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トランプ・ムーブメントの一方でリベラルが見ていたもの:読書録「Weの市民革命」

・Weの市民革命
著者:佐久間裕美子
出版:朝日出版社

ニューヨーク在住のジャーナリストが、主として「消費活動」の面からのリベラル的な動きをフォローした作品。
期間としてはトランプ政権の後期から新型コロナの感染拡大/トランプ落選あたりをカバーしています。


環境問題やBLM運動、Me Too運動なんから消費活動にどういう影響を与え、それが大企業や行政にどういう変化をもたらしたか…って感じの内容ですから、基本的には「リベラル」の立場からの報告です。
個人主義的な「Me」から、未来への影響まで視野に入れつつ、世界的な貧困や、人種間の連帯までも包含するという意味で、「We」という視点に市民活動が移行している(主因としては世代交代があります)というのが題名の意味ですかね。



リベラルがあまりにも理想主義的、理念的になってきたことで、経済的に苦境に陥りつつあった中間層(主には白人ですが、マイノリティも含む)への連帯・共感を失ってしまい、そこをトランプにフォローされてしまい、米国の分断が露わになった。

…というのが僕の「トランプ・ムーブメント」の見立てです。
したがって再選に関しても、
「新型コロナがなければ、再選してただろう」。
もっとも新型コロナがトランプ政権の統治のあり方の杜撰さを浮き彫りにしてしまった…という側面があるので、結果としての「トランプ退陣」はやむを得ないとも思ってます。
(僕自身は「リベラル」寄りのスタンスなんで、トランプ支持者ではないです)


トランプが政権運営している間にも、市民活動は変化を遂げており、その動きが「新型コロナ」の影響もあって、新しい動きにもなっている。

本書がカバーしているのは、そういうところでしょう。
実際そうだと思いますし、心情的には僕も共感するところが少なくありません。


一方で、こういう動きが、トランプ誕生を支えた層(落選したにせよ、その層は7000万人を超えて、今もあります)に影響をどこまで与えているか…っていう点では「?」です。
もちろんこういったアクションは「ミレニアム世代」に支えられてるってのはありますから、「世代が変わればいずれは…」って面もあるんでしょうが、とはいえ「ミレニアム世代」が全員「反トランプ」ってわけでもないでしょうからね。

「エシカルな消費行動」
わかるんですが、それが「金持ちだからできること」ってのも、やっぱ否定出来ないでしょう。
カツカツのエッセンシャルワーカーに、経済的にも、精神的にも、それを求めるのは…。

本書で描かれるようなムーブメントが、トランプ支持層を「変化」させるとは思えない点において、結果的に「アメリカの分断」を本書は浮き彫りにしてしまっている…とも言えるんじゃないか、ってのが僕の読後感でもあります。



それにしても、アメリカでは人口構成上も「ミレニアム世代」が消費活動上も力を持つ時期に入りつつあるんですね。
日本じゃ全く考えられない状況。
一気に変わることはあり得ないと思う一方で、時代とともに「雰囲気」は変わってくる…ってのは確実なのがアメリカ社会でもあるわけです。(どう変わるか…は分かりませんが)
これは羨ましいかも。


いや50過ぎのオッさんなんだけど、なんでかわからんけど、シンパシーは「ミレニアム世代」の方にずっとあるんですよ、僕は。
まあ、向こうのほうは、
「お呼びじゃない」
かもしれませんがw。


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