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さあ、新しいエネルギーデザインへ!──丸紅エネルギーさんの挑戦

こちらの連載記事では、さまざま事情からSustainable Innovation Lab(SIL)に参画された企業に取材し、「SILで何を得られたのか?」「SILでの学びを通じて、どこへ向かおうとしているか?」など、各社各様のリアルをお伝えしていきます。「サステナブル・トランスフォーメーション(SX)の実験場」であるSILで何を得て、何を成し遂げるかは企業、人それぞれ。SXを自社や自分に生かす参考に少しでもなれば嬉しいです。あっ、ご紹介が遅れましたが、この連載はSIL事務局の塚原(下のイラスト)が担当しています。

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初めに紹介するのは丸紅エネルギーさん

化石燃料を扱う丸紅エネルギー株式会社さん。世界で再生可能エネルギーの普及促進など、事業環境として変革期を迎えていますが、これまで担ってきた地域における自動車や工事に必要な重機や農業機器への燃料供給は、住民や経済を支える重要なライフラインです。そのため、全国のサービスステーション(SS)がこれからも地域の生活に貢献出来るよう、何が出来るかをお考えです。

そこで、SILに参画することで「次の事業のきっかけを掴む」ことを目的に、丸紅エネルギーの方々は活動してきました。こちらの記事では、この一年を通して、SILへの参画からどんなことを得て、今、どのような検討が丸紅エネルギー社内で行われ、これからどんな事業をSILと連携しながら展開しようとされているのかをご紹介します。

エネルギー企業を取り巻く大きな変化とは?

みなさんは、「SS過疎地」という言葉をご存じでしょうか?これは、「SSが3つ以下の自治体」を指し、生活に必要なエネルギー供給を維持することが難しくなっている地域を意味します。具体的に課題となっているのは、自動車や農業機器への給油や、移動手段のない高齢者への灯油配送など、多様な機器とシーンで利用される燃料の供給に支障を来たすため、生活環境の維持、防災の観点で問題が生じる悩ましい問題です。

その地域で長く暮らしてきた人々が、それまでと変わらない生活を営みながら、SSを持続可能な存在とするとするにはどうすればいいのか?上述の再生可能エネルギーの普及などと合わせて、エネルギー企業が直面している課題です。つまり、既存資産であるSSを生かしつつ、環境変化に合わせて「エネルギー事業のポートフォリオを変革」し、SSの位置づけ・役割を変えていく必要性に、丸紅エネルギーさんを含めエネルギー企業は直面しています。

丸紅エネルギーさんの戦略、取り組み(言えるところだけ)

丸紅エネルギーさんが大切にしているのが、「エネルギーの安定供給(生活必需品である燃料の供給する責任は重く、切らしてはいけないという使命をもっている)」です。人口減少地域でもエネルギーを供給しなければいけないとは考えているが、脱炭素を進めないといけないことも理解している。この狭間でまさに格闘しているのが丸紅エネルギーさんです。

それに加えて登場してきた課題が、日本で進む少子高齢化。人口が都市部に流入した結果、SS過疎地が増えました。エネルギーを安定供給するためには、事業が持続可能でないといけないため、石油燃料供給以外の事業化も視野に入れた検討が進められています。たとえば、それは新エネルギー(例:水素・バイオディーゼル・電気等)のポートフォリオ導入などです。

事業戦略の実行力、変革を加速するSIL?

そんなとき、丸紅エネルギーさんが出会ったのがSILでした。ご存知のように、SILは、「私たちが地球で生き残る道を見出すため、企業、スタートアップ、自治体、研究者、アーティストなど多様な主体者が交わり、未来をともに構想し、まだ見ぬ世界を実現しよう」という場です。企業の形を変えて、自社や取引先様の資産であるSSを拠点にして多様なプレイヤーと連携することで新しい価値を生もうとする丸紅エネルギーさんにとって、SILは最適のパートナーだったかもしれません。

では、一年間のSIL参画を経て、丸紅エネルギーさんは何を得たのでしょうか?SILに参加された今野さんに具体的に聞いてみました。二つの項目「新しい時代潮流」「脱炭素」について、コメントをいただきました。

新しい時代潮流に合わせて
頭では分かってはいたが、社会課題に対して真剣に取り組む組織、個人に実際に触れて刺激を受け、勇気づけられた。
自社の利益のみに奔走するのではなく、また社会課題のみに集中するのでもなく、そのバランスを取る必要性を強く実感した。
化石燃料を本業とする中での脱炭素について
すべての地域が化石燃料を使わずに不自由なく従来の活動を維持できる訳ではないので、参加している自治体と「住民の生活を守る」という観点から本質的な議論を深めていきたい。
事業として持続可能なモデルを形成するためには、地域で経済が循環する新たな仕組みづくりが必要になる。しかし、自社のみでは対応が難しいので、SILで自治体や企業が一緒に取り組みを考えていきたい。

まさに、SILに飛び込んだことで認識の変化が劇的に起こり、エネルギー企業として進むべき方向が見えたといえます。

SIL写真

そして、これから

とはいえ、「このままSILに参加し続ける」という単純な延長を丸紅エネルギーさんは望んでいません。参画を契機にマインドセットの変化から始まり、次は具体的な行動へ!それが、今の丸紅エネルギーさんの置かれている状況です。

もう少し踏み込んで確認してみましょう。今野さんによると、「丸紅エネルギーが、社会・経済的価値を創出し続けるために、SILとの関わりとして次のように考えている」とのことです。それは、「SILが有益な場だとは十分に分かっているので、その場の価値を高められるよう、更に主体的に関わっていきたい」とのことです。

そして、SILを通じて得た視点をもとに、取り組んでいきたい事業課題として、SS運営者の高齢化によるSS過疎に対応するために、他企業を巻き込んで「SSというリアル拠点から新たな価値創出、需要家との接続」を創っていこうとされています。SSは住民や地域社会に必要な存在として、どんなサービスを生み出していくのか、既存の枠組みを超えた価値を生んでいこうとされていました。企業も地域もすべても持続可能な世界へ!丸紅エネルギーさんの今後に期待しかありません。

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