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空と雲ときどき地面

疲れ切ると、散歩をする。歩きたくなくても外に出る。外に出ると空が高い。青い空がこれでもかと広がっている。高架横の小さな公園からでも、空の高みを望むことができる。夕暮れ時だと、驚くほどの色合いに染まった雲が空一面に棚引いていたりする。部屋にいちゃいかん。ちょっとでいいから外に出んと。仕事の帰り、高速道路を跨ぐ長い長い歩道橋を歩く。そこから見えるのは、さえぎる物のない広い広い空。町中にいながら嘘のような大自然感。風に吹かれて上を向いて歩を進めると、現実感が遠のいていく。疲れたという現実がね。だから、なるべく上を向いて歩くようにしている。別に坂本九ではないけど。上を向いて歩くと、景色がぜんぜん違う。最近、とみに思う。だけど、気を付けろ。ぼんやり上見てると、踏むぞ、犬のくそ。無残に足跡が残るフン、点々と踏みしだかれた跡。それだから、ときどき地面を確認。秋はもっとだ。イチョウ並木の下なんぞ歩くと、えらいことになる。靴の溝に銀杏つまると、取れねえ。あれは、まいる。まあ、ときどき下見て歩くのもちょっとは役に立つさ。小銭拾ったりするし。さあ、部屋を出て歩き出そうぜ。お日様の下に出ようよ。生きててよかったって、少しなら思えるかも。なんてね。

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