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普遍的哲学をカスタマイズ

「逆境を味方につける」(家本政明)を図書館で借りて読みました。

家本氏はDAZNのジャッジリプレイで存じ上げるようになったのですが、どんな方か全く知らずに読み始めて、あれっ?という感じを受けました。
それは私が長年盛和塾で稲盛和夫の学びをしていたことは何回もアップしていますが、この本も端々にそんなことが。
なるほど家本氏は京都パープルサンガに社会人として就職していたということで、76頁にこんなところがあり氏の中に稲盛哲学が根をおろしていることなのかと思ったのです。無断抜粋します。


自分と組織の目的を融合させる

「僕が京都パープルサンガで働いていた頃、支援企業である京セラの哲学、『京セラフィロソフィ』の浸透を図るために、毎日朝礼で稲盛和夫さんの著書を社員が日替わりで朗読していた。稲盛さんの哲学は、後々僕の価値観と思想に大きな影響を与えるのだが、入社当初は強制的に朗読させられたこともあってか、全く僕の中に入ってこなかった。ところが、ある時家にあった稲盛さんの本を何気なく手に取って読んでみたところ、なぜか急に自分の中に入ってきた。中でも『渦の中心になれ』は、僕が最も大切にしている稲盛哲学の1つだ。
その後、クラブがJ2に降格したのを機に、僕は社内改革に動いた。選手やコーチングスタッフをはじめ、クラブで働く人たちの思いと支援してくれている企業や行政、応援してくれているたくさんの人たちの思いに京セラフィロソフィを融合させ、京セラ一色だったクラブを "サンガ色"に変えるべく、皆で議論し、これまで陰に隠れていた社員の意見を拾い上げ、クラブの新しいビジョンなどに反映させていった。『京存共栄 感動を、歓びを、スポーツ文化の創造を』やマスコットの「コトノちゃん」はその象徴である。これによって、クラブで働く人たちに自然と当事者意識が芽生えていった。」

家本氏はその後プロの審判員となりサンガを離れますので、いわゆる京セラフィロソフィは組織経営の指南書というより、彼が個の審判員、Jリーグや国際審判の場で選手や関係者とどう向き合うかについて、フィロソフィを生かして使っているなと思ったのです。

京セラフィロソフィ、稲盛哲学は経営者のためのものでしょ、という声は昔から聞きますし、「あれは京セラの話で、自社とは違う」という言葉も聞くことがありますが、決してそんなことはない、普遍的な人間として生きるフィロソフィであるということをこの家本氏は明らかにしています。もちろんフィロソフィ全てを丸のまま受け止めているのではなく、家本流にカスタマイズしつつも本質をしっかり理解しているというのが素晴らしい。各項目はご自身の言葉ですが、その背景にフィロソフィがあることを恐らく盛和塾生は感じていると思います。信条6の「建設的に疑い、楽観的に始める」なんかはフィロソフィの「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」そのものでしょう。その項で「楽観的」に始めるための8Sという基準を紹介していますが、これこそ家本氏のカスタマイズ力。

サンプル(Sample) 試しにはじめる
シンプル(Simple) 簡単なものからはじめる
シグニファイ(Signify) 重要なものからはじめる
スモール(Small) 小さくはじめる
スポット(Spot) 部分的にはじめる
スピード(Speed) すぐやれそうなものからはじめる
ストップ(Stop) 考えるのを止めてとにかくはじめる
セパレート(Separate) 分けてはじめる

この「逆境を味方につける」は、稲盛哲学を学ぶための副読本として非常に良いものだと思います。

タイトル写真は本の裏表紙から拝借しました。右にある「RESPECT」というのはRESPECTワッペンというのだそうで、審判活動をする際、通常はユニフォームの右肩につける規定があるのだそうです。

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