見出し画像

「部長のせい」も「部下のせい」もぜーんぶ 認知バイアス“自己奉仕バイアス”

「部長が優柔不断だから…」「部下が無能すぎるから…」

「部長のやつ、何もわかっていないからこんな問題がおきちゃうんだよ」、「部下たちは、事の本質を理解できていないから、問題が発生してしまう」など部下から見た部長への不満、上司からみた部下への不満はよく湧くものです。しかし、これ、もしかしたら、認知バイアスの自己奉仕バイアスによって、自分の都合の良いように出来事をみているからかもしれません。

自己奉仕バイアス

自己奉仕バイアス(Self-serving bias)とは

成功の要因は自分にあり、失敗の要因は自分以外にあると考える傾向

です。

コントロールの所在

「コントロールの所在(Locus of control/LOC)」という概念があります。これは、出来事の原因をどこに捉えるかという信念体系です。LOCには、内部LOC外部LOCの2つがあります。内部LOCを持っている人は、成功を自分たちの努力によるものだと考えます。外部LOCの人は、逆に成功を仲間や運などの外部によるものだと考えます。外部LOCが行き過ぎると、成功はすべて他者や運のおかげのもので、失敗は全部自分のせいと考えてしまう「インポスターシンドローム」になってしまいます。

インポスターシンドローム

インポスター症候群とは、自分の能力や実績を認められない状態を指します。 成功していても、「これは自分の能力や実力ではなく、運が良かっただけ」、「チームのサポートがあったから」と思い込んでしまい、自分の力を信じられない状態に陥っている心理傾向のことです。そして、悪いことがあったときは、自分のせいだと思い込みます。負のループになりがち。

なぜ自己奉仕バイアスになるのか

自己奉仕バイアスは、自己強化自己提示が動機だと考えられています。自己強化(Self-enhancement)とは、自身の価値を保とうとするものです。ポジティブなものを自分に帰属させることで自己肯定しようとします。自己提示(Self-presentation)とは、自分をまわりに見せたいという欲求です、他者からポジティブに評価されることが目的の欲求です。何か過失があったあときに、「でも、いっぱい努力した」と主張したり、思ったりすることがあります。しかしこのとき、わたしたちは、その努力が意味のあるものだったか、ということへは注意を向けません成績ではなく、努力した自分というイメージを与えようとするもの、それが自己提示です

自己強化

自己強化(Self-enhancement)とは、自身の価値を保とうとするものです。自己顕示バイアスによって、ポジティブなものを自分に帰属させることでポジティブな自己イメージを維持しようとします。

自己提示

自己提示(Self-presentation)とは、自分をまわりに見せたいという欲求。自己奉仕バイアスによって、他者からどう見られるかについてポジティブなものにしたいという欲求が根底にあります。


自己奉仕バイアスのデメリット

画像2

自尊心の形成や強化に自己奉仕バイアスは有効に機能するのですが、その一方で、成功や失敗の原因を考えるにあたり、歪んだ見方をすることで問題になることもあります。成功や失敗を自分の都合の良いように解釈することで、自分の中にある失敗要因や、成功の外因を見逃し、ナルシシズムに陥ることになりえます。そうなるとチームのメンバーとの関係を悪化させるリスクが増えていきます。これは、仲間同士のみならず、教師対生徒の関係においても問題を発生させます。

交渉時には、双方が自分の都合の良いように事実を解釈すると、齟齬の差が大きくなり、合意が難しくなっていきます。損害や被害の交渉の際は、自己奉仕バイアスが働いて、双方が偏って自分に有利な見積もりをしがちです。

年齢による変化

歳を取るにつれて、自己奉仕バイアスは減っていきます。

対策

自分を乗り物だと解釈する

自分を道具だと捉えると自分の良い面も悪い面も把握して最適化したくなってきます。この世界観は、自分を過小評価したり、過大評価したりする傾向を減らします。それに加えて、世界も自分の歪みなく、見ることが容易になってきます。

オススメの本

自己実現というは、人生をより良くするために必要な目標に見えて、実際のところ人を迷わすことが多いものです。そのあたりを是正するのに、西村博之氏の思想は、バランスを強化してくれます。エビデンスベースではありませんが、この本はとても生きやすくなるのでオススメです。

関連した認知バイアス

楽観主義バイアス(Optimism bias)

悪い事は自分には起きないと考える傾向。



認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。


参照

※1:Self-serving bias

2011年の研究

2003年の研究


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?