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うわさの男(えびばでぃ・とーきん)

わたしゃツイてる男だ
そう、この前、「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の今世紀最後の上映会に行った(大好きなんだな「オネアミスの翼」)
帝都の花、新宿の有名映画館だ
もちろん事前予約だ
座席を厳選し、隣になるべく人のいない前の方の席を選んでおく
用意周到、準備万端
仕事帰りに特急で馳せ参じる
最寄りは「新宿三丁目」駅
さあ、着いたぞ
いざ!
って、遠いじゃないかバルト9
どこまで行けば直近の出口なんだ
ぶつぶつ言いつつ歩くこと数分(大したこたないが)
やっと目指すビルヂングだ
おーっと、エレベータ前にいきなりの発券機
係の人は誰もいないぞ
予約番号入力だな
って、入力画面にならん
ピーンチ!
となりの人を覗く
なんだと、当時券買ってる
反対側も覗く
現金を投入してるぞ
わしは、クレジットで支払い済みだ
どーする、俺
扱いをお尋ねする人がいない
(田舎もんか?田舎もんだな)
しかたない、やみくもに画面をタッチしまくる
なんだかよく分からん画面が次々と…
空席情報なんていらん
と、ちょっと待った~
これって入力画面ちゃうか
おう、これだこれだ
くしゃくしゃになったメモを見ながら数字を打ち込む
チケット発券
急げ!
始まってしまう!
なんとか上映3分前に入場
予約の席に向かう
よしよし、左隣は空いている
右は…ちょっとオタッキーな感じな男子
(自分もだろが)
ちょっと左に寄り気味に座る
むーん、ちょっと前過ぎたか
スクリーンを見上げるようだぞ
いたしかたなし
さあ、いよいよ始まるぞ!
と、その時
左隣に人影が
む、おやぢ!
両サイドに男子
ちょっと、すごい圧迫感
(男子は苦手なんだ。重ねて言うが自分もだろ)
と、左から、かぐわしい香りが…
たーいむ
ちょっと、これ無理なスメルかも
(こんなこと言っちゃ、ホント申し訳ないんだけどさ)
やばい、逃げられん
そう思った途端、突然の閉所恐怖
(この前、MRIやったときから、この感覚が降ってくるようになったん)
ヘルプ!
でも、映画始まってしまった
『いいことなのか、悪いことなのか、分からない』
オープニングの森本レオのセリフが聞こえる
ここは、腹式呼吸だ
吐いて吐いて吐いて
ゆーっくり吸う
さあもう一度
吐いて吐いて吐いて…(ラマーズ法ではない)
それから十分ちょっと
なんとか落ち着いてきた
(ツイてるぞ)
うーん、この際、もう鼻の穴に指当てるしかない
マスクしてるけど
ほお杖つくようなふりして
身体よじって右の席にぐっと近づく
と、なんかいい香り
隣の男子のコロン?
ラッキー
(やっぱ、ツイてるぞ!)
そのまま身をよじって見続ける
うん?
何だか冷えてきた?
う、お腹痛いぞ
もう一回腹式呼吸だ
頑張れ、俺
負けるな、俺
この危機もなんとか乗り越えた
映画は山場へ
よーしよし
やっと、いい感じ…
と!
足つった!
つった!
うお、この狭い空間で
どうする、俺
足をあっちこっちと、うねらせる
ヤバい奴か
最後の手段
尻をずらして、前の席の下に足を延ばし、なんとかかんとかアキレス腱を伸ばす
治ってくれ!
頼む!
格闘すること数分
ふー、山は去った
映画の山場もひと段落
あとは佳境に向けて一直線
いい場面だ
いいぞお
ところがだ!
トイレ行きたい
ここに来て、膀胱くんがSOSだ
おう、画面はロケットの打ち上げシーン
庵野(カントク)入魂の作画
もう少しだ
早く終わってくれ!
坂本龍一の音楽が流れる
おーエンドロールだ
バックに味わいある手書きの絵が画面をよぎっていく
もうちょっと
あと少し
むむ長いぞ~お
おう、やっと照明
トイレへ急行だ!

セーフ…(古典的だな)

いやあ、充実した映画鑑賞であった
帰りの電車も座れたしな
なんてったって、わたしゃ
ツイてる男だからな

そう、ツイてる男は、いろいろ頑張ってるんよ
日々な
さあ、明日もツイてる日にするぞい!





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