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26.光の強さは何で決まる?(被写体に対するライトの「当て方」の話)

ライトの出力を上げれば、もちろん「ライトから発せられる光」は強くなる。

だが、「被写体に当たる光の強さ」に関して言えば、「ライトの出力を変える」以外の方法でも、ライトの向け方や位置などによっても光の強さが変化するといえる。

どのような要因で被写体に当たる光の強さが変わるのだろうか。

【ヘッダー写真 ディオスクロイ:袴さん&どぺろさん】
(F4 1/200s ISO2500)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF50mmF1.4

note第一弾「突然だけど、まぐろの話をしよう。(光の芯とストロボ直当ての話)」では、光の当て方、光の質についての内容を記した。

今回は少し似た内容ではあるが、「被写体に当たる光」の調節の仕方として深めていく。


1.光源と被写体の距離によって決まる

ライトを被写体に近づければ近づけるほど、被写体に当たる光は強くなる。

逆に、ライトを遠ざければ遠ざけるほど、被写体に当たる光は弱くなる。

F2.8 1/2000s ISO200
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mmF2.8Lマクロ

こちらはテーブルの上で撮った写真だが、ライトを被写体に画面に写らないギリギリまで近づけることで、周囲を真っ暗にしている。

被写体に当たる光の強さは、光源から被写体までの距離に反比例する。

そのため、ライトを被写体に近づけるほど、被写体に当たる光は強くなる。

たとえば、ライトから被写体までの距離が2m、被写体から背景までの距離が2mの状況をイメージしてほしい。

この状態から被写体がライトに1m近づくと、ライトから被写体までの距離が半分(1m)になる。ライトから背景までの距離は4mのまま。

被写体が光源から2m離れた状態(上)から、
1m近づいた状態(下)だと、
当たる光の強さの比率は図のとおり。

この場合、被写体が光源に近づいたことで、被写体に当たる光の強さが倍になる。

背景に当たる光の明るさは変わらないが、カメラで被写体に露出を合わせると、光源から2mの位置の被写体を撮影するときよりも露出が1/2になる(暗くなる)ので、その分、背景の明るさも1/2になる。

つまり、「光源から被写体までの距離」と「光源から背景までの距離」を調節することで、被写体の明るさと背景の明るさのバランスを調節できる。

こういった、距離による光の差を理解しておくと、被写体の明るさや背景の明るさだけでなく、被写体が複数の場合のそれぞれの明るさを調節できるかどうかの第一歩にもなる。

2.光源を遮るものによって決まる

被写体に直接ライトを当てるよりも、
ソフトボックスやアンブレラなどを使ったり、
壁などに反射させたりする方が光量が落ちる

被写体に当たる光の強さは、ライトに取り付けるアクセサリや、反射(バウンス)などによっても変わる。

基本的には、アクセサリなしのライトで直接当てる光が、被写体に一番強く当たる光になる。

ソフトボックスなどのアクセサリを使うと、光が柔らかくなる(陰影のコントラストが弱くなる)代わりに、被写体に当たる光は少し弱くなる。

【巴御前:袴さん】
「木漏れ日」も、葉っぱの遮蔽によって
「直射日光」よりも少し弱い光になる

全く同じパワーのライトを使ったとしても、アクセサリの違いによって被写体に当たる光の強さが変わる。

そのため、他の人からライトの強さだけを聞いて真似したとしても、同じような写真にするのは難しい。

また、屋外撮影等の場合、ライトのパワーが足りなければ、表現によってはアクセサリなしの「直当て」をしたほうが良い場合もある。

3.光の芯を使うか、周辺光を使うかで変わる

一つのライトから発せられる光。
光が当たっている場所の中心が最も明るく、
周辺になるにつれて徐々に暗くなる

ライトから発せられる光は、一直線に出るのではなく、発光面から放射状に、広がるように出ていく。

発せられる光のうち、最も光の強い中心部を「光の芯」、光が弱くなっていく周辺部を「周辺光」と呼ぶ。

「光の芯」と「周辺光」の関係はライトを直当てする場合だけでなく、ソフトボックスなどのアクセサリを使用しても同様に存在する。

ソフトボックスなどを使用する場合にも、同じセッティングであっても「光の芯」を被写体に当てるか、「周辺光」を被写体に当てるかによって、当たる光の強さが全く変わることに注意しよう。

【レミリア・スカーレット:こがねさん】
(F8 1/200s ISO200)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF100mm F2.8Lマクロ

ソフトボックスなどを使用せず、左一灯と後方二灯のストロボ直当てで使用。

被写体よりも手前にライトを向け、周辺光だけがかすめるようにライトを配置すると、上の写真のように、ソフトボックスを使用しなくても全身をムラなく照らすことができる。

光の芯を被写体に直接当てると、光の芯の部分だけが明るくなり、それ以外の部分が暗くなってしまう。

つまり、被写体に対して当たる光にムラが出てしまうので、全身などの広い範囲を照らしたいときには周辺光を利用するのがおすすめ。

ただし、周辺光は光源から発せられる光の中でも最も弱い光なので、注意して調節しよう。

ライトに上着を被せて、
袖口をゴム紐でライトの発光面付近に固定。
「スヌート」の代わりにできる。

上の画像は周辺光を抑え、光の芯だけを使うセッティング。

Model:ゆよりさん
F4 1/200s ISO500
Canon EOS5D MarkⅢ+EF

背景に影響する「周辺光」がほとんどないので、周囲を暗く、被写体だけを明るく引き立たせることができる。

もちろん、被写体に当たる光の強さや、写真の中の明るさに影響する要素は、今回紹介した条件に限らない。

スタジオの広さによっては壁などの反射が作用することもある。
日中の屋外においては、ライトよりも日光のほうが強いことも多い。

ただ、今回の内容を理論として理解しておくと、応用をきかせやすくなる。

今回の内容を難しいと感じた方も、実践しながら、少しずつでも身につけていただければ幸いだ。


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