始末。いつかちゃんと遊びたいのですが、当時PS版を「タクティクスオウガみたいな見た目のゲームだし、絶対面白い」と弟に勧めて買わせた結果、殴り合いの喧嘩になったのを思い出して違う、そういう話をしたいんじゃない。

難しいと言えば、最初に配信された期間限定の体験版があまりにすごくて問題になった『GOD WARS~時をこえて~』という作品もありました。数と命中率、攻撃力で勝る敵の集団がバフ&回復を延々としながら襲ってくる悪夢のようなゲームバランスで、評判の悪さに発売を延期して改善をうたったくらい体験版が尖りすぎていたことも記憶に新しいです。え? その事件を知らない? 製品版は難易度が改善されて評判も悪くなかったようですが、それ以前に出ていた同じ角川ゲームス製のSRPG『ナチュラルドクトリン』も発売当初は激烈な難易度で、なぜ最初から気づかなか……ではなく、高難易度が好きな人が内部にいるのでしょう。たぶん。まあ『ナチュラルドクトリン』の場合は難易度だけが、いけないまた話がずれてしまった。

タクティクス系RPGと言っても、難し過ぎる作品ばかりじゃないんですよ。たとえば、名作『タクティクスオウガ』のリメイクとしてPSPで発売された『タクティクスオウガ 運命の輪』は、ヌルいと言われつつも私が好きな作品の1つですね。もともとの『タクティクスオウガ』とはバランスやシステムが異なり、一定のダメージを与える「●●弾」シリーズによってヴァレリア諸島は世紀末。全員で爆弾を投げながら進軍する戦法はまさにゲリラでした。超楽しいでしょ? 同意しないつもりか、この醜いウォルスタ人め!

そんな感じで、ヌルく遊んでいる人が多いタクティクス系RPGと言えば『サモンナイト』もそうですね。このシリーズは、だいたい一騎駆けでもなんとかなるというか、3くらいまでは主人公だけを突出して鍛えるのが正解な感じのヌルさで、そこが良かったという人も多いのではないでしょうか。私も『サモンナイト5』が大好きなのですが、シリーズの中でもあまり良い評判を得られていないようで悲しいことこのうえない。確かに中盤からの雑魚無限沸きは狂っているとしか思えないバランスでしたし、主人公中心のシナリオは賛否がありますし、4までの世界で悲惨な戦争が起きた世界観は何を考えて、ここらへんでやめましょう。話がどんどんズレる。

とにかく、この作品の評判がだいぶアレだったせいなのかなんなのか、続編の『サモンナイト6』は、ソシャゲのようなクロスオーバータイトルになって、これまた驚いたものです。過去キャラクターが集合する夢のような作品だったのですが、どうも元の設定と矛盾、いや、新しく設定されたところがチラホラあったり、そもそも『サモンナイト6』の前にソシャゲでクロスオーバーやったのに、なぜまたやるのかわからなかったり、本当にクロスオーバーのためだけに作られたような新しい世界観がすごく、だから脱線するのはやめよう! 小説版『サモンナイトU:X』の最終巻楽しみに待ってます!!

イラストの力で化けたSRPGシリーズ最新作

これ以上語ると、タクティクス系RPGの闇を掘る回になってしまうので話を戻しましょう。というわけで、最近遊んだタクティクス系RPGの話をしたいと思います。タイトルは『マーセナリーズウィングス 偽りの不死鳥』。SwitchとPS4で配信中のダウンロード専用ソフトで、発売はライドオン。価格は1500円(税込)と、SRPGにしては安価です。

この作品。歴史をひも解くと意外と古く、もともとは携帯電話(ガラケー)のアプリで展開していた『マーセナリーズサーガ』という作品から始まっています。『マーセナリーズサーガ』は3作目まで展開しており、その後スマホや3DSなどに移植され、つい最近Nintendo Switchで『マーセナリーズサーガクロニクルズ』というシリーズ3作をまとめた移植版が発売されました。自分もスマホと3DS版で遊んでいるのですが、民族紛争や内紛を絡めつつもコンパクトにまとめたシナリオ。地味ながら下手ではないグラフィック。難しくもなく、簡単すぎるわけでもないバランスなどなど……。

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といった感じで、悪くないシリーズだと思っているんですよ。『タクティクスオウガ』ほど「濃い」シナリオではないですが、そこそこお手軽に遊べる感じのSRPGになっています。キャラが地味(上記の画像は初代の主人公)という欠点になりかねない要素も、作風と合って悪くない感じですね。

そんな『マーセナリーズサーガ』シリーズ7年ぶりの新作となるのが、今回紹介したい『マーセナリーズウィングス』です。シリーズでもコンシューマーハードのみで展開するというパターンは初であり、キャラクターデザインは『ボーダーブレイク』などでおなじみの風間雷太氏に変更。見た目だけでかなりヒロイックかつメジャータイトルっぽい作品となりました。と言ってもシステムはほぼ『マーセナリーズサーガ3』そのままなので、そこまで大きな変化があるわけではありませんが、キャラデザの力ってすごいなと。

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いや、だってスゴイ変化ですよ。だって、前作である3の主人公は

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このCVを小西克幸が当ててそうな地味なお兄さんですよ!? もちろん、このデザインも悪くないですし、渋い戦記物の雰囲気に一役買っていたと思いますが、『マーセナリーズウィングス』では打って変わって主人公もキラキラしたデザインに。傭兵の1人というよりも主人公感が強くなりました。

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ちなみに、今回の主人公は男装してますが女性です。このセシルと義理の兄であるジェレミーを中心に、悪王のもとで起きた王国の内紛が描かれていきます。シリーズの例にもれず分岐も用意されており、途中の選択肢で仲間になるキャラクターが変化。反乱軍につくか、王国に残るかで物語もまったく違う展開になります。個人的には王国に残ったほうが戦記物っぽい雰囲気を保っていて好きなのですが、どちらのルートもあまり掘り下げられずにあっさり終わるキャラがいたり、テキストが少なくて語り足りてない感じを受けたりと、全体的にはやや物足りなさを感じました。とはいえ、絵の力もあって仲間の印象が強く残り、読後感は悪くない感じ。

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反乱軍ルートでは胸元が大きく開いた女騎士が敵対し、

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王国軍ルートでは女騎士が仲間になる代わりに、反乱軍ルートで仲間だったアマゾネスが敵対するので、どちらのルートに行くか非常に悩ましい!

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ちゃんとイケメンも仲間になるし、キャラクターのバランスはとれていると思います。ただ、どちらのルートもメインの仲間が最大8人と少な目なので、そこは1500円相当のボリュームかなと。仲間にならないキャラや顔グラフィック付きのボスも数名いるのですが、やはりどうしても少なく感じます。物語もそこまで複雑ではなく、盛り上がるところはあるものの大きな盛り上がりが来る前に終わる感覚。もう一波乱あっても良かったような気がしますがボリューム的にはちょうどよいかもしれません。『タクティクスオウガ』が重たいステーキだとすれば、胃に優しいお粥のような内容ですね。重たいSRPGを食べるのもいいですが、お粥も時には悪くないんですよ。

システムは堅実、BGMの使い方には疑問アリ

システムは、オーソドックスなタクティクス系SRPG。タンク役のヘイトを上げてオトリにしたり、バフやデバフをかけて自軍を有利な状況に持ち込みながら戦うゲームになっています。こうしたゲームは敵味方問わず素早さの順に行動することが多いのですが、本作は完全なターン制。自軍のターンと敵のターンがすっぱりわかれているので戦略を立てやすく、そういう意味でも遊びやすいですね。中盤から範囲攻撃も充実して自軍が強い強い。

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ぶっちゃけ、1周目の難易度だったらフリーバトルをしなくても苦戦しないで進めるかもしれません。2周目以降のハードモードじゃないと出ないEXダンジョン「試練の迷宮(シリーズ恒例のやり込み要素)」がありますが、まあトロフィーを埋めるつもりがないならやらなくてもOKです。ぶっちゃけ、敵の全体魔法があるこのゲームで高難易度はオススメしたくないかな……。

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あとクロニクルズからだったと思うのですが、使用するスキルのレベルを自分で任意に変えられるのも地味に良い点だったりします。シリーズを4作重ねているだけあって、システム的には結構こなれていますね。魔法品を合成して、装備に特殊な能力値補正やスキルをつけていくシステムも、ハマる人はハマると思います。ただ、攻撃のアニメーションが短いとはいえカットできなかったり、蘇生魔法が確率で失敗したりと、テンポが悪い意味で往年のSRPG的で気になる部分も。失敗しても中断セーブでやり直せばいいだけで面倒なだけだし、蘇生の成功確率はいらないのでは……?

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クラスチェンジも存在していますが、これもかなりヌルめ。一度覚えたクラスなら別のクラスになってもスキルを習得できますし、ノーコストで何度も転職できます。能力の底上げスキルを取っていくことで、どんどん強化されていくので、1周目なら俺ツエーを味わったまま終われるでしょう。

1周目はイージーとノーマルのみですが、2周目以降はハード以上の難易度も選択できるようになります。最低でも2周できますし、やり込めばもっと遊べるようになっていますが、私は2周でお腹一杯になりました。SRPGの高難易度、クリアできても好きじゃないんですよね。ほどほどが好き。

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埋もれた財宝が光るようになっていちいちサーチしなくても場所がわかるようになっているなど、シリーズを遊んでいるとわかる進化も。全体的に1500円の値段分以上は楽しめますし、SRPGをダラダラ遊びたい人には悪くないボリュームなのではないでしょうか。

とはいえ、手放しでオススメできない部分も。Twitterで検索するとわかるのですが、BGMの一部がスーパーマーケットの店内放送みたいで盛り上がらないという意見もあるんですよね。すべてのBGMが悪いわけではないのですが、最初のステージの曲なのでインパクトがありすぎるのです……! 

ほかにもレベルアップやスキルを取得したときのSEが自己主張しすぎていて一気にスキルを取得すると新しいBGMみたいになるなど、どうもSEやBGMの使い方や使いどころがイマイチなような……。

いや、全部が全部悪いわけじゃないんですよ。いかにもタクティクスな曲もありますし、自分が指摘していない曲を指摘している人もいるので、曲に関しては好みがあると思います。やはり、曲の良し悪しというよりも使いどころなんじゃないかなと。1章の曲も途中のコミカルな場面には合っていましたし、場面とのミスマッチが曲を悪く感じさせているのかもしれません。

1500円なら悪くない完成度の良作

総括するとこのシリーズ。全体的に安価に纏められたタクティクス系SRPGと言う感じで良くも悪くも超大作ではないのですが、なんとなく続けてしまう魅力はあるんですよね。なんだかんだとダラダラ30時間以上遊んでしまったわけで、個人的には結構好きな部類に入るかも。ひねくれもののするめイカマンが素直に好きっていうのは珍しいですよ自分で言うな。ただ、『マーセナリーズサーガクロニクルズ』から続けて遊ぶのはオススメしません。

理由はシステムや魔法、装備品などがだいぶ共通しているので、似たようなゲームを連続で4作やることになるからです。「死ぬほどヒマなのでSRPGを延々100時間くらい遊びたい」という人以外は、とりあえずそれなりのボリュームで遊べる本作でいいと思います。気に入ったら、前作を遊ぶのもアリですけど。まあ、そこらへんは自由なので

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ひっさびさに、なんか真面目にレビューを書いた気がする!

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