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スタートアップM&Aの課題

おはようございます、すずきです。

本日は先日経産省より公開された「大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書」をスタートアップ側の視点をメインにまとめてみました。

この記事を読むと、大企業によるスタートアップのM&Aにおける課題と、それをどのように解決していくべきかがざっくり分かります。また、特にディープテック系、リアルテック系と呼ばれるスタートアップは、一度本体の調査報告書を御覧になることをおすすめします。

・経産省「大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書」
https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/houkokusyo/r2houkokusho_ma_report_2.pdf


結論

大企業によるスタートアップのM&Aにおいて、現状の課題は大きく2つ挙げられています。

①バリュエーションの合意に至らない

情報の非対称性によるものです。両者でスタートアップの「非財務情報」や「シナジー効果」に関する情報を適切に把握することが求められます。

例えば、スタートアップが有するテクノロジーにつき、買収企業とスタートアップの両者が以下のような点について適切に把握し、それらが事業計画の蓋然性にどれだけ影響するかを検討する必要があります。
• 開発の進捗状況、今後必要な投資の規模感
• テクノロジーの特異性(模倣リスク)、潜在的マーケットの規模
• 特許の出願・取得状況、特許の活用可能性 など

その他「非財務情報」の観点は以下のような形です。
・経営陣のビジョン、専門性、キャリア
・テクノロジーの模倣リスク
・データの独自性や収益化実績
・過去の生産実績と今後の生産計画、生産体制
・提携の実施状況(提携先への依存度)
・ユーザー数やその伸び率、解約率など

特許に関して言えば、知財DDの観点をまとめた資料が特許庁さんから公開されていますね。

また、情報の非対称性の話以外にも「アーンアウト条項」や「株式対価M&A」についてもバリュエーションを適切に評価するための手法として触れられています。

・アーンアウト条項(条件付き取得対価)
一定の目標達成を条件に追加の対価支払いを行うことを定めた条項です。大企業側にとっての投資リスクの低減や、スタートアップ側へのインセンティブの付与といったメリットがある一方で、手続きが複雑になるといったデメリットがあります。

・株式対価M&A
文字通りキャッシュの代わりに株式を対価にM&Aを実施する手法です。大企業にとってキャッシュを無理に用意しなくても良くなったり、スタートアップにとっても金銭的価値が大きくなる可能性があるといったメリットがある一方で、手続きが煩雑になったり株式価値の変動リスクを伴うといったデメリットがあります。


②投資家からのネガティブな評価を懸念して大企業側がM&Aに消極的

大企業×スタートアップのM&Aは、イノベーション創出を目的とする成長投資の一つの手段ですが、大企業側の投資家にそれが十分に理解されないと、のれんの減損リスク等に目が向きがちです。

そのため、企業価値の向上に資する投資としてM&Aを実施している(しようとしている)ことを積極的にIRを行い、投資家の理解を促すことが必要です。

このあたりは大企業側の話がメインなので割愛します。


前提となる背景

米国では、GAFAMに代表されるような大企業で、自社にないビジネスアイデアや人材を有するスタートアップに対して積極的にM&Aを行い、自社の事業の中に取り込んで、非連続的な成長を遂げている。
他方、日本の大企業は、一般的に自前主義の傾向が強いと指摘されている。自社の成長戦略の中にオープンイノベーションの活用を組み込めていない企業が多いと考えられ、スタートアップを自社に取り込んでいくM&Aを実施するケースは多くない
スタートアップ側に目を向けると、日本では、エグジット手段としてIPOを志向するケースが大半であり、M&Aが選択されるケースはまだまだ少ない。一方で、特に「ディープテック系」や「リアルテック系」と呼ばれるスタートアップは、先行投資に係る資金需要が大きいことに加え、短期間の内に利益をあげることが困難であることから、IPOを中心とした既存のエグジットモデルに見合わないことも少なくない。
「大企業等の事業会社によるスタートアップのM&A」の促進が、スタートアップにとっては既存株主に対するエグジットを担保しつつ安定的な成長に資する選択肢であるとともに、大企業側にとってみても、オープンイノベーションによる中長期的な価値向上につながるものであり、これによって、両者がWin-Winの関係を構築できる可能性があると考えられる。

※経産省「大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書」より抜粋

・・・長いですね。

個人的にポイントになりそうな箇所を太字にしましたが、箇条書きにすると以下のような形でしょうか。
<大企業>
・自前主義
・スタートアップのM&Aは多くない
<スタートアップ>
・特にディープテック、リアルテックと呼ばれるスタートアップは、IPOによるEXITが見合わないことも少なくない

確かに現在はEXITとしてIPOを目指すスタートアップが多いように感じます。しかし、テック系(非IT系)のスタートアップも少しずつ増えてきていますし、今後M&AのEXITモデルが増えていけば、M&Aを目指すスタートアップも増えていくのではないでしょうか。


編集後記

みなさま、本日の記事はいかがでしたでしょうか。

調べるほど、スタートアップというか、そのエコシステム周りの知財が面白く感じてきました。ただ、事例をまだあまり知らないので、今後は日本や米国スタートアップの事例研究もざっくりですが取り組んでいきたいと思っています。

それではここまでご笑覧いただきありがとうございました。

すずき



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