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事業戦略、第一章、なぜ、今、事業戦略か?103.寄らば大樹の陰の時代の終わり。大規模企業信仰の終焉

昔、テレビのコマーシャルにこんなキャッチフレーズがあった。

「大きいことは、いいことだ」

私の記憶では、確か大手菓子メーカーのチョコレートの宣伝だったと思う。
日本でも、長い間、全ての領域で「大きいことは、いいことだ」という論理がまかり通ってきた。もちろん、今でも大きいことは、いいことだ、という分野もあるが、そうでない分野も増えている。

今までは、大規模企業万能思想は正しかった。製造業では、工場を巨大化し、労働を一箇所に集中し、コンベアーラインのような形で結合すれば、移動に要する手間を削減できて、生産コストが削減できる。そして、同種製品を大量に生産して、マスで売れば、消費者は争って、その商品を購入し、企業利益が確保できる。このような考え方や方法が次第に変化している。

現代では、「大きいことが、いいこと」ではなく、「たとえ小さくても、その分野、領域で世界チャンピオンである」、「小さくても、その商売のリーダーシップを握る努力を怠らない」、「常に最新の知識やノウハウで武装する」ということが、利益獲得にとって重要になってきている。

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製造メーカーは、巨大な資本、設備を有しているが、後進国の追い上げで、旧態依然たる製品を生産している企業は、利益の出る商売ではなくなっている。
一人あたりの収益性からみれば、そうした企業の従業員より、ミステリー作家の赤川次郎や西村京太郎の推理小説執筆の仕事の収益性の方が大きい。しかし、彼らの持つ組織は、机とパソコンだけである。
いろいろな町に、手作りのケーキやパン、シュークリーム、ラーメン、各種スイーツ等を売る店がある。その製品は、店の人が熱心に研究し独自の製造ノウハウを持っており、非常においしく、主婦などに人気がある。
そのため、店に行列ができ、午後くらいには全部売り切れてしまうし、遠くから評判を聞いたり、インターネットのサイトを見て、宅急便で送って欲しいという人もいる。大手スーパー、百貨店、コンビニエンスストアが近くにあっても、その店が潰れることはない。

大企業の下請け企業というのは、大企業の購買担当者に、赤字覚悟の受注を強要され、いじめられるのであるが、しかし、小さくても、自社独自の製造技術を持って独占的に製品を供給している企業は業績が良い。

これからの時代において、たとえ企業の規模は小さくても独自の技術、知識、ノウハウという「強み」を持っていれば、十分やっていける。

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現在、昭和40年代に栄えたような製品を供給している重厚長大型巨大企業は、あの恐竜や三葉虫のように、滅びようとしている。
代わって登場したのが、たとえ小さくても、他の企業に絶対真似のできないノウハウ、技術、知識、技能というような優位性を持った企業。ないし、そのような企業がモザイクのように集まった大企業である。
一匹狼の独立請負人であっても、とにかく狭い領域において、他人に絶対真似できないという特殊技能、職人芸、特殊な知識やノウハウを集積し身につけている独立請負人は、一人でもそれなりに食っていける。
まさに職人芸が復活する時代、規模が小さくても他人に真似できない何かがあれば、立派に大企業と渡り合って生きていける時代が到来したのである。
そして、これから世の中が、どんどんそのようになっていくだろう。

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