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(2020/10/15)【SDGs-NY Vol 16】米大手通信T-MOBILE「教育プロジェクト10ミリオン」発表: パンデミックで学校に行けない生徒たちに無料WIFI提供

    【SDGs NY】持続可能な社会再生へ:#4 質の高い教育を

4 みんなに質の高い教育を

米通信大手T-Mobileは9月3日、新型コロナウイルス(パンデミック)で学校が閉鎖され自宅学習を続けている生徒たちに、「教育プロジェクト 10 ミリオン(英:Education (Project 10 Million)」サービスを実施すると発表した。


主旨は、貧困層で学校にいけず社会的支援が必要な家庭の生徒向けいWi-Fi接続を無料で提供、その他タブレットやラップトップも安価で貸し出しするというもの。この「プロジェクト10ミリオン」は、パンデミックでさらに広がる米国の教育格差をなくすためネット環境へのアクセスを開放するというものとしてT-MobileのCEO Mike Sievertがウエブサイトでも利用を呼び掛けている。

「教育プロジェクト 10 ミリオン(英:Education (Project 10 Million)」

Youtube #TMobile #Project10Million
CEO Mike Sievert Announces Project 10Million Launch | T-Mobile
https://youtube/mi8OMEoaMkc

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【10月1日に半年ぶりに公立学校が授業再開するも、コロナ感染の拡大で再び一部学校閉鎖

ニューヨーク市は10月1日、公立学校の対面授業を再開。
当初は9月10日の再開を予定していたが、新型コロナの感染防止対策が十分でないと懸念する生徒の親や教員からの抗議があった。さらには一部の教員が感染していた事実も不安を煽り、9月10日時点ではまだ再開には時期早尚と判断、その後も9月末まで様子見となり2度も延期されていた。

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デブラシヲ市長を始めクオモ州知事、学校関係者は、生徒達の教育の遅れによる学力低下を懸念しながら、ようやく10月1日に、約半年ぶりに市内の大半の小中公立学校が授業再開に踏み切った。この再開により、公立の保育施設から高校までの約50万人規模の生徒が一旦は教室(対面授業)に戻ったことになった。

一方で、ニューヨーク市内の感染再拡大を不安視する保護者の間で、生徒達(子供達)を学校という公共の場に登校させることへの懸念がまだ根強く残っている。同市は、対面とオンラインから授業を選べるようにしたが、ニューヨーク市の48万人の生徒達は、再開後も遠隔学習を選択。

米国内では秋になるにつれニューヨークの一部にエリアおよび各州でも感染者数の増加しており、対面授業への学校再開を断念した州や学区も多い。

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実際に学校再開してから、同市の新型コロナ陽性率が、29日には1.38%だったところ、9月30日には1.46%に上昇。さらに10月5日には3%に達した。事態を深刻に受け止めたデブラシオ市長とクオモ州知事は、再び閉鎖すると発表。

コロナ感染の再拡大の兆候が顕著にみられるようになり、特にブルックリンとクイーンズ地区で感染数の増加が目立っている。

★NYタイムズ紙「N.Y.C. Closes Some Schools…Again」
https://www.nytimes.com/2020/10/05/us/nyc-schools-close-briefing.html?fbclid

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多くの生徒達が一斉に対面で集まる学校という環境は、感染拡大につながりやすい。

プリンストン大などがインドで50万人超を対象に実施した追跡調査によると、生徒(子供達)や若者は、よりウイルスに感染しやすく拡散する傾向があるというデータも確認されている。学校でのリアルな対面授業の再開が生徒達の感染者数に影響することは容易の予想される。


【T-Mobile、教育支援で子供達に無料WIFIを提供】

米国では、学校生徒5,600万人のうちおよそ900万人の学童が安定的にインターネットへにアクセスできずにを学校の宿題ができずにいる。
そのため、新型コロナが広がる以前から、インターネットにアクセスできない生徒の、学校での成績や卒業後の進路に悪影響を及ぼしていたことが問題となっていた。

さらにパンデミックにより、現在米国では5,000万人の生徒が在宅学習の状態にあり、特に貧困層の
家庭ではインターネットにすらアクセスできない生徒も多く、学校の授業がオンラインで再開されてもそれを受けられない環境に追い込まれている子供達も多い。
そういう事態を踏まえて、T-Mobileは今年2月のスプリントとの合併後にインターネットにアクセスできない家庭の生徒を対象とした無料Wi-fi接続サービス「プロジェクト10ミリオン」を発表した。年間100GWまでインターネット接続を無料化するとともに、低額でデスクトップやノートパソコンも提供している。


●Every chile deserve an opportunity
https://www.t-mobile.com/business/education/project-10-million?cmpid=TFB_RAD_P_20TENMM_OU0ZJSRRLLM0FYL758187

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【現在、全米で160万人が利用】

さらに今回のパンデミックで10月6日に学校が再度閉鎖されるに至り、さらに生徒の学力低下への影響を緩和するため「プロジェクト10ミリオン」のサービスを拡大するとしている。

サービスの内容はプロジェクトへの参加学校に対し、家庭ごとにハイスピードインターネットとフリーワイヤレス・ホットスポットを年間100GBまで無料にするプランに加えラップトップやタブレットの安価での貸し出しも用意している。いずれも生徒に対しては費用がかからない。

●100GBで生徒たちが無料利用できる内容と時間数
・140時間:  学校の授業をストリーミング
・5000時間:   ネットリサーチ可能
・320時間: オンラインバーチャル学習
・200時間: オンラインカレッジテスト準備時間 

●利用可能対象者: 
国立学校給食プログラムに認定された公立学校、グレードK-12の生徒が対象

●申し込み方法:
サービスに興味がある学校はフォームに記入しTモバイルに提出。Tモバイルの教育担当者が連絡

●デバイスの配給のされ方:
手続きが完了した学校の生徒たちにホットスポットかデバイスが各生徒の家庭に支給される

●子供達が自宅でネット利用を希望する場合:
両親や保護者から各学校側にTモバイルに利用申請するようリクエストすることが可能。

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現在、米国では170万人の世帯数がインターネット回線にアクセスできない状態にあるが、同社は今回のプロジェクトを機に、それも解決するとの意向を示している。そしてパンデミックが深刻化した3月からは全米の3100学区(通学区域)で学ぶ160万人の生徒にインターネットへのアクセスを提供している。

さらにカリフォルニア州では、アップルと協働で100万人の生徒にネット学習の機会をサービス拡大提供する準備を進めているという。

全米でも各州でほぼ6カ月以上にわたり学校の対面授業が閉鎖となる中、同社CEOは、「我々は、さらにこのプロジェクトを拡大しインターネットでの新たなサポートを構築する」と、全米の生徒達への教育支援の一環として、その機会の継続と拡大を示している。

米国大手通信社Tモバイルの動きは、SDGs(サステナブルで持続可能な)の観点からみても、#4「質の高い教育をみんなに」に繋がるサステナビジネスの一環であると注目されている。

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【参考文献・原文】
●T-Mobile
T Mobile Launches Project 10Million, Historic $10.7B Initiative Aimed at Closing the Homework Gap and Connecting Students to Opportunity – for Free

●Princeton University Environmental Institute
Largest COVID-19 contact-tracing study to date finds children key to spread, evidence of superspreaders
https://environment.princeton.edu/news/largest-covid-19-contact-tracing-study-to-date-finds-children-key-to-spread-evidence-of-superspreaders/

★NY Times「N.Y.C. Closes Some Schools…Again」
https://www.nytimes.com/2020/10/05/us/nyc-schools-close-briefing.html?fbclid

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【SDGs NY】Vol. 16
(2020/10/15) サステナビジネスNYから見た所感
Hiroko Furuichi
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執筆:古市裕子 (本文は個人の見解)
NY Marketing Business Action, Inc 代表取締役
US JAPAN Career Network
日米キャリアコンサルタント・厚労省国家資格
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国連フォーラム幹事・所属
SDGs NY(持続可能な)×次世代×事業再生・企業存在価値

(略歴)
NY市立大学大学院・政治経済学国際関係論修士課程卒。
1998年~2015年:ジェトロ・ニューヨーク(経済産業省貿易保険部NY)。
(⁂現在の NEXI 日本貿易保険)。 中南米各国カントリーリスク及び企業信用リスク調査に従事。当時「貿易保険」誌や「通商弘報」(METI刊行物)・「New American Policy」ジェトロ配信等にリスク分析レポを寄稿。

2015年独立起業。国連提唱SDGs×企業価値×キャリア支援の観点から、多数
日系企業のNYビジネス進出支援や市場調査、またキャリアコンサルタントとして次世代への日米キャリア支援も手掛ける。

オフィシャルサイト:https://ny-mba.com



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