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聴いたよ新譜2021 上半期BEST20

お世話になっております。
もう半年ですか…あっという間と言いたいところですが、身動きが取れない時間などもありなかなか窮屈な1年間の後でいまだに尾を引く煩わしさも感じつつ、心は窮屈なまま色んなことが起こって。僕はというと今年は音楽をたくさん聴いてこのnoteにまとめようと抱負にしてやってきたわけなのですが、サブスクのおかげでこんなにたくさんの音楽を配信開始と同時に聴くことができる環境にこそ感謝しております。

そんなわけでその中から苦悩もありつつ、独断と偏見で20作品個人的に好きだった作品を選出しました。他にももちろん好きだった作品はありますが、こちらには書ききれないのでまず20作品です

まずはその中でも特に好きだった4作品
そしてさらに16作品(順不同)です。

僕のまとめが何の指標になるわけではありませんが、1意見としてなんとなく読んでなんとなく誰かの選択肢に影響したら嬉しいです。


上半期ベスト4作品

1. Pino Palladino & Blake Mills - Notes With Attatchments

pino palladino、blake mills、sam gendel、chris dave…まさに現在の音楽シーンの超重要人物の邂逅によって作られた濃縮感あるジャズアルバム。ロックに携わってきたメンバーによるプロジェクトということもあり全く新しいジャズの形が見られた気がして、初めて聴いたときの興奮をこの夏でも未だに覚えているし未だに何度も聴いているアルバムです。

何よりセッション映像などもコンスタントに観られるし、つい最近もTiny Desk Concertに出演していたのが印象的でした。アルバムとまた違うフリーな質感が楽しめます。

「フリーさ」と「作り込まれた感」が同居。スリリングだけど完成された絶妙なニュアンスが癖になる。

アルバムはというとジャズにあるセッションのフリーさというよりも細かく構築されたリフのプログレッシブ感というかそちらが際立った作りで、その異質感がまた新感覚でとにかく気持ちいい。最高です。

2. SAULT - NINE

99日間限定配信のサプライズリリース。シンプルながら起承転結のある作りと漂う地下感が最高すぎました

ロンドンの正体不明バンドSAULT。6月最終週のリリースで記憶に新しいというのもありますがつい選んでしまいました…このバンドが好きすぎるというのもあるのですが…

前作のUntitled(rise & black is)がメッセージ性も強い濃密な作品でありつつどこか冷徹でタイトでとてつもない情報量を内包しており、2020年リリース作品の中でもベスト級に好きだったのですが…
そこからほどなくしてのリリースにも驚きましたし、今作はそれこそ粗さを感じるくらいパワフルでファンキーなスタートなのも驚きました。楽曲それぞれは短くシンプルな作りでしたが、アルバム通して漂う「ベイスメントテープ感」にとにかくやられました…このアルバムに漂う地下の湿気というか、夏の夜にバーで小汗をかきながら酒を飲んでライブを観ている臨場感というか、その特別感と背徳感を感じられる

「感」ばっか言ってるな…
とにかく雰囲気がめちゃくちゃかっこいいアルバムでした。確実に年ベストにも入ります


3. Bruno Pernadas - Private Reasons

「未来的アフロビート」かは置いて置いて、爽やかでサイケデリックでとにかく気持ちいいアルバムと出会えました

「ポルトガルのスフィアンスティーヴンス」ことBruno Pernadas、当のスフィアンスティーヴンスが去年かなり様変わりしたアルバムをリリースしたりしておりましたが…このアルバムは「近未来的アフロビート」というテーマで作られたアルバムとのことですが、ブラックミュージックらしいビートを経由しつつエレクトロなアレンジを多用することで未来感を演出しているようで、それがむしろBrunoのポップ性と混ざり合ってサイケデリックな仕上がりに貢献していて聴いていて気持ちいいんですよね。

音楽とは聴くシチュエーションによって楽しみ方はそれぞれだと思うんですが、車の移動中に流して時々「おっ…」とじっくり聴くのに最高のアルバムで、僕の生活の一部にシンクロした作品だったというのもありとにかく大好きなアルバムになりました。

4. The Weather Station - Ignorance

一聴した瞬間から名盤のオーラを纏っていたアルバム…問答無用に名作で逆に語ることが全然無いくらいです。

現代のトレンドにも傾倒しすぎず、インディフォークではなく後期フリートウッドマック的なカントリー色弱めの湿ったフォークロックで序盤のどこかせわしなく、軽快なのに内省的な雰囲気はこの時勢とも絶妙にマッチしていて心に染み渡りまくるんですよね…

優しくて暗くて悲しくて温かい。暗い夜の迷える心の拠り所のような作品

アルバムの構成もドラマチックで、序盤の逃避行感と内省、そして最後には諦めと贖罪というかこの一連のカタルシスがなんとも優しく沁みるんですよね…またなんか変なこと言ってます?

上半期ベスト5〜20作品(順不同)

どれも一度レビューしたものですが、軽くコメントとともにもう16枚紹介させていただきます。本当に迷ったし明日には変わってるかもですが、上記4作と同じく上半期で僕が好きだった16作品です。(順不同)


5. Puma Blue - In Praise of Shadows


南ロンドンのプロデューサーPuma Blue。ミニマルで脱力感あるジャジーなベッドルームポップが沁み入る一枚。今年は各地で名作が散見されるジャズの分野でPuma Blueはとにかく脱力的インディ感とダウナーな空気感が心地良く、ネオソウルやアンビエント的アティチュードも感じさせる作りがとにかく僕のアンテナにビシビシ来まして…地味目ながら毎日聴けちゃうアルバムだと思います。好きすぎる

6. Madlib - Sound Ancestors

Hiphopのビートメイカーでも著名なMadlib単独名義ながらもプロデュースはFour Tet…そう聞いたら期待しちゃいますよね。僕はMadlibはジャズサンプリングのShades of Blueなどはかなり影響を受けて聴いていたのですが、昨今の共作系作品はあまり聴いていなかったもので新鮮に楽しみました。
今作は単独名義とはいえFour Tet要素が垣間見えるシーンが多いんですよ。Madlibの柔軟でタイトなシンプルビートがFour Tetの空虚さによってなんとも新鮮でアーティスティックな雰囲気に仕上がっていて、アルバムを通して気持ちよくなれるまさに化学反応を楽しめる一枚だと思います。

7. Virginia Wing - Private Life

マンチェスターを拠点に活動するユニット。独特のエレクトロポップはBroadcast的なジャーマンクラウトロックを軸にしつつ今作はかねてよりサイケで爆発した仕上がりとなっており、壊すところと脱力的にヨレる所、シンプルに乗せるところの波の作り方が上手ですね…いい感じに飛べる作品でかなり刺さりました。ミニマルながらもホーンの入れどころも気持ちよく、ついつい再生すると聴き続けてしまう魔力を持っていると思います。

8. Cassandra Jenkins - An Overview on Phenomenal Nature

これまた一曲目から名盤のニオイがぷんぷんしてきたアルバムで、一口にアンビエントフォークの名作とも形容しがたい紛れもなく名盤だと思いました。序盤はアメリカンインディフォークの色合いで作品が進んでいくにつれて質感が変化していき、ポエトリー要素とともに幻想的な雰囲気になっていく。ラストは美しいインストのアンビエントで幕を閉じる。朝の空気のように多彩なアプローチとグラデーションを持つアルバムでとにかく美しい完成された作品でした

9. Gal Go & Tom Gley - Gal Go Gley

近年ジャズを取り入れた作品がトレンドになりつつあるとは思うのですが、その流れに大きく貢献したのがKing Kruleであることは間違いなくて、そんな中King Kruleを共に愛する友人から「King Kruleのサックス奏者のソロ作がとても良い」との紹介をもらいまして早速聴きました…

ダウンテンポとジャズのスタイリッシュな絡み合い…かと思えばダブやテクノも入ってきてなんともバラエティに富んでいて最高。
特にCOASTという曲が好きでしたね。サックスの色気をしっかり味わった後にくるドラムンの嵐…まさに砂漠って感じで最高


10. Alice Phoebe Lou - Glow

南アフリカ出身のSSWで現在はベルリンにて活動中。特筆してめちゃくちゃすごいということはないのですが、レトロな質感あるモジュレーション、リバーブの効いたギターサウンドや独特のピッチとイントネーションが個人的に大好きすぎて現在もよく愛聴しているアルバムです。
そんな中にあるDirty Mouthという曲は悲しくも軽快でブリティッシュロックのノリも感じられてとにかく彼女のアイドル性を増幅していると思います。

11. Various Artists - Indaba Is

ロンドンのインディレーベルBrownswoodから発売された現代ヨハネスブルクにおけるアフリカンジャズシーンを切り取ったコンピレーションアルバム「Indaba is」がめちゃくちゃ良かったので紹介したいです。

2018年に同レーベルから「We Out Here」というUKの若手ジャズアーティスト達をフィーチャーしたコンピレーションアルバムを出しておりますが、今回はそのアフリカ版といったところでしょうか…このコンピは現在南アフリカで活躍する若手を中心に実力者が集まって楽曲を集めているのですが、全曲このアルバム用の新曲らしくその辺にも熱のこもり具合が伝わってきますよね。

一般にジャズという音楽からイメージするのってどうしてもマイルスデイビスやビルエヴァンズなのですが、このアルバムを聞くことでジャズというジャンルの多様性と根源にあるパワーを感じられます。とにかく汗臭くて最高に熱い…ドラマーが力強くスネアを連打する際に飛び散る汗まで感じられるようないい意味で生々しいアルバムです。サブスクの登場で、当時ワールドミュージックと一括りにされていた音楽達がたくさん再評価を得ておりますがこのアルバムはアフリカンジャズのカッコよさを最大限に感じられる1枚だと思います。最高

12. Black Midi - Cavalcade

サウスロンドンシーンの震源地でもあるWindmill出身、squidやFountainsDC、日本のRoth Bart Baronなどを手がけるダンキャリーがプロデュースしそのレーベルごとロンドンの名門Rough Tradeと契約し1stも成功をおさめる。

Black Midiはここ3〜4年のUKロックシーンにおける超重要バンドなわけで前作もカッコいいなと思える素晴らしいアルバムだったが、今作は間違いないバケモンだと思いました。Arctic MonkeysのFavourite Worst Nightmareを聴いたときのようなワクワク感がそこにはあり、特に好きだった点を言うと前作のエッジの効いたギターが今作では控えめになり、バンドアンサンブル上でしっかりと絡み出したのが最高でした。John Lやslowなどのブレイキングな楽曲でもグルーヴがより担保され、ホーンや歌の怪演がより際立ったと思います。そしてアルバムとしての歌モノ楽曲の気持ちよさも最高でした。
そして何度も言うがこのMV大好き。

13. Rostam Batmanglij - Changephobia

元Vampire WeekendのRostam Batmanglijのソロアルバム。聴いた当初はどうしても「Vampire Weekendっぽさ探し」みたいな聴き方をしてしまい、実際要所要所にVampire Weekendらしさは散りばめられていたのですが…実際に上半期BESTを考えは上で聴き直した際に、単純に12弦ギターとパーカッションが混じったRostam流の名曲達に聴き入ることのできる良質なインディポップアルバムでした。

コロナ感染時に考えた世界のことや、変化していく時代的価値観を受け入れていくことへの前向きな気持ちも感じさせる部分も含めて今聴く意味のあるアルバムだなあと思っています。

14. Lucy Ducus - Home Video

所謂ベッドルームorインディフォークに傾倒し続ける現代シーンのトレンド、飽和していく女性SSWの界隈で今回のLucy DucusのHome Videoはメインストリームとインディの狭間を絶妙に撫で回した素晴らしいアルバムだと思います

julian bakerやphoebe bridgersなどのシーンを代表するSSWも参加し制作された今作は、今日日インディシーンでも顕著な内省を1つウォームにしたどこかアットホームな厚みを感じるサウンドに仕上げており、それは脱ミニマルでありながらなぜかインディリスナーにもずっと入るような作りになっていて、phoebe bridgersの時も思った「きっと10年後も何かのタイミングでこのアルバムを流すかも…」と思わせる浸透感がありました。

15. カネコアヤノ - よすが

恋する惑星からもう6年…。これまでもなんとなく聴いてはいたのですが、今作は正直驚きましたら。独特の節回しと心の奥から出てきたようなかすれた声がチャーミングなカネコアヤノ節が凝縮されつつ、日本のトレンドとはかけ離れたレトロなギターモジュレーションと場末のバーライブを思わせるボイスのホールリバーブ感、時代を逆行したまるで吉田拓郎を思わせるような人間臭い質感にカネコアヤノ節が絶妙にマッチして最高でした…フォーク、カントリーなテイストを生かしたものからレイドバックなリズムも健在でどれも優しく剥き出しで、このアルバムでちゃんと好きになりました。最高です

16. Theo Alexander - Sunbathing Trough A Glass Screen

ちょっとこのアーティストに何も情報を持っていないので細かく解説できないのですが、Apple Musicでたまたま出会ったこのクラシカルなピアノとコントラバスと混じっていくエレクトロニカサウンドに一発でやられてしまいました…ミニマルで壮大に美しく、アーティスティックに知性をくすぐってくるサウンドでこれがバックで流れるような大人になりたいですね…最高でした。

また、リミキサーとしても名前を良く見るkaitlyn aurelia smithによるremixも配信されておりこちらもとてつもなく良かったです

17. 踊ってばかりの国 - moana

前作からの製作ペース早すぎてびっくりしたのですが、スペイシーですらあった前作とはまた違う「地に足ついた高揚感」を感じせるサイケデリアを作り出していて最高でした。
現代版TAMAと評している人もいましたが、どこか世界への諦めと開き直りすら感じさせる発散が気持ちよく、トレモロギターが土っぽく気持ちよくカラッと響いて、ヨレながらもしっかりとあるメロディセンスと表現力がビシビシと本能に訴えてくる名作だと思います。

18. Good Morning TV - Small Talk

ウェブ検索しにくい名前つけやがって…フランス発インディロックバンドGood Morning TVのデビューアルバムです。
爽やかでサイケでシューゲ感の波がこの時期に最高なのですが、何が素晴らしいって所謂シューゲやドリームに傾倒しすぎていなくてジャンルミュージックになりすぎていないところなんですよね。フィードバックや残響系のタイム感もやりすぎていなくてむしろサイケっぽい進行。ボーカルも清涼感のある質感で、しっかりと全体が合わさってインディロックのかたちを作っているのが素晴らしいと思います。お酒飲んじゃいたい

19. Hiatus Kaiyote - Mood Valiant

2019のフジロック前に聴いて衝撃を受けたのが記憶にも新しいですが、アルバムとしては6年ぶりとなり、乳がんとの闘病や各メンバーでのソロ活動などを経てFlying Lotus主宰のBrainfeederに移籍…よりファンキーにパワーアップしたアルバムって感じ最高でした。サウンドメイクの引き出しや幅はよりルーツに近づいた印象を受け、よりブラックなジャズイズムを取り入れています。特に印象的だったのはブラジルのArthur Verocaiとフィーチャリングしてリオデジャネイロにて録音されたGet Sunという楽曲で、今までのメロウさとエレクトリズムで作られたファンキーさとは違う本場のソウルフルなサウンドでいい意味で地下感から解き放たれて野生的なHiatus Kaiyoteに進化した感触でした。ライブまた観たいな〜

20. Mndsgn - Rare Pleasure

Chaiのアルバムにも参加したことが記憶に新しいですが、LAのトラックメイカー/プロデューサーのMndsgn(マインドデザイン)の新作です。

Hiphop、ダウンテンポを軸にジャジーでソウルフルなビートメイクをしている印象で2013年のアルバムを聴いた際にはファンキーでキレのあるリズムなどが目を引いた印象でしたが、今作はより生演奏らしさが際立っており、同世代クリエイターが集結して最高にチルで気持ち良いビートを作り出しています。その手法もサイケ、ジャズ、ダウンテンポ、R&Bなど様々なジャンルからインスピレーションを感じる作りで、現代LAの絶妙ビートメイクって感じで最高でした。気持ち良すぎる…

楽曲から受ける印象としては本人も答えている通り内省的でありつつ結果ハッピーを感じられるポジティブなもので、その「内省×ウォームさ」の精神性自体はなんとなく今年の名作の鍵でもあるように感じます。

何が言いたいかってMndsgnのニューアルバムを聴きながら屋外でキャンプして酒飲んで最高になりたい。それだけですよ



半年聴き続けてみて


元々なんとなく人が勧めている音楽や元々好きなアーティストやバンドの新譜を聴いてかるく感想をツイートして終わっていたんですが、今年は何か始めたくて高校〜大学と血眼でDigしていた頃のバイタリティを思い出しつつ、それを部屋にいながらできる時代に感謝しながら今回始めてみました。

フィジカルを購入してコレクトしている皆様には申し訳ないですが、経験と情熱でここまで来れて嬉しい限りです。

ここ以外で音楽について語れる場でもあったらそれも嬉しいですが、バンドもそうですがこちらも続けていくことで何かに繋がったり

よしんば繋がらないとて、捌け口として、それが何かのエンタメとなればそれはそれで本望ですし。多くを求めず、とにかく下半期も楽しんでいこうと思います。ここまで読んでくださった方本当にありがとう。

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