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反田恭平さんの生演奏をはじめて聞いた衝撃

反田恭平 凱旋コンサート
2022年1月7日 オーチャードホール

2021年「第18回ショパン国際ピアノコンクール」で第2位を受賞された反田恭平さん。
反田さんの演奏にはじめて出会ったのは、上記大会の配信で聞いた予備予選でした。私は反田さんが弾いた「バラード2番ヘ長調Op.38」冒頭のコラール風主題のあまりの心地良さに、毎日その部分を聞かなければ気が済まないぐらいに取り憑かれました。
それから私は、ショパ(〜以下省略〜)ついに反田さんの生演奏を体験する機会に恵まれたのです。

改めて四の五の言うことは、私の本当の感覚とのズレが生じるかと思い、その日思いのままツイッターに投稿したものを、そのままここに書き留めておきたいと思います。

休憩時間のツイート。

休憩時間。

ここは天国ですか?

私、もしかしてここに来るまでに事故かなんかにあって天に召されてますか?

え?

私、あんな音が出るピアノって知らないんですが。

あれはピアノですか?

え?

人が出してる音ですか?

私、生きているのであってますか?

大げさではなく、幽体離脱をした時に「俯瞰して自分自身を見ている」という話はよく聞きますが、もしかして私は今、その状態なのではないか、と思うほど本当に不思議な感覚でした。

コンサート後、ホテルに戻り、なんとかその気持ちを言語化してみようと試みたのが以下の文章です。

みなさま、応援、ご心配、ありがとうございました。(「つ、ついに…」とだけつぶやいたツイートに 85いいね♥をありがとうございました🙇‍♀)

サントリーホール、反田恭平凱旋公演から帰国。
帰国?
たぶん帰国。
いや、現世に戻る。
戻ってる?
たぶん半分戻ってる。

ホテルで「パトラッシュ、もう眠いんだ」となっています。

脳があの体験を理解することを完全拒否中。

これがゲシュタルト崩壊というやつですか?

私の「聴く」という概念が「聞こえる」という概念が、ピアノという概念が、距離と音の関係の概念が、すべて覆されました。

え?
そもそも音ってどうやって聞こえるんでしたっけ?
私は耳の鼓膜の振動が脳に伝わると教わりました。

しかし、反田さんの音は「ppppp」の音まではっきりと認識できるのです。

まるで耳を通さずに、そのまま脳に伝わっているようなんです。私の頭の中でピアノの音が鳴っているんです。

嬉しい音も、悲しい音も、祈りの音も。
「聞こえる」ではなく「私の感情」として胸に響くのです。

音は耳から聞こえるものだと思っていました。
違いました。
直接私の感情に働きかけ、私の頭の中で極上のピアノの音が、感情や情景を伴って鳴っているのです。

私が正気を欠いている、とお思いですか?
それとも反田さんは、魔術師か催眠術師ですか?

とにもかくにも、こんな体験初めてなのです。

私がこれまで聞いていたピアノの音は何だったのでしょう。
CDから聞こえる音、配信から聞こえる音。
それとは、まるで違います。

音質とかそういうレベルでなく、心への届き方が違うのです。

ウトウトと眠りにつくかつかないかの時に、音は遠くに遠ざかっているのに、やけにくっきりと言葉や感情が心の中に入ってくる時ってないですか?

反音(反田さんのピアノの音)の場合、大きな大きな多幸感と共に、そういうものが心の中に流れ込んで来るのです。
もしかしたら、むかーしむかし、お腹の中で温かな羊水の中にいた時、外界の状況はこんなふうに伝わってきていたのかもしれません。
音も振動も光も感情も。

これまで反田さんの音を浴びられた方は、こんな経験をされていたのですね。
これは言葉では説明できないはずです。

もしかして、反田さんとチャンネルの合わないという方もいらっしゃって、「普通のピアノの音」に聞こえた方もいるかもしれません。

チャンネル‼️

私、いいこと言った。

周波数のあったトランシーバーから、無線で「感情」を受け取る。
そんな感覚かも。

でないと、あの距離で、あの音を受け取れる説明がつかないのです。

パトラッシュ、私はもう眠いので寝ようかと思います。この幸せな気持ちのまま寝ようと思います。

でも、歯磨きと顔だけ洗いますね。

落ち着いたら、曲の感想なども書きたい(←魂が抜け過ぎてどうも無理っぽい)と思っています。

(まず第一の感想・完)

この日もう1つ素敵なことが☺️
以下、ツイートした内容です。

コンサートが終わり規制退場が始まった時、2階席、ステージの方向を向いて左の方向から拍手が起こりました。

何ごとかとそちらの方を見ると、祝福の拍手の真ん中に小林愛実さんがいらっしゃいました🥰

とても温かで素敵な空間でした🥰

最後に「ラルゴ 変ホ短調 B.109(聖歌「神よ、ポーランドをお守りください)」の感想だけ付け足したいと思います。

たくさんの方から「泣くよ」という認定をされて聞いた曲です。
泣きました。

曲の美しさに?
反田さんがこの曲を大切にする背景に?
ポーランドの歴史を思い、神に捧げる痛切な思いに?

どれもすべて当てはまりすが、私は、この曲があまりに「小声で演奏された」ことに涙が出たのです。

配信やテレビなどで聞く時は、もっと壮大な感じで聞こえていました。

しかし、生で聴く「ラルゴ」はこんなにも小さな小さな声。
もしかして「声」にも出しておらず「心の中の祈り」の音楽だったのかもしれません。

ポーランド国民が願う「独立国としての尊厳」「永遠に続く平和への祈り」は、声高に叫ぶようなものではありませんでした。
こんなにも密やかで、「どうか、どうか、この願いだけは…」という、心の奥底からかすかに聞こえる声だったのです。
かすかであっても、どんな時にも消えることのない確かな祈り。

ああ。
ラルゴはこんな祈りだったのか…
生演奏で聞いてはじめてわかったことでした。

以上でございます。

反田さんの公式サイトに飛ぶ、説明書きの中にある「言葉を超えた圧倒的な感動体験をもたらす 本能のピアニスト」という言葉が、コンサート後に私の目に入ってきました。

これよ、これ。
最初から説明してくれてあったじゃ〜ん😆

いやいや。
体験してみないとわかりませんよね💦

きっとこの日、私は新しい世界に1歩足を踏み入れたのだと思います。
反田恭平さん。なんと素晴らしい魔法使いのようなピアニスト。

世界屈指の「演奏技術」に触れられるということで「よしよし。どんなものか聞かせてもらおう。」と高飛車な思いも頭の隅にあったように思います。
もちろん、楽譜のすべてに書き入れたいほどの、高い演奏技術、表現方法の引き出しの多さ、それらを簡単に操れる能力にも、感服、平伏致しました。
しかし、それらを語る言葉を奪うに十分な、圧倒的なカタルシス。(「カタル」をかけたわけではない)

私はこの世界を、知ってしまった‼️
もう抜けられないことは、火を見るより明らか。
喜んで「反田恭平の世界」へと飛び込みましょう‼️

ここまでお読みいただいた方がいましたら、ありがとうございました🥰

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