関係の合成
1.知り合いの知り合いという関係
3つのグループA,B,Cがあるとする。
AグループのaさんとBグループのbさんが知り合い関係であるとき、これを記号で
aθb
と書くとしよう。
BグループのbさんとCグループのcさんについても同様に、互いに知り合い関係であるとき、
bψc
と書くとしよう。
AグループのaさんとCグループのcさんはBグループのbさんを介して知り合った。すると、aとcさんの関係も「知り合い」になる。
こうして新しくAグループとCグループの上にも関係という概念が生じる。この関係は関係θと関係ψを使って定義されるから記号で、
aψ◦θc
と書くとしよう。
この新しい関係は、bを媒介にしてaとcがつながることに注目している。知り合いの知り合いは、互いに知り合いになるということである。
2.関係の合成
この話をもっと一般的な状況でも通じるように定義してみよう。
集合A,B,Cがあり、A×B上の関係θと、B×C上の関係ψが与えられているとする。このとき、A×C上の関係ψ◦θを
aψ◦θc ⇔ あるb∈Bが存在して、aθb かつ bψc
で定義する。これを2項関係θとψの合成(composition)という。
また、
aψ◦θc ⇔ aθbψc となるb∈Bが存在する
と略記することもある。(θとψの順番に注意)
特にA=B=Cのとき(これらをAで表せば)、A上の2項関係θ,ψの合成ψ◦θは再びA上の新たな2項関係ができる。
さらにθとψがともにA上の同値関係であるとき、合成ψ◦θもまた同値関係である:
・反射率:aψ◦θa(a∈A)
(∵aθaψaより)
・対称率:aψ◦θb ⇒ bψ◦θa (a,b∈A)
(∵aθxψb ⇒ xθa,bψx ⇒ bψxθa)
・推移率:aψ◦θb かつ bψ◦θc ⇒ aψ◦θc
(a,b,c∈A)
(∵aψxθb,bψyθc⇒aθxψbθyψc)
同値関係に加えて、A上の演算μが定義されているとき、θ,ψがともに演算μと両立するならば、合成ψ◦θも演算μと両立する:
すべてのiでa(i)ψ◦θb(i)
⇒ すべてのiに対してあるx(i)があって、a(i)θx(i)ψb(i)
⇒ μ(a)θμ(x)ψμ(b)
ただしa=(a(1),・・・,a(n)),bもxも同様
⇒ μ(a)ψ◦θμ(b)
3.合成による演算
このことは、
A上の2項関係すべてから成る集合上、
A上の同値関係すべてかる成る集合上、
あるいは、代数系A上の合同関係すべてから成る集合上に、
関係の合成◦を乗法として演算がそれぞれ定義されることを意味する。
この乗法◦は
(1)結合法則をみたす:
(φ◦ψ)◦θ=φ◦(ψ◦θ)
【確認】
a(φ◦ψ)◦θb ⇔ aθc(φ◦ψ)b
⇔ aθc,cψdφb
⇔ aθcψdφb
aφ◦(ψ◦θ)b ⇔ a(ψ◦θ)dφb
⇔ aθcψd,dφb
⇔ aθcψdφb ■
(2)単位元が存在する:
任意の関係(または同値関係、または合同関係)θに対して、
ε◦θ=θ◦ε=θ
となる(同値または合同)関係εが存在する。
【確認】
aεb ⇔ a=b
で関係ε定めれば、このA上の2項関係εは「等号」関係であるから、同値(合同)関係であり、
aε◦θb ⇔ aθcεb
⇔ aθc,c=b
⇔ aθb
aθ◦εb ⇔ aεcθb
⇔ a=c,cθb
⇔ aθb ■
よって、単位的半群となっている。
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