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#128 面白半分日記21 チンパンジーを調教する女子大生 雑談力を身に付けよ

学生と距離が縮まると、踏み込んだ質問をされることが多くなる。

昼食後に学生レストランで珈琲を飲んでくつろいでいたら、例の女子学生(#83「彼女とチョコレート工場」の登場人物 )が目ざとく私を見つけて近寄ってきた。

ああ、また何か話したいんだろうなと思った。

「センセー、お邪魔でなければ席をご一緒してもよろしいですか?」

「構わないよ。壁に向かって話していただけだから」

「壁と話してたんですか?(笑)」

「何事も基本は壁打ちから始まるからね。
自分の放った言葉がきれいに跳ね返ってくるんだ」

「あははは、何の話ですか。
相変わらずセンセーらしいですね(笑)」

「今も昔もこうだ。
で?なんか話したいことでもあったかな?」

「ハイ! 遅ればせながら明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします!えへへへへぇ」

「これはこれは、ご丁寧に!
私からも謹んで新春のお喜びを申し上げます。
本年も、私の授業で明るく楽しくガハハと笑い転げてGPA(成績の平均値)を上げることに邁進したまえ!」

「センセー、立ち入ったことをお伺いしてもよろしいですか?」

「本当は立ち入り禁止だけど、キミには許可を与えよう」

学生にはできるだけ誠実に真摯に対応するのが信条だ。
やましいことなど微塵もない。
私は公安警察からマークされたこともないし、CIAのスパイに狙われたこともない。
隠し事など一切ないから週刊文春に狙われることもない。
だから文春砲を2発、3発と撃たれることもない。

妻にだって隠し事はしていない。
嘘も・・・・えーっと、嘘もついてない(はずだ)。

君よ 永遠の嘘をついてくれ
いつまでもたねあかしをしないでくれ
永遠の嘘をついてくれ
出会わなければよかった人などいないと笑ってくれ

詞・曲 中島みゆき

■雑談力を上げよ

「センセーの奥様はどんな方ですか?」

「おっと、かなり立ち入った質問だな!
妻は一般人なのでどうかそっとしておいてください。
私はチンパンジーなのでどうか無闇にエサを与えないでください」

「出た、ブービー先生!キャハハハ!!」

 私は高校教師時代、生徒たちから「ブービー」と呼ばれていた。
 パーマン2号(チンパンジー)のブービーに似ていることに由来する。
 当時の教え子が今や母となり、その娘が私の大学に入学し、ひょんなことから、私のあだ名がブービーだと知られ、やがて学生たちに広まってしまったのだ。個人情報の漏えいだ!!

『パーマン』藤子・F・ 不二雄 小学館

「妻はどんな人かというと・・・・
まあ、私の100倍くらい弁が立ち、彼女に逆らったり屁理屈を言おうものなら、私は彼女に粉々にされる」

「奥様、強いですね。奥様に頭が上がらないんですか?」

「上がることはほぼないけど、下がることに関しては際限がない。
つまり無限の可能性を秘めた男ということだ」

「えーっ?」

「えーって、一体どう見えてるんだ?」

「うーん、理屈っぽくて頑固者でぇ亭主関白で・・・・
あはは、嘘です。
いい旦那さんなのかなぁーって思います」

「理屈っぽくないよ。
妻に楯つかないんだから理屈を並べる必要がない。
理屈を言うより頭を下げた方が問題は迅速に解決するし。
でも、頑固だって言われる。
ウン、ウンって人の話を素直に聞いているふりして、結局、自分の考えを曲げない人だって」

「あ~やっぱり(笑)」

「やっぱりって・・・・」

「いえいえ、信念を曲げないってことです。
真っすぐで素敵です。
私なんてナナメってますから」

「斜め?(/_・)/
キミは全然、ナナメってなんかないよ。
明るいし気遣いできる子だし。
俺なんて斜めどころか、ねじれちゃってるから(笑)」

「センセーは話をよく聞いてくださるので助けられています。
でも、私はすぐ考え込むし、迷ってばかりで‥‥」

「前に話したとき確か “ ここではないどこかへ行きたい ” って言ってたじゃない?今はどう?」

「友達との関係が難しいというか気を遣いすぎて疲れます・・・」

「気遣い、気疲れかぁ・・・・
相手のこと思いやる気遣いは大切だけど、物事を相手軸で考えてばかりいると、“自分”がどこかへ押しやられちゃうんだよ」

「そうですよね」

「相手と揉めたくないとか、怒らせたくない、嫌われたくないという感情はごく普通のことなんだけど、それが続くとしんどくなる。
相手の感情を読み取りすぎて、相手に感情移入しちゃうと自分が見えなくなっちゃう。
この人は「こう思っているんじゃないか」「ああ思っているじゃないか」とね。
そうすると相手の問題がいつのまにか自分の問題になっちゃう。
相手のことで心がいっぱいになる。
相手のことなのに自分を責める。
そういう時はね、適度な距離を保つことを意識したほうがいいんじゃないかな。
あえて距離をとって相手を俯瞰したり観察するくらいの気持ちを持てばいい。
無理してつき合う必要はない。
毛虫の昆虫観察だと思えばいい(笑)

「気持ち悪いなぁ」なんて思いながら観察するわけ。
もしかしたらまだ幼虫のレベルで、そいつはサナギから脱皮して変態して、羽が生えて美しいアゲハチョウになるかもしれない。
幼虫、さなぎ、成虫というように、人も成長とともに変化するじゃない?
人間の場合だと、おー結構いい感じに成長したじゃん!って見直したりしてね。見直せないこともあるけどさ。
ちょっと距離と時間を置くと見え方が違ってくることもある。
それを出会い直しとか結び直しって言うんだ」

「あー、その感じがいいですね」

「だろう?」

「なんか学校の先生と話しているみたいな感じです」

「そこかい!
あのなぁ・・・・一応、先生やってんだけど。
すでに俺のこと観察してる?」

「チンパージーにはエサを与えないでください(笑)」

「ウッキーッ! 
おっと、あと5分で授業が始まる。
さあ行くぞ!!」

 その後、カウンセラーと情報を共有した。
 彼女は自分のことをHSP(Highly Sensitive Person:繊細さん)と思い込んでいたとのこと。
 「気にしぃ」なところはあるけど、テストバッテリーの検査結果から判断すればHSPではないと思われる(絶対的な結果ではないが)。
 対話を繰り返すことで改善されるはず。彼女自身、それがわかった時点から変わってきているという。

私自身、学生たちとの対話で変わってきている。
徐々にチンパンジーから一般人になり、あと少しで教師になれそうだ。

雑談力を上げて心の開放と解放を!