越年
父がもう立てなくなったとき、私は父を超えた。涙など無かった、何んの事も無かった。寝たきりになっちまえば成っちまっただけだし、死んでしまえば少々静かになるだけだ。父はそうだった、今私は父を越して行く。
母と口を利かなくなったとき、私は世間体が母の為にも僕の為にも成り立っているものでは無い事を悟った。母は孤独と孤独への恐れという誰よりも優れた知性を持ち、私もそれを継いでいる。そして私は母を越えて行く、おかあさん、ごめんなさい。
今日も明日も、随分と定義の幅が広くなってしまった若者は父母を、祖母祖父を、近所の爺婆を越えていく。
人の道を行くために。
人の道を外れて、なお。
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