三匹が行くコロンビアの旅(4)犯罪被害のリスク

<20XX年2月8日>
 早朝、自然に目が覚めたため、起きだして仕事メールのチェックと、やや込み入った質問への返信メールを送信したのち、6時ごろ再びベッドに戻る。
 途中、何度か目が覚めるが、ようやく起きる気になって時間を確認したら、午後1時半になっていた!

 目覚めのシャワーを浴びたりしていると、ドン・ネストルが全員分のランチを買って帰宅し、アレクサとルピタは、フリエータ宅の例のプレイグラウンドへ遊びに行っていたが、やがて戻ってきた。
 皆がそろったところで、やや遅めの昼食。
 やや遅めといってもそれは私がそう感じたということであって、だれも気にしている様子はないので、あまり時間は気にならないのだろう。

 夕方、アレクサとアナは教会へ行く。
 教会でのお祈りを終えた2人は、昔からの知り合いであるカルロス牧師と共に車で戻って来て、私とルピタ、ドン・ネストルとドニャ・クラウディアが加わり、近くのカフェへ移動してカルロス牧師とお茶の時間を持つことになった。
 ルピタは、アレクサが教会へ行ってしばらく後に寝入ってしまい、そのまま熟睡モードに入ったので、無理に起こしてカフェへ連れていくことはせずに、アナとフリエータにお願いすることにした。
 移動のため便乗させてもらったその車は、防弾装甲のランドクルーザーであったが、カルロス牧師が普段から防弾車を使っているということではないらしい。諸事情により、その日はたまたま防弾ランクルを使っていただけの模様。もちろん、運転専従のドライバーがついている。
 特別な車に乗っているということで、アレクサは少々エキサイトしていた。私はというと、防弾ランクルに乗るのは久しぶりで、サウジアラビア時代にちょこちょこ乗っていたことを思い出して懐かしんだ。

 到着したカフェは、入ってすぐの部屋でショーウィンドウにたくさん並ぶケーキを見ながら注文を済ませた後、店の奥に続いているテーブル席に着いて注文した飲み物やケーキを食べるという動線になっていて、店内は非常に凝ったデザインの家具や小物で埋め尽くされている。いわゆるロココ調のデザインか。カフェ全体がお姫様的というか、クラシックなヨーロッパ的雰囲気に包まれている。
 正面の間口の広さ(狭さ?)から、非常に小さいカフェという印象だったのだが、奥に進むにつれて、意外に広いことに気づく。屋内のテーブル席を抜けると、緑豊かなパティオ形式のテーブル席がいくつもあり、噴水などの水のせせらぎも聞こえてくる中、コーヒーやお茶、ケーキで会話を楽しむことができる、というわけだ。
 間口が狭く奥行きのある構造は、日本的につい「ウナギの寝床的な」と言いたくなってしまうのだが、これは店内のヨーロッパ的雰囲気には全くそぐわない表現だ。

 カルロス牧師とアレクサ達の会話は、久しぶりに顔を合わせた懐かしさからか、いろいろな話題が次々に出てきたようだ。
 かつての旧宅のあったエリアが最近になり治安が悪くなってしまったことを残念に思うという話であったり、予定していた車の使用を急遽変更して別の車に乗ったところ、事前に予定を把握していた暴漢(?)による襲撃を奇跡的に回避できた最近の話であったり、その他、知り合いから聞いた治安がらみの話題など、話が尽きない。
 私がコロンビアに滞在している間は、アレクサファミリーの保護もあり、犯罪がらみのシチュエーションに巻き込まれたことは、これまで全くない。
 コロンビアと聞くと日本ではだれもが「危険なんでしょ?」「大丈夫なんですか?」などと感じて不安になるようだが、むやみやたらと危険なわけではない。ただやはり、日本よりもはるかに犯罪に巻き込まれる可能性が高く、危険要素が日常生活の至るところに潜んでいると言えるのだろう。

 今回の旅行の前、日本にいた時の話だが、知り合いとの間でスマートフォンの使い方が話題になり、ブラジルで滞在経験のある知り合い(日本人)が「現地では、路上でスマートフォンを使ってはいけない」という話をしたところ、日本以外で生活したことのない知り合い(日本人)が、「え!そんなに危ないんですか?」と驚いた様子を見せたことがある。そこで私もつい口出ししたくなり、「ボゴタでもスマートフォンは路上では使わない。誰が狙ってくるかわからないから」という話をした。大丈夫かもしれないが、使わないに越したことはない。強奪が起こりうる、そういう環境だからだ。

 ボゴタでも、日本ほどではないにしても、地元のヒトが路上でスマートフォンを使っているところを目撃すること自体は、ときどきある。しかし、それを見て、同じようにスマートフォンを使っても問題ないかというと、そうではない。
 私のファミリーはだれも路上ではスマートフォンを使わないし、当然、私も使わない。特に私は見た目がどう見てもアジア人だから、スマートフォンを使っていたら真っ先に狙われるだろう。

 起きたのが昼過ぎ、という妙なリズムの1日になってしまった。
 現地の時間に合わせて寝起きするだけという習慣なので、時差ボケという感覚をほとんど意識したことがないのだが、やはり歳なのかなぁと感じた1日であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?