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書記が法学やるだけ#19 国家賠償法の判例

今回は判例の問題を扱う。


問題


解説

(1)誤り:国家賠償法1条の違法性に関する判例。追跡行為が違法であるというためには,「①右追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか」,又は「②逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし,追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当である」ことを要する(最判昭61.2.27)。

(2)誤り:これも違法性に関する判例。税務署長のする所得税の更正は,所得金額を過大に認定していたとしても,そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく,税務署長が資料を収集し,これに基づき課税要件事実を認定,判断する上において,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り,右の評価を受ける(最判平5.3.11)。

(3)正しい:国家賠償法2条における公の営造物について。本件道路における防護柵を設置するとした場合,その費用の額が相当の多額にのぼり,上告人県としてその予算措置に困却するであろうことは推察できるが,それにより直ちに道路の管理の瑕疵によつて生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできない(最判昭45.8.20)。

(4)誤り:(3)との違いは損害の発生が不可抗力かどうか。事故発生当時に赤色灯標柱が道路上に倒れたまま放置されていたのであるから,道路の安全性に欠如があったといわざるをえないが,時間的に遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能であったというべく,このような状況のもとにおいては道路管理に瑕疵がなかったたと認めるのが相当である(最判昭50.6.26)。

(5)正しい未改修河川は,単に物的安全性の有無によってのみ管理の瑕疵が判断されるのではなく,原則として過渡的安全性で足りる。(最判昭59.1.26;大東水害訴訟)。一方で,改修済み河川改修がなされた段階で想定されていた洪水に対応できる安全性を備えていたかどうかを基準とする。(最判平2.12.13;多摩川水害訴訟)。

(6)正しい機能的瑕疵の判例について。国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが,そこにいう安全性の欠如,すなわち,他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは,ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的,外形的な欠陥ないし不備によつて一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性かある場合のみならず,その営造物が供用目的に沿つて利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み,また,その危害は,営造物の利用者に対してのみならず,利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである(最判昭56.12.16)。


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