マスコットになった日
物置ぼんやり軟禁事件から2ヶ月くらい経った頃、工事は終わり、ちゃんと元いたオフィスの席をもらい仕事をしていた。
あの大きな地震の影響もあり会社では「地元を勇気づけるために」と、もともと絵だけはあった会社のマスコットキャラクターの着ぐるみを作ることになった。
このブログサービスの名前がnoteだから仮にキャラクターの名前は「ノーとん」としよう。(投げっぱなしパワーボムでも出しそうな名前だ)
着ぐるみを作るという話は前々から聞いていたが昼休み社食に行くお金もなくひたすらネットでラーメンの記事を見ていたら部長が会議室から出てきて「ちょっとスサガシくんきてー」と呼ばれる。
行ってみると、デケー布の塊があった部長と別部署の人が布を広げると顔らしきものが、あ、これノーとんだ。
僕「ノーとんの着ぐるみできたんすか」
部長「そう、さっき届いたから開けたの」
僕「でもこれ平べったいすねー」
部長「電池で膨らませるタイプだからねーさっき電池も充電して電源入るようになったの」
僕「あー水曜どうでしょうのonちゃんみたいな」
部長「そーそーよく知ってるね…」
じっと僕の顔を見る一言
部長「入って」
僕「え!?」
部長「流石に私もおばちゃんだし(部長は女性です)、別部署の●●さんも女の子で身長足りないのよ」
あれよあれよと布を被る僕、腰くらいのところに電源ボタンがあるのを確認するとonにするよう指示される、ボタンを押すとファンが回る。
オォッ布がどんどん膨らんでいく。
部長「あー!かわいいねー!」
別部署の人「イラスト通りですね!」
部長「スサガシくんちょっとポーズとってみて!」
「こうっすかね?」とジタバタしてみたり、ルンルンとした動きをしてみる。
部長「いいねー!かわいい!かわいい!」
ちょうど時間は昼休みが終わりオフィスに他の社員達が戻ってくる。
部長「せっかくだからお披露目しようか!」
とノーとんのデビュー戦を唐突に決定し会議室から出て行く
ドア越しから聞こえてくる声、
部長「はーい!みなさーん今日は会社にかわいい仲間が来てくれました!入ってきてー!」
ドアが開けられもう行くしかない状態だ。
手を振りながらオフィスに現れたノーとんに皆明るい声を上げる。
お姉様方「きゃー!ノーとんだー!」
部長「今日からノーとんもこの会社の宣伝部長として県内中を周ってもらいます!みんなも応援してねー!」
ノーとん「(手を短く前に出し深々とお辞儀)」
部長「じゃあせっかくだからみんなと写真を撮ろうか!」
ノーとん「(やったー!と両手を挙げる)」
それを見ていた課長が「あーついにできたんですかー」と近づいてくる。
課長はノーとんをじっと見て苦笑いで「スサガシくん?」と聞いてくる。
まさかの掟破りである。
ノーとん「(だれー?と身体を斜めにする)」
部長「あれ?そういえばいないわね?お昼かしらねー?」
課長「いや、スサガシくんでしょ?ねぇ」
ノーとん「(手を頭に持っていき、わからなーいのポーズ)」
部長「スサガシってだれ?ってノーとんもも困ってるでしょー」
なぜか執拗に追求する課長、声を出すわけにいかないノーとんinthe俺。
部長にアテンドされ記念撮影をすまし皆にバイバーイと手を振りながら会議室にもどる部長とノーとん。
部長「いやーこれは子供に人気になるわ!スサガシくんありがとね!」
とノーとんのデビュー戦での観客の食いつきの良さに満足する部長(※後々ちゃんとしたアクターさんが入って県内を周ってちゃんと人気者になります。)
ノーとんから脱皮しオフィスに直接繋がってる方のドアではなく廊下に繋がってるドアから出てオフィスの席に戻る。
さっきまでノーとんにきゃーきゃー言ってた隣の席のお姉さんに「なんかあったんすか?」と聞くとノリよく「ノーとんがきてたんだよ!」と返してくれる。
もう気分はクラークケント、マスクオブゾロである。
ただ課長はかなり冷たい目で私を遠くから見つめていた。
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