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トイレ掃除の話








先ほど、色々あって、小学校のときに体験したトイレ掃除のことを思い出した。







私の小学校では、各学年2クラスで、1クラスの人数は30人程度。そこから席の順番で4人組もしくは5人組のチームを組まされて、1班・2班・3班…と班番号をつけられる。





そして、同じ班になった人たちとは、ひと月ほどの間、なにかと一緒に行動することになる。班の中で1人、班長を決め、その人が責任をもって班をまとめていく、というかんじで。給食だったり、図工の創作の何かだったり。






そして、掃除もで。
教室の後方の一角に、先生が作った掃除当番ルーレットみたいなものがあって、一週間経つと右にひとつ回る仕組みになっている。それで、班ごとに掃除する場所が変わり、それぞれ一喜一憂する。









忘れもしない、小学校4年生のとき。
わたしの班は、図書室のトイレを任されていた。









可もなく、不可もなく、という感じだったと思う。
メリットは先生が見回りに来ない。デメリットは場所が怖い。









図書室のトイレがどういう位置にあるかというと、教室がある校舎と繋がってはいるのだが、いわゆる別館という感じで、コンピューター室や図工室など、授業で使うだけの教室がまとまって入っており、その中に図書室があってトイレがあった。その別館は必要ない限りは生徒があまり立ち寄らないので、人気(ひとけ)がなくて、昼間でもなんだかずーっと薄暗い。

図書室も、わたしが利用していた限り、ほとんど人がいなかったと覚えている。また、図書室へ行く途中の階段には、謎のシミがあり、それを踏むとのろわれるとかなんだとかで、それを完全に回避するためには「手の甲にキラキラの液体ペンでなにか動物を描かないといけない」というルールが一部の生徒内で流行ったときもあった。







そういう場所なのだ。
そういう、雰囲気の場所なのだ。








なぜかその日は三人だった。一人、何か理由があって、お休みしてたんだと思う。思い出せないけれど、確実に三人だった。







わたしと、Aちゃんと、Kくん。







班長は、わたしだった。









わたしたちは、その日、初めて図書室のトイレを掃除した。









まずはホースを蛇口にセットして、床を濡らしていく。
Aちゃんはニューサッサ(粉洗剤)を撒いて、わたしがデッキブラシで床こする。Kくんは便器を掃除する。こういうフォーメーションだった。









一通り、掃除が終わった後、わたしはちゃんと掃除ができたのか、班長としてチェックをした。









そして、気づいてしまった。










私「ねぇ、この蓋の中って掃除した?」












      














先に言いますが、ここの掃除は小学生には危険です。とにかくこれには触れないほうがいいです。








Kくん「え!?そこもやんの!?やってなかったわー!」








Aちゃん「まだ時間あるし、やる?」


    


Kくん「めんどくさいからいいよ。やり方よくわかんないし。」


     





わたし「とりあえず蓋外すんじゃない?やろうよ!」



わたしは班長という肩書で強気になって、ズイと前に出て、その部分を持ち上げようとした。




 

    

わたし「ヤバッ!!!!めっっっっちゃ重いんだけど!!!!!」



そう、この部分。めちゃくちゃ重たい。陶器。まじでほんとに重い。そして小学生のわたしたちには、身長的にも、外しずらい位置にある。







     

Aちゃん「じゃあ三人で持とうよ。」


わたし「そうだね。」



しぶしぶ協力するKくん。
トイレの個室、三人でぎゅうぎゅう詰めになって、その部分を持ち上げる。チラッと中が見えて、「をを〜、この中はこうなってるんだ〜」と思った、その瞬間。



Kくんがガクンと下に崩れた。
そして











ガシャァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!










          












先に伝えておくと、わたしは彼のせいにしたいわけじゃない。そもそも、やってみようと言ったのはわたしだ。けれど、事実のみを話すと、Kくんはなぜか足元のパイプみたいな不安定なところに片足を乗せたまま手伝っていたようで、持ち上げたときに足をすべらせて、その反動で全員の手からトイレの蓋が解き放たれて床に落下。

せまい個室の中、すぐ目の前でとっっっても重たい陶器が割れて、今まで聞いたことないような衝撃音でしばらく目がチカチカした。


あまりの衝撃に、時が止まってしまったかのように、みんな無言だった。


それからどれくらい経ったかわからないけど、Kくんが口を開いた。







     


Kくん「だからやめようって、俺言ったじゃん。」










トイレの床には、粉々になった白い破片があちらこちらに散らばっていた。こういうものの片づけ方を知らなかった私たちは、ただ茫然と個室に佇んでいた。静かだった。





余韻にひたるのをやめて、トイレからでたその後はスムーズだった。わたしたちは「三人でこれを壊してしまった」という平等の意識を持って、誰か一人が怒られることになってもかばい合うことを約束し、先生にこのことを報告をした。掃除をする意欲がありすぎたゆえに起きたことだった、というようなことを熱弁した記憶がある。











この一件で、誰もケガをしてなかったことは本当に幸いだったと思う。その後、全校集会でもアナウンスがあり、図書室のトイレはしばらく使用禁止になった。








わたしたちはあの衝撃を克服して、日常にもどり、席替えとともに別の班へと移っていった。そして、掃除当番ルーレットから”図書室のトイレ掃除”が消えた。











今ではまったく接点のなくなったAちゃんとKくん。
あのときのこと、覚えているだろうか。









スタンド・バイ・ミーが観たくなった。





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