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小説の半分

出張中に読んだ本がこちらです。英国推理作家協会賞最優秀翻訳小説賞だそうで、複合的な要素や、現在と回想が入り混じっていてなかなか読ませます。

比較的真犯人はわかりやすいのですが、それ以上にこの主人公の生き方が興味深い。監獄で「レ・ミゼラブル」と出会い、「小説の半分は著者が書いているが、残りの半分は読み手が埋めるんだ」という巨漢のフランス人収監者

まあ有名な小説なのでネタバレにはならないでしょうが、この主人公は「ジャン・バルジャン」に心を寄せるのでなく、ジャンの過去を暴こうとする刑事「ジャベール」に共感するのです。彼は

「悪と戦い、正義を貫く不屈の闘志のなかには、ダイヤモンドのような純粋で寛大な心があることがわかった。法律に庇護を求めるしかない人たちを守り、公益を守るためには、自分の評判や幸福を犠牲にしてでも、妥協せずにだれかが引きうけるべきであるという騎士のような、理想家のような、英雄の道義心を持っていることがわかった」

と語り、ここから主人公の人生は大きく変わっていくのですが、その後も彼は色々な本を読みます。
その後妻になった司書のオルガから勧められて読むのが、「異邦人」「ドクトル・ジバゴ」「山猫」「ブリキの太鼓」「人生使用法(ジョルジュ・ペレック)」等々。
確かに不朽の名作ですが、最後の「人生使用法」は読んだことがなかったので、図書館のサイトを見ると「731頁」とあり躊躇しております。先に「レ・ミゼラブル」を再読しようかな。

実は出張中に併読していたのが町田康氏の「入門 山頭火」です。

冒頭にこうあります。

「山頭火の俳句を読み、ときどきの詩人の考えたことや詩人の人生に思いを馳せ、そのついでに人間が良き、そして死ぬるとはどういうことなのかについて考えてみよう、と決意したのが二週間前」

で読み始めた最初が
「分け入っても分け入っても青い山」
ですが、ここで町田氏は最初の壁にぶち当たり、煩悶するのです。そして

「俺にわかるように説明してくれ、と俺が俺に言っている。
二週間の学びによってそんなことができるわけがないので、さらに山頭火の句を読んでいこう、いやさ、読んでいく。これが俺の青い山。分け入っても分け入っても山頭火」

これはまさに「俳句の半分は山頭火が書いているが、残りの半分は町田康が埋め」さらに読者である私もまた埋めていくという企てに参加しているのだと感じています。


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