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書記が数学やるだけ#701 多様体の定義

今回から多様体について扱っていく,内容としては位相空間論のその先,微分幾何やテンソル解析の補強,といったところである。


問題

今回は単位円が多様体であることを示していく。


説明

多様体とは何か,ざっくり言えば「好きなところに小さな地図が描ける図形」である。

地球の形を知るにはどうすれば良いか?もちろん現代の技術であれば宇宙空間から眺めれば良いわけであるが,もし地球から出れないとして知る術はあったのか?それは世界各地で地図を書いてつなぎ合わせることで達成することができる。


ゲームの世界地図においては,上端と下端,左端と右端が繋がっている仕様がしばしば見られる。これは実際の世界が球ではなくトーラスであることを意味する。


多様体を考える上で重要な概念がチャートアトラスである。

チャートは位相空間の開集合とユークリッド空間の開集合とを対応づける。


多様体では,2つのユークリッド空間を対応づけるために,合成写像を用いた座標変換がしばしば用いられる。


アトラスは座標近傍の集まりを指す。


これらの概念を用いて,多様体は以下のように定義できる。以後,単に多様体と書いたときは可微分多様体を指すものとする。


解答

一つ目はハウスドルフ空間であることだが,これはR2の部分空間であることから明らかである:


次に開被覆を考えていく。いろいろ方法はあるだろうが,ここではx>0,x<0,y>0,y<0の4つの開集合で覆えることを示していく。


最後に座標変換について,ここで以下に示すfを天下り的に与えておく(次回扱う立体射影から導出できる)。例えばf1+とf2+について座標変換を考えると,これはC∞級である。他の組み合わせも同様にして示すことができ,以上から単位円は多様体であることがわかった。


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