2022年を振り返らない

始発が動く時間になったので店を出る。新宿歌舞伎町のビルの2階の居酒屋を降りて、新宿歌舞伎町を歩く。早朝の新宿歌舞伎町は人よりも鳥が多く、店の看板がぎりぎり外より明るい。通りは灰色の空洞のようになっていて、そこに人が溢れて初めて完成する街であると思わせる。新宿歌舞伎町のカラオケ店から宣伝用の音が聞こえる。みんなでカラオケに行って楽しもう、という旨だったと思う。曲も流れてきた。MONGOL800の『小さな恋のうた』だ。新宿歌舞伎町の向こうから、20代前半っぽい5人組が肩を組んで歩いてくる。だいぶ前から集合していた感じの、もつれた連帯感がある。髪色は5人で3色あった。3色の5人は楽しそうに笑いながら、喋りながら、よろけながら近づいてくる。近づいてきて、新宿歌舞伎町のカラオケ店の音に合わせて歌い出した。

「ほら! あなたにとって! 大事な人ほど! すぐそばにいるの〜!」

僕の隣にいた人が「そりゃあ歌も歌うよね……」と言った。もう1人は同意した。僕は「でもなんか、あれをしたくて東京に来たはずなんですよね」と言った。2人は笑ってくれた。3人で富士そばを食べて、始発の何本か後で帰った。

大きくて安い水