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読書記録「ブロードキャスト」

湊かなえさんの「ブロードキャスト」を読みました。

舞台はある高校の放送部。高校生活に希望を見出せなかった主人公が、ラジオドラマの制作をきっかけに、自分の居場所を考え、向き合っていくお話です。

湊かなえ「ブロードキャスト」角川文庫



高校時代、文化部の活動と作文に全力だった私にとって、すごく共感できたのはコンテストの場面でした。
文芸や放送といった創作のコンテストには、ある意味「本番当日」がありません。スピーチコンテストも、予選はスピーチの録音や原稿の提出だけで、事前に完成させるものが多い気がします。大会前に図書館や部室や自分の部屋で、考えて考えて、ときに頭を抱えて、削って付け足して読み直して、やっと自信を持てて。その自信も、締切があるから仕方なくそう思おうとしているだけかもなんて考えたり。
私の場合、誰かに書いてるところを見られても「勉強がんばってるね〜」と言われることがほとんどだったので、報告できるような結果がないと何もなかったことになっちゃうんじゃないか、そもそも審査員の誰にも伝わらなかったら、、、と余計な心配ばかりしていました。

そしてそれ以上に、「この作品が誰かを傷つけてしまったら」という不安がありました。
意図的に傷つけることは絶対にないけれど、もし、私の伝えたいことが誰かにとって「作品」という形で踏み入ってほしくないものだったら。
そう思って、公開せずにしまい込んだ作文もたくさんあります。

この物語の登場人物たちも同じような不安に陥っています。
でも、

「でもさ、もう動き出したんだ」

湊かなえ「ブロードキャスト」より

そして創作の責任を背負いながら、本番ではなく完成を目指していく主人公たち。

胸が温かくなって、目頭が熱くなって、気がついたら文章を書きたくなっていました。

伝えたい、でも自信が持てない。
そうなった時に読み返したい一冊です。

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